ルベーグ積分の加法性
ルベーグ可測空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)に加えて、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。加えて、\(f\)は\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとします。この場合、\(f\)の\(X\)上におけるルベーグ積分\begin{equation*}\int_{X}f=\int_{X}f^{+}-\int_{X}f^{-}
\end{equation*}が有限な実数として定まります。
\(X\)の部分集合であるような互いに素な2つのルベーグ可測集合\(A,B\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選びます。ルベーグ可測集合族は和集合について閉じているため、\begin{equation*}A\cup B\in \mathfrak{M}_{\mu }
\end{equation*}でもあります。\(f\)が\(X\)上でルベーグ積分可能である場合、\(f\)は\(X\)の部分集合であるようなルベーグ可測集合上でルベーグ積分可能であるため、\(f\)は先のそれぞれの集合上でルベーグ積分可能であり、したがって、\begin{eqnarray*}\int_{A\cup B}f &=&\int_{A}f^{+}-\int_{A}f^{-} \\
\int_{A}f &=&\int_{A}f^{+}-\int_{A}f^{-} \\
\int_{B}f &=&\int_{B}f^{+}-\int_{B}f^{-}
\end{eqnarray*}がいずれも有限な実数として定まります。加えて、これらの間には以下の関係\begin{equation*}
\int_{A\cup B}f=\int_{A}f+\int_{B}f
\end{equation*}が成り立つことが保証されます。つまり、ルベーグ可測集合を2つのルベーグ可測集合に分割した場合、個々の集合におけるルベーグ積分の和をとればもとの集合におけるルベーグ積分が得られるということです。以上の性質をルベーグ積分に関する加法性(additivity)と呼びます。ちなみに、ここでは\(A\)と\(B\)が互いに素である状況を想定しているため、これを、\begin{equation*}\int_{A\sqcup B}f=\int_{A}f+\int_{B}f
\end{equation*}と表現することもできます。ただし、\(A\sqcup B\)は\(A\)と\(B\)の非交和です。
\end{equation*}が\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとする。\(X\)の部分集合であるような互いに素な2つのルベーグ可測集合\(A,B\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(A\cup B\)上および\(A\)上および\(B\)上でルベーグ積分可能であるとともに、以下の関係\begin{equation*}\int_{A\cup B}f=\int_{A}f+\int_{B}f
\end{equation*}が成り立つ。
\end{equation*}が\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとします。\(X\)が2つのルベーグ可測集合\(A,B\in \mathfrak{M}_{\mu }\)の非交和として表される場合には、すなわち、\begin{equation*}X=A\sqcup B
\end{equation*}が成り立つ場合には、先の命題より、\begin{equation*}
\int_{X}f=\int_{A}f+\int_{B}f
\end{equation*}が成り立ちます。
ルベーグ積分の有限加法性
ルベーグ可測集合を有限個のルベーグ可測集合に分割する場合にも同様の主張が成り立ちます。具体的には以下の通りです。
ルベーグ可測空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)に加えて、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。加えて、\(f\)は\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとします。この場合、\(f\)の\(X\)上におけるルベーグ積分\begin{equation*}\int_{X}f=\int_{X}f^{+}-\int_{X}f^{-}
\end{equation*}が有限な実数として定まります。
\(X\)の部分集合であるような互いに素な有限個のルベーグ可測集合\(A_{1},\cdots ,A_{n}\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選びます。ルベーグ可測集合族は和集合について閉じているため、\begin{equation*}A_{1}\cup \cdots \cup A_{n}\in \mathfrak{M}_{\mu }
\end{equation*}でもあります。\(f\)が\(X\)上でルベーグ積分可能である場合、\(f\)は\(X\)の部分集合であるようなルベーグ可測集合上でルベーグ積分可能であるため、\(f\)は先のそれぞれの集合上でルベーグ積分可能であり、したがって、\begin{eqnarray*}\int_{A_{1}\cup \cdots \cup A_{n}}f &=&\int_{A_{1}\cup \cdots \cup
A_{n}}f^{+}-\int_{A_{1}\cup \cdots \cup A_{n}}f^{-} \\
\int_{A_{1}}f &=&\int_{A_{1}}f^{+}-\int_{A_{1}}f^{-} \\
&&\vdots \\
\int_{A_{n}}f &=&\int_{A_{n}}f^{+}-\int_{A_{n}}f^{-}
\end{eqnarray*}がいずれも有限な実数として定まります。加えて、これらの間には以下の関係\begin{eqnarray*}
\int_{A_{1}\cup \cdots \cup A_{n}} &=&\int_{A_{1}}f+\cdots +\int_{A_{n}}f \\
&=&\sum_{k=1}^{n}\int_{A_{k}}f
\end{eqnarray*}が成り立つことが保証されます。つまり、ルベーグ可測集合を有限個のルベーグ可測集合に分割した場合、個々の集合上でのルベーグ積分の和をとればもとの集合上でのルベーグ積分が得られるということです。以上の性質をルベーグ積分に関する有限加法性(finite additivity)と呼びます。ちなみに、ここでは\(A_{1},\cdots ,A_{n}\)が互いに素である状況を想定しているため、これを、\begin{eqnarray*}\int_{A_{1}\sqcup \cdots \sqcup A_{n}}f &=&\int_{A_{1}}f+\cdots
+\int_{A_{n}}f \\
&=&\sum_{k=1}^{n}\int_{A_{k}}f
\end{eqnarray*}と表現することもできます。ただし、\(A_{1}\sqcup\cdots \sqcup A_{n}\)は\(A_{1},\cdots ,A_{n}\)の非交和です。証明では集合の個数\(n\)に関する数学的帰納法を利用します。
\end{equation*}が\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとする。\(X\)の部分集合であるような互いに素な有限\(n\)個のルベーグ可測集合\(A_{1},\cdots ,A_{n}\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(A_{1}\cup \cdots \cup A_{n}\)上および\(A_{k}\ \left( k=1,\cdots ,n\right) \)上でルベーグ積分可能であるとともに、以下の関係\begin{equation*}\int_{A_{1}\cup \cdots \cup A_{n}}f=\sum_{k=1}^{n}\int_{A_{k}}f
\end{equation*}が成り立つ。
\end{equation*}が\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとします。\(X\)が有限\(n\)個のルベーグ可測集合\(A_{1},\cdots ,A_{n}\in \mathfrak{M}_{\mu }\)の非交和として表される場合には、すなわち、\begin{equation*}X=\bigsqcup\limits_{k=1}^{n}A_{k}
\end{equation*}が成り立つ場合には、先の命題より、\begin{equation*}
\int_{X}f=\sum_{k=1}^{n}\int_{A_{k}}f
\end{equation*}が成り立ちます。
ルベーグ積分の可算加法性
ルベーグ可測集合を可算個のルベーグ可測集合に分割する場合にも同様の主張が成り立ちます。具体的には以下の通りです。
ルベーグ可測空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)に加えて、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。加えて、\(f\)は\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとします。この場合、\(f\)の\(X\)上におけるルベーグ積分\begin{equation*}\int_{X}f=\int_{X}f^{+}-\int_{X}f^{-}
\end{equation*}が有限な実数として定まります。
\(X\)を互いに素な可算個のルベーグ可測集合\(A_{1},A_{2},\cdots \in \mathfrak{M}_{\mu }\)に分割する状況を想定します。この場合、\(X\)は可算個のルベーグ可測集合の非交和\begin{equation*}X=\bigsqcup\limits_{k=1}^{+\infty }A_{k}
\end{equation*}として表現されます。ルベーグ可測集合族は和集合について閉じているため、\begin{equation*}
\bigsqcup\limits_{k=1}^{+\infty }A_{k}\in \mathfrak{M}_{\mu }
\end{equation*}です。\(f\)が\(X\)上でルベーグ積分可能である場合、\(f\)は\(X\)の部分集合であるようなルベーグ可測集合上でルベーグ積分可能であるため、\(f\)は先のそれぞれの集合上でルベーグ積分可能であり、したがって、任意の\(k\in \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}\int_{A_{k}}f=\int_{A_{k}}f^{+}-\int_{A_{k}}f^{-}
\end{equation*}がいずれも有限な実数として定まるということです。さらにこのとき、以下の関係\begin{eqnarray*}
\int_{X}f &=&\int_{A_{1}}f+\int_{A_{2}}f+\cdots \\
&=&\sum_{k=1}^{+\infty }\int_{A_{k}}f \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\sum_{k=1}^{n}\int_{A_{k}}f
\end{eqnarray*}が成り立つことが保証されます。つまり、ルベーグ可測集合を可算個のルベーグ可測集合に分割した場合、個々の集合上でのルベーグ積分の無限級数の和をとればもとの集合におけるルベーグ積分が得られるということです。以上の性質をルベーグ積分に関する可算加法性(countable additivity)と呼びます。証明ではルベーグの支配収束定理を利用します。
\end{equation*}が\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとする。\(X\)を分割する互いに素な可算個のルベーグ可測集合\(A_{1},A_{2},\cdots \in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選ぶ。つまり、\(A_{1},A_{2},\cdots \)は\(X\)の部分集合であるとともに、\begin{equation*}X=\bigsqcup\limits_{k=1}^{+\infty }A_{k}
\end{equation*}である。この場合、\(f\)は\(A_{1},A_{2},\cdots \)上でルベーグ積分可能であるとともに、以下の関係\begin{equation*}\int_{X}f=\sum_{k=1}^{+\infty }\int_{A_{k}}f
\end{equation*}が成り立つ。
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