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ルベーグ積分

非負値をとるルベーグ可測関数に関するチェビシェフの不等式

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非負値をとるルベーグ可測関数に関するチェビシェフの不等式

ルベーグ可測空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)に加えて、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された非負値をとる拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられている状況を想定します。つまり、\begin{equation*}
\forall x\in X:0\leq f\left( x\right) \leq +\infty
\end{equation*}が成り立つということです。

正の実数\(c>0\)を任意に選べば、\(f\left( x\right) \)の値が\(c\)以上になるような\(x\)からなる集合が、\begin{equation*}f^{-1}\left( \left[ c,+\infty \right] \right) =\left\{ x\in X\ |\ c\leq
f\left( x\right) \leq +\infty \right\}
\end{equation*}と定まります。区間\(\left[ c,+\infty \right] \)は拡大実数系\(\overline{\mathbb{R} }\)におけるボレル集合であり、仮定より\(f\)は拡大実数値ルベーグ可測関数であるため、\begin{equation*}f^{-1}\left( \left[ c,+\infty \right] \right) \in \mathfrak{M}_{\mu }
\end{equation*}が成り立ち、したがってルベーグ測度\(\mu \)はこのルベーグ可測集合の測度\begin{equation}\mu \left( f^{-1}\left( \left[ c,+\infty \right] \right) \right) \quad \cdots (1)
\end{equation}を必ず特定します。これは非負の拡大実数です。

その一方で、\(f\)は\(X\)上に定義された非負値をとる拡大実数値ルベーグ可測関数であるため、ルベーグ測度\begin{equation}\int_{X}f \quad \cdots (2)
\end{equation}が1つの拡大実数として定まることが保証されます。

仮定より\(c>0\)ですが、この場合には\(\left( 1\right) \)と\(\left(2\right) \)の間に以下の関係\begin{equation*}\mu \left( f^{-1}\left( \left[ c,+\infty \right] \right) \right) \leq \frac{1}{c}\cdot \int_{X}f
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\mu \left( \left\{ x\in X\ |\ c\leq f\left( x\right) \leq +\infty \right\}
\right) \leq \frac{1}{c}\cdot \int_{X}f
\end{equation*}が成り立つことが保証されます。これをチェビシェフの不等式(Chebychev’s Inequality)と呼びます。

命題(チェビシェフの不等式)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された非負値をとる拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとする。正の実数\(c>0\)を任意に選んだとき、以下の関係\begin{equation*}\mu \left( \left\{ x\in X\ |\ c\leq f\left( x\right) \leq +\infty \right\}
\right) \leq \frac{1}{c}\cdot \int_{X}f
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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つまり、ルベーグ可測関数\(f\)の形状が分からない場合でもルベーグ積分\(\int_{X}f\)の値さえ明らかであれば、\(f\left(x\right) \)の値が\(c\)以上になるような\(x\)からなるルベーグ可測集合の測度が収まる範囲を特定できるということです。ルベーグ積分の値という限られた情報からもとのルベーグ可測関数に関する有益な情報を導き出せるという意味においてチェビシェフの不等式は優れています。

 

ルベーグ積分の値が0であるための必要十分条件

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された非負値をとる拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられている状況を想定します。つまり、\begin{equation*}
\forall x\in X:0\leq f\left( x\right) \leq +\infty
\end{equation*}が成り立つということです。加えて、\(f\)は\(X\)上のほとんどいたるところで値として\(0\)をとるものとします。つまり、以下のルベーグ可測集合\begin{equation*}A=\left\{ x\in X\ |\ f\left( x\right) \not=0\right\}
\end{equation*}の測度が、\begin{equation*}
\mu \left( A\right) =0
\end{equation*}であるとともに、\begin{equation*}
\forall x\in X\backslash A:f\left( x\right) =0
\end{equation*}が成り立つということです。この場合、\begin{equation*}
\int_{X}f=0
\end{equation*}が成り立ちます。逆も成り立つため以下の命題を得ます。証明ではチェビシェフの不等式を利用します。

命題(ルベーグ積分の値が0であるための必要十分条件)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された非負値をとる拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとする。\(X\)上のほとんどいたるところで\(f=0\)であることと、\begin{equation*}\int_{X}f=0
\end{equation*}が成り立つことは必要十分である。

証明

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ルベーグ積分可能な関数はほとんどいたるところで有限値をとる

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された非負値をとる拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられている状況を想定します。つまり、\begin{equation*}
\forall x\in X:0\leq f\left( x\right) \leq +\infty
\end{equation*}が成り立つということです。加えて、\(f\)は\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとします。つまり、\begin{equation*}\int_{X}f<+\infty
\end{equation*}が成り立つということです。この場合には、\(f\)は\(X\)上のほとんどいたるところで有限な実数を値としてとることが保証されます。つまり、以下のルベーグ可測集合\begin{equation*}A=\left\{ x\in X\ |\ f\left( x\right) =+\infty \right\}
\end{equation*}のルベーグ測度が、\begin{equation*}
\mu \left( A\right) =0
\end{equation*}であるとともに、\begin{equation*}
\forall x\in X\backslash A:0\leq f\left( x\right) <+\infty
\end{equation*}が成り立つということです。証明ではチェビシェフの不等式を利用します。

命題(ルベーグ積分可能な関数はほとんどいたるところで有限値をとる)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された非負値をとる拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとする。\(f\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能であるならば、\(f\)は\(X\)上のほとんどいたるところで有限な実数を値としてとる。
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