復習:実数の連続性
復習になりますが、実数の公理系は\(\mathbb{R} \)が全順序体であることを規定する公理と\(\mathbb{R} \)の連続性を規定する公理に分類されます。特に、実数の連続性を特徴づける公理としてデデキントの公理を採用しました。
&&\left( b\right) \ \max A\text{は存在しないが}\min B\text{は存在する}
\end{eqnarray*}のどちらか一方が成り立つことを公理として定める。
\(\mathbb{R} \)の全順序体としての公理を認めるとき、デデキントの公理は以下のような様々な形で言い換え可能であることを示しました。
&&\left( b\right) \ \text{上限性質} \\
&&\left( c\right) \ \text{下限性質} \\
&&\left( d\right) \ \text{上に有界な単調増加数列の収束定理} \\
&&\left( e\right) \ \text{下に有界な単調減少数列の収束定理} \\
&&\left( f\right) \ \text{カントールの縮小区間定理+アルキメデスの性質}
\end{eqnarray*}
つまり、\(\mathbb{R} \)の連続性を規定する公理として以上の6つの命題の中のどれを採用しても問題ないこということです。以下では、部分列を用いて実数の連続性を表現することもできることを解説します。
ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理と実数の連続性
カントールの縮小区間定理からボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を導きましたが、実は、それとは逆に、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理からカントールの縮小区間定理を導くことができます。したがって、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理とアルキメデスの性質がともに成り立つことが実数の連続性と必要十分であるということになります。
以上の命題より、実数の連続性は以下のような様々な形で表現可能であることが明らかになりました。
&&\left( b\right) \ \text{上限性質} \\
&&\left( c\right) \ \text{下限性質} \\
&&\left( d\right) \ \text{上に有界な単調増加数列の収束定理} \\
&&\left( e\right) \ \text{下に有界な単調減少数列の収束定理} \\
&&\left( f\right) \ \text{カントールの縮小区間定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( g\right) \ \text{ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理+アルキメデスの性質}
\end{eqnarray*}
つまり、\(\mathbb{R} \)の連続性を規定する公理として上の7つの命題の中のどれを採用しても問題ないということです。
有理数の非連続性
ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理とアルキメデスの性質によって\(\mathbb{R} \)の連続性が表現できるのであれば、連続性を満たさない\(\mathbb{Q} \)はボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理とアルキメデスの性質の少なくとも一方を満たさないはずです。\(\mathbb{Q} \)がボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を満たさないとは、有理数を項として持つ有界な数列が有理数へ収束する部分列を持つとは限らないことを意味します。以下で確認しましょう。
\end{equation*}として表現されます。そこで、数列\(\left\{x_{n}\right\} \)を、\begin{eqnarray*}x_{1} &=&1 \\
x_{2} &=&1.4 \\
x_{3} &=&1.41 \\
x_{4} &=&1.4142 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などと定義します。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の任意の項は有限小数であるため有理数です。加えて、\(\left\{ x_{n}\right\} \)は明らかに有界です。その一方で、この数列の任意の部分列は\(\mathbb{Q} \)上の点に収束しません(演習問題にします)。したがって、\(\mathbb{Q} \)上において有界な数列は有理数へ収束する部分列を持つとは限らないことが明らかになりました。
演習問題
x_{2} &=&1.4 \\
x_{3} &=&1.41 \\
x_{4} &=&1.4142 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}と定義します。この数列は有理数へ収束する部分列を持たないことを証明してください。
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