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ルベーグ積分

ルベーグの支配収束定理(優収束定理)

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ルベーグの支配収束定理

有限測度を持つルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された一様有界なルベーグ可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)へ各点収束する場合には、\(f\)もまた有界なルベーグ可測関数であるとともに、以下の関係\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}=\int_{X}\lim\limits_{n\rightarrow
\infty }f_{n}=\int_{X}f
\end{equation*}成り立つことを明らかにしました(有界収束定理)。では、有限測度を持つとは限らない一般のルベーグ可測集合上に定義された一般の拡大実数値ルベーグ可測関数列について同様の主張が成り立つことを保証するためには、その関数列はどのような条件を満たしていればよいのでしょうか。順番に考えます。

ルベーグ可測空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)が与えられた状況において、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選びます。その上で、\(X\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数からなる関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)をとります。つまり、この関数列の一般項\begin{equation*}f_{n}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}は拡大実数値ルベーグ可測関数であるということです。

さらに、このルベーグ可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)は\(X\)上において拡大実数値関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}へ各点収束するものとします。つまり、\begin{equation*}
\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right) =f\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立つということです。ルベーグ可測関数列の各点極限はルベーグ可測関数であるため、\(f\)もまた\(X\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数です。

以上の関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)に対して、以下の2つの条件を満たす拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が存在する状況を想定します。

1つ目の条件は、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の要素である任意の関数\(f_{n}\)について、\(X\)上において\(g\)が定める値が\(\left\vert f_{n}\right\vert \)が定める値以上であること、すなわち、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,\ \forall x\in X:\left\vert f_{n}\left( x\right) \right\vert \leq g\left(
x\right)
\end{equation*}すなわち、\(X\)上において、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,:\left\vert f_{n}\right\vert \leq g
\end{equation*}が成り立つということです。このことを指して、\(X\)上において関数\(g\)は関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)を支配する(dominate)と言います。

2つ目の条件は、\(g\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能であるということです。先の条件より\(g\)は非負値をとるため、\(g\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能であることと、以下の条件\begin{equation*}\int_{X}g<+\infty
\end{equation*}が成り立つことは必要十分です。

以上の条件が満たされる場合、ルベーグ積分に関する比較判定法より、関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)の要素である関数\(f_{1},f_{2},\cdots \)はいずれも\(X\)上においてルベーグ積分可能になります。したがって、これらの関数の\(X\)上におけるルベーグ積分からなる実数列\begin{equation*}\left\{ \int_{X}f_{n}\right\} =\left\{ \int_{X}f_{1},\int_{X}f_{2},\cdots
\right\}
\end{equation*}が得られるため、その極限\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}
\end{equation*}をとることができます。ただし、現時点において、この極限が有限な実数として定まるか明らかではありません。また、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の各点極限である関数\(f\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能であるかも明らかではありません。

関数\(g\)は関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)を支配するため、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,\ \forall x\in X:\left\vert f_{n}\left( x\right) \right\vert \leq g\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。したがって、極限についても、\begin{equation*}
\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }\left\vert f_{n}\left( x\right)
\right\vert \leq \lim_{n\rightarrow \infty }g\left( x\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation}
\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }\left\vert f_{n}\left( x\right)
\right\vert \leq g\left( x\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。その一方で、関数\(f\)は関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の各点極限であるため、\begin{equation*}\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right) =f\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。したがって、\begin{equation}
\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }\left\vert f_{n}\left( x\right)
\right\vert =\left\vert f\left( x\right) \right\vert \quad \cdots (2)
\end{equation}も成り立ちます。\(\left(1\right) ,\left( 2\right) \)より、\begin{equation*}\forall x\in X:\left\vert f\left( x\right) \right\vert \leq g\left( x\right)
\end{equation*}を得るため、ルベーグ積分に関する比較判定法より、関数\(f\)もまた\(X\)上においてルベーグ積分可能になります。したがって、関数\(f\)のルベーグ積分\begin{equation*}\int_{X}f
\end{equation*}が有限な実数として定まります。しかも、これは先の実数列\(\left\{ \int_{X}f_{n}\right\} \)の極限と一致することが保証されます。つまり、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}=\int_{X}f
\end{equation*}が成り立つということです。これをルベーグの支配収束定理(lebesgue dominated convergence theorem)やルベーグの優収束定理、もしくはルベーグの収束定理などと呼びます。

関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が関数\(f\)へ各点収束する場合には、\begin{equation*}\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right) =f\left(
x\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}=f
\end{equation*}を得るため、ルベーグの支配収束定理の主張\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}=\int_{X}f
\end{equation*}は以下の命題\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}=\int_{X}\lim_{n\rightarrow \infty
}f_{n}
\end{equation*}と必要十分です。つまり、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の各点極限に相当する関数\(\lim\limits_{n\rightarrow \infty }f_{n}\)のルベーグ積分(右辺)は、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の要素である個々の関数のルベーグ積分からなる数列\(\left\{\int_{X}f_{n}\right\} \)の極限(左辺)と一致します。証明ではファトゥの補題を利用します。

命題(ルベーグの支配収束定理)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数からなる関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が\(X\)上において拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)へ各点収束するものとする。この場合、\(f\)もまた\(X\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数である。これに対して、\(X\)上において\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :\left\vert f_{n}\right\vert \leq g
\end{equation*}を満たすとともに\(X\)上でルベーグ積分可能な拡大実数値ルベーグ可測関数\(g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が存在するならば、関数\(f_{1},f_{2},\cdots ,f\)はいずれも\(X\)上でルベーグ積分可能であるとともに、以下の関係\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}=\int_{X}\lim\limits_{n\rightarrow
\infty }f_{n}=\int_{X}f
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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ほとんどいたるところで各点収束する場合のルベーグの支配収束定理

ルベーグの支配収束定理は、\(X\)上のすべての点において関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が関数\(f\)へ各点収束する状況において、\(X\)上のすべての点において\(\left\{ f_{n}\right\} \)を支配するとともに\(X\)上でルベーグ積分可能な関数\(g\)の存在を要求しています。実際には、\(X\)上のほとんどいたるところで\(\left\{ f_{n}\right\} \)が関数\(f\)へ各点する状況において、\(X\)上のほとんどいたるところで\(\left\{ f_{n}\right\} \)を支配するとともに\(X\)上でルベーグ積分可能な関数\(g\)が存在する場合にも同様の主張が成り立ちます。

命題(ルベーグの支配収束定理)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数からなる関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が\(X\)上のほとんどいたるところで拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)へ各点収束するものとする。この場合、\(f\)もまた\(X\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数である。これに対して、\(X\)上のほとんどいたるところで、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :\left\vert f_{n}\right\vert \leq g
\end{equation*}を満たすとともに\(X\)上でルベーグ積分可能な拡大実数値ルベーグ可測関数\(g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が存在するならば、関数\(f_{1},f_{2},\cdots ,f\)はいずれも\(X\)上でルベーグ積分可能であるとともに、以下の関係\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}=\int_{X}\lim\limits_{n\rightarrow
\infty }f_{n}=\int_{X}f
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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ルベーグの支配収束定理が要求する条件の吟味

ルベーグ関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)がルベーグ関数\(f\)へ各点収束する状況において、関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)を支配するとともにルベーグ積分可能であるような関数\(g\)が存在する場合には、各点極限\(f\)のルベーグ積分と、関数\(f_{1},f_{2},\cdots \)のルベーグ積分からなる数列の極限が一致すること、すなわち、\begin{equation*}\int_{X}f=\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}
\end{equation*}が成り立つことが明らかになりました。他方で、関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)を支配するとともにルベーグ積分可能であるような関数\(g\)が存在しない場合、同様の主張は成り立つとは限りません。以下の例より明らかです。

例(ルベーグの支配収束定理が要求する条件の吟味)
区間\(\left( 0,1\right) \)はルベーグ可測集合です。それぞれの番号\(n\in \mathbb{N} \)に対して、関数\(f_{n}:\mathbb{R} \supset \left( 0,1\right) \rightarrow \mathbb{R} \)を、\begin{equation*}f_{n}\left( x\right) =n\cdot \chi _{\left( 0,\frac{1}{n}\right) }\left(
x\right)
\end{equation*}と定義します。ただし、\(\chi _{\left( 0,\frac{1}{n}\right) }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は区間\(\left( 0,\frac{1}{n}\right) \)に関する特性関数であり、\begin{equation*}\chi _{\left( 0,\frac{1}{n}\right) }\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ 0<x<\frac{1}{n}\right) \\
0 & \left( otherwise\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}と定義されます。その一方で、関数\(f:\mathbb{R} \supset \left( 0,1\right) \rightarrow \mathbb{R} \)を、\begin{equation*}\forall x\in \mathbb{R} :f\left( x\right) =0
\end{equation*}と定義します。任意の\(n\in \mathbb{N} \)について\(f_{n}\)は非負値をとるルベーグ可測関数であり、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)は\(f\)へ各点収束します。その一方で、以下の条件\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,\ \forall x\in \left( 0,1\right) :\left\vert f_{n}\left( x\right)
\right\vert \leq g\left( x\right)
\end{equation*}を満たすとともに\(\left(0,1\right) \)上でルベーグ積分可能であるようなルベーグ可測関数\(g:\mathbb{R} \supset \left( 0,1\right) \rightarrow \mathbb{R} \)は存在しません。したがって、関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)はルベーグの支配収束定理が要求する条件を満たしません。さらに、\begin{equation*}\int_{\left( 0,1\right) }f\not=\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{\left(
0,1\right) }f_{n}
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。

 

ルベーグの支配収束定理を用いたルベーグ積分列の収束判定

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数からなる関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が\(X\)上のほとんどいたるところで拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)へ各点収束するものとします。この場合、\(f\)もまた\(X\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数になります。さらに、\(X\)上のほとんどいたるところで、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :\left\vert f_{n}\right\vert \leq g
\end{equation*}を満たす拡大実数値ルベーグ可測関数\(g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)を適当に選びます。その上で、\(g\)が\(X\)上でルベーグ積分であることを確認できれば、ルベーグの支配収束定理より、関数\(f_{1},f_{2},\cdots ,f\)はいずれも\(X\)上でルベーグ積分可能になるとともに、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}=\int_{X}f
\end{equation*}が成り立ちます。

以上を踏まえると、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数からなる関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)のルベーグ積分列\(\left\{ \int_{X}f_{n}\right\} \)の極限を以下の手順から評価できます。

  1. 与えられた関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が\(X\)上のほとんどいたるところで各点収束する関数\(f\)を特定する。
  2. \(X\)上のほとんどいたるところで\(\left\{ f_{n}\right\} \)を支配するルベーグ可測関数\(g\)を選んだ上で、\(g\)が\(X\)上でルベーグ積分可能であることを確認する。以上の条件が満たされる場合、\(\left\{ \int_{X}f_{n}\right\} \)は有限な実数へ収束する実数列になる。
  3. 関数\(f\)の\(X\)上におけるルベーグ積分を計算する。これは有限な実数として定まるとともに、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}=\int_{X}f \end{equation*}が成り立つ。
例(ルベーグ積分列の収束判定)
ルベーグの支配収束定理を用いて以下の極限\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{\left[ 0,1\right] }\frac{nx}{1+n^{2}x^{2}}
\end{equation*}を特定します。関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の一般項である関数\(f_{n}:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を、\begin{equation*}f_{n}\left( x\right) =\frac{nx}{1+n^{2}x^{2}}
\end{equation*}と定義します。\(f_{n}\)は連続関数であるためルベーグ可測関数です。点\(x\in (0,1]\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right) &=&\lim_{n\rightarrow
\infty }\frac{nx}{1+n^{2}x^{2}}\quad \because f_{n}\text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\frac{1}{\frac{1}{nx}+nx}\quad \because x\in
(0,1] \\
&=&\frac{1}{0+\infty } \\
&=&0
\end{eqnarray*}であるため、関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を、\begin{equation*}f\left( x\right) =0
\end{equation*}と定義すれば、\(\left[ 0,1\right] \)上のほとんどいたるところで\(\left\{ f_{n}\right\} \)は\(f\)へ各点収束します。番号\(n\in \mathbb{N} \)と点\(x\in (0,1]\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\left\vert f_{n}\left( x\right) \right\vert &=&\left\vert \frac{nx}{1+n^{2}x^{2}}\right\vert \quad \because f_{n}\text{の定義}
\\
&=&\frac{nx}{1+n^{2}x^{2}}\quad \because n\in \mathbb{N} \text{かつ}x\in (0,1] \\
&=&\frac{1}{\frac{1}{nx}+nx}\quad \because n\in \mathbb{N} \text{かつ}x\in (0,1] \\
&=&\frac{1}{\left( \sqrt{nx}-\frac{1}{\sqrt{nx}}\right) ^{2}+2} \\
&\leq &\frac{1}{2}
\end{eqnarray*}であるため、関数\(g:\left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を、\begin{equation*}g\left( x\right) =\frac{1}{2}
\end{equation*}と定義すれば、\(\left[ 0,1\right] \)上のほとんどいたるところで\(\left\vert f_{n}\right\vert \leq g\)が成り立ちます。さらに、\begin{eqnarray*}\int_{\left[ 0,1\right] }g &=&\int_{\left[ 0,1\right] }\frac{1}{2}\quad
\because g\text{の定義} \\
&=&\frac{1}{2}\cdot \mu \left( \left[ 0,1\right] \right) \\
&=&\frac{1}{2}\left( 1-0\right) \\
&=&\frac{1}{2} \\
&<&+\infty
\end{eqnarray*}であるため、\(g\)は\(\left[ 0,1\right]\)上でルベーグ積分可能です。以上より、\(\left\{ f_{n}\right\} \)と\(g\)はルベーグの支配収束定理が要求する条件を満たすため、\begin{eqnarray*}\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{\left[ 0,1\right] }\frac{nx}{1+n^{2}x^{2}}
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{\left[ 0,1\right] }f_{n}\quad \because
f_{n}\text{の定義} \\
&=&\int_{\left[ 0,1\right] }f\quad \because \text{ルベーグの支配収束定理} \\
&=&\int_{\left[ 0,1\right] }0\quad \because f\text{の定義}
\\
&=&0\cdot \mu \left( \left[ 0,1\right] \right) \\
&=&0\left( 1-0\right) \\
&=&0
\end{eqnarray*}を得ます。

 

ルベーグの支配収束定理を用いたルベーグ積分可能性の判定

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数からなる関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が\(X\)上のほとんどいたるところで拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)へ各点収束するものとします。この場合、\(f\)もまた\(X\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数になります。さらに、\(X\)上のほとんどいたるところで、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :\left\vert f_{n}\right\vert \leq g
\end{equation*}を満たす拡大実数値ルベーグ可測関数\(g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)を適当に選びます。その上で、\(g\)が\(X\)上でルベーグ積分であることを確認できれば、ルベーグの支配収束定理より、関数\(f_{1},f_{2},\cdots ,f\)はいずれも\(X\)上でルベーグ積分可能になるとともに、\begin{equation*}\int_{X}f=\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n}
\end{equation*}が成り立ちます。

以上を踏まえると、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)のルベーグ積分可能性を以下の手順で判定できます。

  1. \(X\)上のほとんどいたるところで\(f\)へ各点収束する拡大実数値ルベーグ可測関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)を適当に選ぶ。
  2. \(X\)上のほとんどいたるところで\(\left\{ f_{n}\right\} \)を支配するルベーグ可測関数\(g\)を選んだ上で、\(g\)が\(X\)上でルベーグ積分可能であることを確認する。以上の条件が満たされる場合、\(f\)は\(X\)上でルベーグ積分可能になる。
  3. 以上の条件が満たされる場合、ルベーグ積分列\(\left\{ \int_{X}f_{n}\right\} \)は有限な実数へ収束する実数列になるとともに、\begin{equation*}\int_{X}f=\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{X}f_{n} \end{equation*}が成り立つ。

 

演習問題

問題(ルベーグの支配収束定理が要求する条件の吟味)
区間\(\left( 0,1\right) \)はルベーグ可測集合です。それぞれの番号\(n\in \mathbb{N} \)に対して、関数\(f_{n}:\mathbb{R} \supset \left( 0,1\right) \rightarrow \mathbb{R} \)を、\begin{eqnarray*}f_{n}\left( x\right) &=&n\cdot \chi _{\left( 0,\frac{1}{n}\right) }\left(
x\right) \\
&=&\left\{
\begin{array}{cl}
n & \left( if\ 0<x<\frac{1}{n}\right) \\
0 & \left( otherwise\right)
\end{array}\right.
\end{eqnarray*}と定義します。その一方で、関数\(f:\mathbb{R} \supset \left( 0,1\right) \rightarrow \mathbb{R} \)を、\begin{equation*}\forall x\in \mathbb{R} :f\left( x\right) =0
\end{equation*}と定義します。任意の\(n\in \mathbb{N} \)について\(f_{n}\)は非負値をとるルベーグ可測関数であり、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)は\(f\)へ各点収束する一方で、以下の条件\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,\ \forall x\in \left( 0,1\right) :\left\vert f_{n}\left( x\right)
\right\vert \leq g\left( x\right)
\end{equation*}を満たすとともに\(\left(0,1\right) \)上でルベーグ積分可能であるようなルベーグ可測関数\(g:\mathbb{R} \supset \left( 0,1\right) \rightarrow \mathbb{R} \)は存在しないことを示してください。さらに、\begin{equation*}\int_{\left( 0,1\right) }f\not=\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{\left(
0,1\right) }f_{n}
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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問題(ルベーグの単調収束定理)
ルベーグの支配収束定理を用いて以下の極限\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{\mathbb{R} }\frac{n\sin \left( \frac{x}{n}\right) }{x\left( x^{2}+1\right) }
\end{equation*}を求めてください。

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問題(ルベーグの単調収束定理)
ルベーグの支配収束定理を用いて以下の極限\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\int_{\left[ 0,1\right] }\frac{n\sin \left(
x\right) }{1+n^{2}\sqrt{x}}
\end{equation*}を求めてください。

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