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ルベーグ積分

ルベーグ積分に関する比較判定法

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ルベーグ積分に関する比較判定法

ルベーグ可測空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)に加えて、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。\(f\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能であることとは、\begin{eqnarray*}\int_{X}f^{+} &<&+\infty \\
\int_{X}f^{-} &<&+\infty
\end{eqnarray*}がともに成り立つこととして定義されます。ただし、\(f^{+}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)は\(f\)の正成分であり、\(f^{-}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)は\(f\)の負成分であり、これらはそれぞれ、\begin{eqnarray*}f^{+} &=&\left\{ f,0\right\} \\
f^{-} &=&\left\{ -f,0\right\}
\end{eqnarray*}と定義されます。\(f\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能であることと、関数\(\left\vert f\right\vert :\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)について、\begin{equation*}\int_{X}\left\vert f\right\vert <+\infty
\end{equation*}が成り立つことは必要十分条件です。また、\(f\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能である場合、\(f\)の\(X\)上におけるルベーグ積分は、\begin{equation*}\int_{X}f=\int_{X}f^{+}-\int_{X}f^{-}
\end{equation*}と定義されます。これは1つの有限な実数として定まります。以降では、ルベーグ積分可能であることを判定するための代替的な方法について解説します。

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。これに対して、以下の3つの条件を満たす拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}
g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が存在する場合、もとの関数\(f\)は\(X\)上においてルベーグ積分可能であることが保証されます。

1つ目の条件は、\(g\)が非負値をとるルベーグ可測関数であるということです。つまり、以下の条件\begin{equation*}\forall x\in X:0\leq g\left( x\right) \leq +\infty
\end{equation*}が成り立つということです。

2つ目の条件は、\(g\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能であるということです。\(g\)は非負値をとるため、\(g\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能であることと、以下の条件\begin{equation*}\int_{X}g<+\infty
\end{equation*}が成り立つことは必要十分です。

3つ目の条件は、\(X\)上において\(g\)が定める値が\(\left\vert f\right\vert \)が定める値以上であること、すなわち、\begin{equation*}\forall x\in X:\left\vert f\left( x\right) \right\vert \leq g\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つということです。

以上の3つの条件を満たす関数\(g\)が存在する場合、\(f\)は\(X\)上においてルベーグ積分可能であることが保証されます。これをルベーグ積分に関する比較判定法(integral comparison test)と呼びます。

命題(ルベーグ積分に関する比較判定法)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとする。これに対して、非負値をとるとともに\(X\)上でルベーグ積分可能であり、なおかつ\(X\)上において\(\left\vert f\right\vert \leq g\)を満たす拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が存在するならば、\(f\)は\(X\)上でルベーグ積分可能である。
証明

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例(ルベーグ積分に関する比較判定法)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
2 & \left( if\ 0\leq x<\frac{1}{2}\right) \\
-1 & \left( if\ \frac{1}{2}\leq x\leq 1\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)はルベーグ可測集合\(\left[ 0,1\right] \)上に定義されたルベーグ可測関数です。関数\(g:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =2
\end{equation*}を定めるものとします。\(g\)は定数関数であるためルベーグ可測です。また、\(f\)は非負値をとるとともに、\(\left[ 0,1\right] \)上において、\begin{equation*}\left\vert f\right\vert \leq g
\end{equation*}が成り立ちます。さらに、\begin{eqnarray*}
\int_{\left[ 0,1\right] }g &=&\int_{\left[ 0,1\right] }2\quad \because g\text{の定義} \\
&=&2\cdot \mu \left( \left[ 0,1\right] \right) \\
&=&2\left( 1-0\right) \\
&=&2 \\
&<&+\infty
\end{eqnarray*}であるため、\(g\)は\(\left[ 0,1\right]\)上でルベーグ積分可能です。したがって、比較判定法より\(f\)は\(\left[ 0,1\right] \)上でルベーグ積分可能です。
例(ルベーグ積分に関する比較判定法)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。その上で、関数\begin{equation*}
\left\vert f\right\vert :\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}を定義します。ルベーグ可測関数の絶対値として定義される関数はルベーグ可測であるため\(\left\vert f\right\vert \)はルベーグ可測です。さらに、以下の条件\begin{equation}\int_{X}\left\vert f\right\vert <+\infty \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つことは\(f\)が\(X\)上でルベーグ積分可能であるための必要十分条件です。その一方で、\(\left\vert f\right\vert \)は非負値をとるとともに、\begin{equation*}\left\vert f\right\vert \leq \left\vert f\right\vert
\end{equation*}が成り立つため、比較判定法より、\(\left\vert f\right\vert \)が\(X\)上でルベーグ積分可能であるならば、\(f\)は\(X\)上でルベーグ積分可能です。ただし、\(\left\vert f\right\vert \)は非負値をとるため、\(\left\vert f\right\vert \)が\(X\)上でルベーグ積分可能であることは\(\left( 1\right) \)が成り立つことを意味します。以上より、比較判定法が要求する条件は\(\left(1\right) \)の一般化であることが明らかになりました。

 

演習問題

問題(部分集合におけるルベーグ積分可能性)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとします。\(A\subset X\)を満たすルベーグ可測集合\(A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(A\)上でルベーグ積分可能であることを比較法を用いて示してください。
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問題(比較判定法)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x\in \mathbb{Q} \cap \left[ 0,1\right] \right) \\
-x^{2} & \left( if\ x\in \left[ 0,1\right] \backslash \mathbb{Q} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)はルベーグ可測集合\(\left[ 0,1\right] \)上に定義されたルベーグ可測関数です。\(f\)が\(\left[ 0,1\right] \)上でルベーグ積分可能であることを比較法を用いて示してください。
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