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数列

上極限と下極限を用いた数列の収束判定

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有界な数列は収束するとは限らない

数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が有界であることは以下の条件\begin{equation*}\exists M\in \mathbb{R} ,\ \exists m\in \mathbb{R} ,\ \forall n\in \mathbb{N} :m\leq x_{n}\leq M
\end{equation*}が成り立つことを意味します。

有界な数列の中には収束するものとそうでないものがあります。以下の例より明らかです。

例(収束する有界数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\frac{1}{n}
\end{equation*}であるものとします。任意の\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}0\leq \frac{1}{n}=x_{n}\leq 1
\end{equation*}が成り立つため、この数列は有界です。さらに、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n} &=&\lim_{n\rightarrow \infty }\frac{1}{n}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&0
\end{eqnarray*}が成り立つため、この数列は有限な実数へ収束します。したがって、これは有界かつ収束する数列の例です。

例(収束しない有界数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( -1\right) ^{n}
\end{equation*}であるものとします。任意の\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}-1\leq \left( -1\right) ^{n}=x_{n}\leq 1
\end{equation*}が成り立つため、この数列は有界です。この数列は振動するため有限な実数へ収束しません。したがって、これは有界かつ収束しない数列の例です。

 

有界単調数列の収束定理は万能ではない

有界な数列の中には有限な実数へ収束するものと有限な実数へ収束しないものの双方が存在することが明らかになりました。ただ、数列が上に有界かつ単調増加である場合や、数列が下に有界かつ単調減少である場合などには、有界単調数列の収束定理より、その数列は有限な実数へ収束することが保証されます。したがって、有界数列が単調であることを確認できれば、それが有限な実数へ収束することを保証できます。

その一方で、有界かつ単調ではない数列が有限な実数へ収束する事態も起こり得るため、有界単調数列の収束定理は万能ではありません。以下の例より明らかです。

例(有界かつ単調ではない収束数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\frac{\left( -1\right) ^{n}}{n}
\end{equation*}で与えられているものとします。任意の\(n\in \mathbb{N} \)に対して、\begin{equation}-1\leq x_{n}=\frac{\left( -1\right) ^{n}}{n}\leq 1 \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つため、この数列は有界です。また、\begin{gather*}
x_{1}=\frac{\left( -1\right) ^{1}}{1}=-1 \\
x_{2}=\frac{\left( -1\right) ^{2}}{2}=\frac{1}{2} \\
x_{3}=\frac{\left( -1\right) ^{3}}{3}=-\frac{1}{3} \\
\vdots
\end{gather*}であり、この数列の隣り合う項は異なる符号を持つため、この数列は単調増加ではなく、単調減少でもありません。その一方で、この数列は有限な実数へ収束します。実際、数列\(\left\{\left\vert x_{n}\right\vert \right\} \)について、\begin{eqnarray*}\lim_{n\rightarrow \infty }\left\vert x_{n}\right\vert
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\left\vert \frac{\left( -1\right) ^{n}}{n}\right\vert \quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\frac{1}{n} \\
&=&0
\end{eqnarray*}となりますが、一般に、以下の関係\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=0\Leftrightarrow \lim_{n\rightarrow \infty
}\left\vert x_{n}\right\vert =0
\end{equation*}が成り立つため、\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=0
\end{equation*}であることが明らかになりました。

 

上極限と下極限を用いた数列の収束判定

単調であるとは限らない有界数列を対象とした場合、それが有限な実数へ収束することを判定する方法は存在するのでしょうか。

数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が有界である場合、その上極限と下極限\begin{eqnarray*}\lim_{n\rightarrow \infty }\sup x_{n} &=&\lim_{n\rightarrow \infty }\sup
\left\{ x_{n},x_{n+1},\cdots \right\} \\
\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n} &=&\lim_{n\rightarrow \infty }\inf
\left\{ x_{n},x_{n+1},\cdots \right\}
\end{eqnarray*}がそれぞれ有限な実数として定まることが保証されますが、両者が一致することは、すなわち、\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\sup x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n}
\end{equation*}が成り立つことは、もとの数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が有限な実数へ収束するための必要十分条件です。しかも、以上の条件が成り立つ場合、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の極限は上極限や下極限と一致します。つまり、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\sup
x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n}
\end{equation*}が成り立つということです。

命題(上極限と下極限を用いた数列の収束判定)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が有界である場合、その上極限と下極限がそれぞれ有限な実数として定まる。加えて、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\sup x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n}
\end{equation*}が成り立つことは、\(\left\{ x_{n}\right\} \)が有限な実数へ収束するための必要十分条件である。しかもこのとき、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\sup
x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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数列の上極限と下極限が存在することは、その数列が有界であることと必要十分であるため、先の命題を以下のように表現できます。

命題(上極限と下極限を用いた数列の収束判定)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の上極限と下極限がそれぞれ有限な実数として定まるとともに、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\sup x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n}
\end{equation*}が成り立つことは、\(\left\{ x_{n}\right\} \)が有限な実数へ収束するための必要十分条件である。しかもこのとき、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\sup
x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n}
\end{equation*}が成り立つ。

例(上極限と下極限を用いた数列の収束判定)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\frac{\left( -1\right) ^{n}}{n}
\end{equation*}で与えられているものとします。先に示したように、\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=0
\end{equation*}ですが、同じことを先の命題から導きます。具体的には、それぞれの\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{eqnarray*}S_{n} &=&\sup \left\{ x_{n},x_{n+1},x_{n+2},\cdots \right\} \\
&=&\left\{
\begin{array}{cc}
\sup \left\{ \frac{1}{n},-\frac{1}{n+1},\frac{1}{n+2},\cdots \right\} &
\left( if\ n\text{が偶数}\right) \\
\sup \left\{ -\frac{1}{n},\frac{1}{n+1},-\frac{1}{n+2},\cdots \right\} &
\left( if\ n\text{が奇数}\right)\end{array}\right. \\
&=&\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{1}{n} & \left( if\ n\text{が偶数}\right) \\
\frac{1}{n+1} & \left( if\ n\text{が奇数}\right)\end{array}\right.
\end{eqnarray*}であるため、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\sup x_{n} &=&\lim_{n\rightarrow \infty }S_{n} \\
&=&0
\end{eqnarray*}となります。その一方で、それぞれの\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{eqnarray*}s_{n} &=&\inf \left\{ x_{n},x_{n+1},x_{n+2},\cdots \right\} \\
&=&\left\{
\begin{array}{cc}
\inf \left\{ \frac{1}{n},-\frac{1}{n+1},\frac{1}{n+2},\cdots \right\} &
\left( if\ n\text{が偶数}\right) \\
\inf \left\{ -\frac{1}{n},\frac{1}{n+1},-\frac{1}{n+2},\cdots \right\} &
\left( if\ n\text{が奇数}\right)\end{array}\right. \\
&=&0
\end{eqnarray*}であるため、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n} &=&\lim_{n\rightarrow \infty }s_{n} \\
&=&0
\end{eqnarray*}となります。以上より、\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\sup x_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n}=0
\end{equation*}であることが明らかになりました。したがって、先の命題より、\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=0
\end{equation*}となりますが、これは先の結果と整合的です。

 

上極限と下極限を用いた数列の非収束判定

数列が収束する場合、その数列は有界であることが確定します。対偶より、有界ではない数列は収束しません。さて、数列が有界であることと、その数列の上極限と下極限が有限な実数として定まることは必要十分条件です。したがって、数列の上極限や下極限が存在しない場合や有限な実数として定まらない場合、その数列は有界ではなく、したがって有限な実数へ収束しません。

例(収束しない数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=n
\end{equation*}であるものとします。この数列は有界ではないため有限な実数へ収束しません。同じことを先の命題を用いて示します。この数列の上極限は、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow +\infty }\sup x_{n} &=&\lim_{n\rightarrow +\infty
}S_{n}\quad \because \text{上極限の定義}
\\
&=&\lim_{n\rightarrow +\infty }\sup \left\{ x_{n},x_{n+1},\cdots \right\}
\quad \because \left\{ S_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow +\infty }\sup \left\{ n,n+1,\cdots \right\} \quad
\because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow +\infty }\left( +\infty \right) \quad \because \left\{
n,n+1,\cdots \right\} \text{は上に有界ではない} \\
&=&+\infty
\end{eqnarray*}となり、有限な実数として定まりません。したがって、やはりこの数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は有限な実数へ収束しません。
例(収束しない数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=-n
\end{equation*}であるものとします。この数列は有界ではないため有限な実数へ収束しません。同じことを先の命題を用いて示します。この数列の上極限は、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow +\infty }\sup x_{n} &=&\lim_{n\rightarrow +\infty
}S_{n}\quad \because \text{上極限の定義}
\\
&=&\lim_{n\rightarrow +\infty }\sup \left\{ x_{n},x_{n+1},\cdots \right\}
\quad \because \left\{ S_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow +\infty }\sup \left\{ -n,-n-1,\cdots \right\} \quad
\because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow +\infty }\left( -n\right) \quad \because \left\{
n,n+1,\cdots \right\} \text{は上に有界ではない} \\
&=&-\infty
\end{eqnarray*}となり、有限な実数として定まりません。したがって、やはりこの数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は有限な実数へ収束しません。

数列の上極限と下極限がいずれも有限な実数として定まる場合でも、両者の値が異なる場合には、先の命題より、その数列は有限な実数へ収束しません。

例(収束しない数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( -1\right) ^{n}
\end{equation*}であるものとします。この数列は振動するため有限な実数へ収束しません。同じことを先の命題を用いて示します。この数列の上極限は、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\sup x_{n} &=&\lim_{n\rightarrow \infty
}S_{n}\quad \because \text{上極限の定義}
\\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\sup \left\{ x_{n},x_{n+1},\cdots \right\}
\quad \because \left\{ S_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\sup \left\{ -1,1\right\} \quad \because
\left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}である一方、下極限は、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\inf x_{n} &=&\lim_{n\rightarrow \infty
}s_{n}\quad \because \text{下極限の定義}
\\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\inf \left\{ x_{n},x_{n+1},\cdots \right\}
\quad \because \left\{ s_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\inf \left\{ -1,1\right\} \quad \because
\left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\left( -1\right) \\
&=&-1
\end{eqnarray*}であるため、\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }\sup x_{n}\not=\lim_{n\rightarrow \infty }\inf
x_{n}
\end{equation*}であることが明らかになりました。したがって、やはりこの数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は有限な実数へ収束しません。

 

演習問題

問題(上極限と下極限を用いた数列の収束判定)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ n\text{が偶数}\right) \\
-1 & \left( if\ n\text{が奇数}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}として与えられているものとします。この数列は有限な実数へ収束するでしょうか。上極限と下極限を用いて議論してください。

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問題(上極限と下極限を用いた数列の収束判定)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( -1\right) ^{n}\cdot \frac{n+1}{n}
\end{equation*}として与えられているものとします。この数列は有限な実数へ収束するでしょうか。上極限と下極限を用いて議論してください。

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