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ルベーグ可測関数

単関数によるルベーグ可測関数の近似定理

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単関数による近似補題

ルベーグ可測空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)が与えられた状況においてルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選び、この集合上にルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。加えて、\(f\)は\(X\)上において有界であるものとします。つまり、\(f\)の値域\begin{equation*}f\left( X\right) =\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in X\right\}
\end{equation*}が有界な\(\mathbb{R} \)の部分集合であるということです。言い換えると、以下の条件\begin{equation*}\exists m\in \mathbb{R} ,\ \exists M\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:m\leq f\left( x\right) \leq M
\end{equation*}が成り立つということです。ただし、\(M\)は\(f\)の値域の上界であり、\(m\)は下界です。

以上の状況において正の実数\(\varepsilon >0\)を任意に選んだ場合、それに対して、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall x\in X:L_{\varepsilon }\left( x\right) \leq
f\left( x\right) \leq U_{\varepsilon }\left( x\right) \\
&&\left( b\right) \ \forall x\in X:0\leq U_{\varepsilon }\left( x\right)
-L_{\varepsilon }\left( x\right) <\varepsilon
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ L_{\varepsilon }\leq f\leq U_{\varepsilon } \\
&&\left( b\right) \ 0\leq U_{\varepsilon }-L_{\varepsilon }<\varepsilon
\end{eqnarray*}を満たす2つの単関数\begin{eqnarray*}
L_{\varepsilon } &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \\
U_{\varepsilon } &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}が存在することが保証されます。条件\(\left(a\right) \)は、関数\(f\)を挟む2つの単関数\(L_{\varepsilon },U_{\varepsilon }\)が存在することを意味します。限りなく小さい正の実数\(\varepsilon \)についても主張は成り立つため、条件\(\left(b\right) \)は、関数\(f\)を挟む2つの単関数\(L_{\varepsilon },U_{\varepsilon }\)がとる値が限りなく等しいことを意味します。つまり、有界なルベーグ可測関数は限りなく等しい2つの単関数によって挟まれるということです。この主張を単関数による近似補題(simple approximation lemma)と呼びます。

命題(単関数による近似補題)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義されたルベーグ可測関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が有界であるものとする。\(\varepsilon >0\)を任意に選んだ場合、それに対して、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ L_{\varepsilon }\leq f\leq U_{\varepsilon } \\
&&\left( b\right) \ 0\leq U_{\varepsilon }-L_{\varepsilon }<\varepsilon
\end{eqnarray*}を満たす単関数\begin{eqnarray*}
L_{\varepsilon } &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \\
U_{\varepsilon } &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}が存在することが保証される。

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単関数による近似定理

ルベーグ可測空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)が与えられた状況においてルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選び、この集合上に拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}を定義します。このとき、以下の条件を満たす関数列\(\left\{ g_{n}\right\} \)が存在することを保証できます。

1つ目の条件は、この関数列\(\left\{ g_{n}\right\} \)がいずれも\(X\)上に定義された単関数であるということです。つまり、この関数列\(\left\{ g_{n}\right\} \)の一般項は、\begin{equation*}g_{n}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}であり、なおかつこれは単関数です。

2つ目の条件は、この関数列\(\left\{ g_{n}\right\} \)が先の可測関数\(f\)へ各点収束するということです。つまり、\begin{equation*}\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }g_{n}\left( x\right) =f\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

3つ目の条件は、この関数列\(\left\{ g_{n}\right\} \)の要素であるすべての関数の値の絶対値が常に\(f\)の値の絶対値以下であるということです。つまり、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,\ \forall x\in X:\left\vert g_{n}\left( x\right) \right\vert \leq
\left\vert f\left( x\right) \right\vert
\end{equation*}が成り立ちます。

以上の主張を単関数による近似定理(simple approximation theorem)と呼びます。

命題(単関数による近似定理)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値関数ルベーグ可測関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられたとき、これに対して、以下の条件を満たす関数列\(\left\{ g_{n}\right\} \)が存在することが保証される。

  1. 関数列\(\left\{ g_{n}\right\} \)の一般項は\(X\)上に定義された単関数\(g_{n}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)である。
  2. 関数列\(\left\{ g_{n}\right\} \)は関数\(f\)へ各点収束する。すなわち、\begin{equation*}\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }g_{n}\left( x\right) =f\left(x\right)
    \end{equation*}が成り立つ。
  3. 関数列\(\left\{ g_{n}\right\} \)は以下の条件\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,\ \forall x\in X:\left\vert g_{n}\left( x\right) \right\vert \leq\left\vert f\left( x\right) \right\vert
    \end{equation*}を満たす。
  4. 特に、\(f\)が非負の値のみをとる場合には、以上の条件に加えて、以下の条件\begin{equation*}\forall x\in X:g_{1}\left( x\right) \leq g_{2}\left( x\right) \leq \cdots \end{equation*}を満たす関数列\(\left\{g_{n}\right\} \)が存在する。
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