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数列

等差数列とその部分和および極限

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等差数列

数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、定数\(a,d\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}x_{n}=a+\left( n-1\right) d
\end{equation*}として表される場合、このような数列を等差数列(arithmetic progression)と呼びます。等差数列の項を具体的に列挙すると、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&a \\
x_{2} &=&a+d \\
x_{3} &=&a+2d \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}となります。つまり、等差数列とは初項が\(a\)であり、なおかつ隣り合う項が共通の差\(d\)を持つ数列です。この\(d\)を公差(common difference)と呼びます。

等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項\(x_{n}\)を変数\(n\)に関する関数とみなすとき、これは線型式です。したがって、横軸を\(n\)、縦軸を\(x_{n}\)とする平面上に等差数列\(\left\{x_{n}\right\} \)の項をプロットすると、それらの点はいずれも、傾きが\(d\)であるような直線上に位置します。

例(等差数列)
初項が\(1\)で公差が\(2\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項は、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&1+\left( n-1\right) 2 \\
&=&-1+2n
\end{eqnarray*}です。この数列の項を具体的に列挙すると、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&-1+2\cdot 1=1 \\
x_{2} &=&-1+2\cdot 2=3 \\
x_{3} &=&-1+2\cdot 3=5 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}となります。

例(等差数列)
初項が\(-1\)で公差が\(-2\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項は、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&-1+\left( n-1\right) \left( -2\right) \\
&=&1-2n
\end{eqnarray*}です。この数列の項を具体的に列挙すると、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&1-2\cdot 1=-1 \\
x_{2} &=&1-2\cdot 2=-3 \\
x_{3} &=&1-2\cdot 3=-5 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}となります。

例(等差数列)
初項が\(a\)で公差が\(0\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項は、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&a+\left( n-1\right) 0 \\
&=&a
\end{eqnarray*}です。この数列の項を具体的に列挙すると、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&a \\
x_{2} &=&a \\
x_{3} &=&a \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}となります。つまり、\(\left\{ x_{n}\right\} \)は定数数列です。定数数列は公差が\(0\)であるような等差数列であるということです。

 

等差数列の再帰的な定義

初項が\(a\)であり公差が\(d \)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)とは、初項が\(a\)であるとともに、隣り合う項が共通の差\(d\)を持つ数列であるため、等差数列を定義する再帰式は、\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
x_{n}-x_{n-1}=d\end{array}\right.
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
x_{n}=x_{n-1}+d\end{array}\right.
\end{equation*}となります。実際、この再帰式を利用すると、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の項を、\begin{eqnarray*}x_{1} &=&a \\
x_{2} &=&x_{1}+d=a+d \\
x_{3} &=&x_{2}+d=\left( a+d\right) +d=a+2d \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}と次々に計算できるため、\(\left\{ x_{n}\right\} \)は初項が\(a\)であり公差が\(d\)であるような等差数列です。

例(等差数列の再帰的な定義)
初項が\(1\)で公差が\(2\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を再帰的に表現すると、\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=1 \\
x_{n}=x_{n-1}+2\end{array}\right.
\end{equation*}となります。

例(等差数列)
初項が\(-1\)で公差が\(-2\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を再帰的に表現すると、\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=-1 \\
x_{n}=x_{n-1}-2\end{array}\right.
\end{equation*}となります。

例(等差数列)
初項が\(a\)で公差が\(0\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を再帰的に表現すると、\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
x_{n}=x_{n-1}\end{array}\right.
\end{equation*}となります。

 

等差数列の部分和

等差数列の部分和、すなわち初項から第\(n\)項までの和は以下の通りです。

命題(等差数列の部分和)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、定数\(a,d\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}x_{n}=a+\left( n-1\right) d
\end{equation*}と表されるものとする。この数列の部分和は、\begin{equation*}
s_{n}=\frac{n\left[ 2a+\left( n-1\right) d\right] }{2}
\end{equation*}である。

証明

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例(等差数列の部分和)
初項が\(1\)で公差が\(2\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分和は、上の命題より、\begin{eqnarray*}s_{n} &=&\frac{n\left[ 2\cdot 1+\left( n-1\right) 2\right] }{2} \\
&=&\frac{n\left( 2+2n-2\right) }{2} \\
&=&n^{2}
\end{eqnarray*}です。

例(等差数列の部分和)
初項が\(-1\)で公差が\(-2\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分和は、上の命題より、\begin{eqnarray*}s_{n} &=&\frac{n\left[ 2\left( -1\right) +\left( n-1\right) \left( -2\right) \right] }{2} \\
&=&\frac{n\left( -2-2n+2\right) }{2} \\
&=&-n^{2}
\end{eqnarray*}です。

例(等差数列の部分和)
初項が\(a\)で公差が\(0\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分和は、上の命題より、\begin{eqnarray*}s_{n} &=&\frac{n\left[ 2a+\left( n-1\right) 0\right] }{2} \\
&=&na
\end{eqnarray*}です。

 

等差数列の極限

公差が\(0\)であるような等差数列(すなわち定数数列)は収束します。

命題(等差数列が収束するための条件)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、定数\(a,d\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}x_{n}=a+\left( n-1\right) d
\end{equation*}と表されるものとする。\(d=0\)の場合に\(\left\{ x_{n}\right\} \)は有限な実数へ収束するとともに、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=a
\end{equation*}となる。

証明

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公差が\(0\)ではない等差数列は発散します。

命題(等差数列が収束するための条件)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、定数\(a,d\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}x_{n}=a+\left( n-1\right) d
\end{equation*}と表されるものとする。\(d\not=0\)の場合に\(\left\{x_{n}\right\} \)は発散するとともに、\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ d &>&0\Rightarrow \lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=+\infty
\\
\left( b\right) \ d &<&0\Rightarrow \lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=-\infty
\end{eqnarray*}が成り立つ。

証明

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例(等差数列の極限)
初項が\(1\)で公差が\(2\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)について、上の命題より、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=+\infty
\end{equation*}が成り立ちます。

例(等差数列の極限)
初項が\(-1\)で公差が\(-2\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)について、上の命題より、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=-\infty
\end{equation*}が成り立ちます。

例(等差数列の極限)
初項が\(a\)で公差が\(0\)であるような等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)について、上の命題より、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=a
\end{equation*}が成り立ちます。

 

等差数列の応用例

ある偶数\(e\in \mathbb{Z} \)を出発点としたとき、\(e\)以上のすべての偶数を順番に並べると、\begin{equation*}e,\ e+2,\ e+4,\ e+6,\ \cdots
\end{equation*}となりますが、これは初項が\(e\)で公差が\(2\)であるような等差数列です。

例(偶数の列)
正の偶数の並び\begin{equation*}
2,\ 4,\ 6,\ 8,\ \cdots
\end{equation*}は初項が\(2\)で公差が\(2\)であるような等差数列であるため、その一般項は、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&2+\left( n-1\right) 2 \\
&=&2n
\end{eqnarray*}です。

ある奇数\(o\in \mathbb{Z} \)を出発点としたとき、\(o\)以上のすべての奇数を順番に並べると、\begin{equation*}o,\ o+2,\ o+4,\ o+6,\ \cdots
\end{equation*}となりますが、これは初項が\(o\)で公差が\(2\)であるような等差数列です。

例(奇数の列)
正の奇数の並び\begin{equation*}
1,\ 3,\ 5,\ 7,\ \cdots
\end{equation*}は初項が\(1\)で公差が\(2\)であるような等差数列であるため、その一般項は、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&1+\left( n-1\right) 2 \\
&=&2n-1
\end{eqnarray*}です。

 

演習問題

問題(等差数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が等差数列であるとともに、\begin{eqnarray*}x_{1} &=&4 \\
x_{10} &=&67
\end{eqnarray*}が成り立つものとします。この数列\(\left\{x_{n}\right\} \)の一般項を求めてください。
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問題(等差数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が等差数列であるとともに、\begin{eqnarray*}x_{1} &=&3 \\
x_{2} &=&7
\end{eqnarray*}を満たすものとします。\(x_{50}\)を求めてください。
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問題(等差数列の部分和)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が等差数列であるとともに、\begin{eqnarray*}x_{1} &=&50 \\
x_{2} &=&45
\end{eqnarray*}を満たすものとします。部分和\(s_{30}\)を求めてください。
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問題(等差数列の部分和)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が等差数列であるとともに、\begin{eqnarray*}x_{1} &=&7 \\
x_{2} &=&12
\end{eqnarray*}を満たすものとします。以下の和\begin{equation*}
x_{11}+x_{12}+x_{13}+\cdots +x_{20}
\end{equation*}を求めてください。

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問題(等差数列の部分和)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が等差数列であるとともに、\begin{eqnarray*}x_{11} &=&30 \\
s_{11} &=&55
\end{eqnarray*}を満たすものとします。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項を求めてください。
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問題(等差数列の応用)
最初の\(n\)個の正の偶数の総和を求めてください。
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問題(等差数列の応用)
最初の\(n\)個の正の奇数の総和を求めてください。
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