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数列

ネイピア数(自然対数の底)

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ネイピア数の根拠となる数列

数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられているものとします。この数列の項を列挙すると、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&\left( 1+\frac{1}{1}\right) ^{1}=2 \\
x_{2} &=&\left( 1+\frac{1}{2}\right) ^{2}=2.25 \\
x_{3} &=&\left( 1+\frac{1}{3}\right) ^{3}=2.3704 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などとなります。

例(元本の増加率)
\(1\)年ごとに\(100\%\)の金利がつく場合に元本の\(A\)円を\(1\)年間運用すると、\(1\)年後の元利合計は、\begin{equation*}A\left( 1+1\right) =2\times A
\end{equation*}となります。つまり、この場合には\(1\)年間で元本が\(2\)倍になります。金利を\(100\%\)の\(\frac{1}{2}\)に相当する\(50\%\)に下げる代わりに\(\frac{1}{2}\)年ごとに金利がつく場合に元本の\(A\)円を\(1\)年間運用すると、\(1\)年後の元利合計は、\begin{equation*}A\left( 1+\frac{1}{2}\right) ^{2}=2.25\times A
\end{equation*}となります。つまり、この場合には\(1\)年間で元本が\(2.25\)倍になります。金利を\(100\%\)の\(\frac{1}{3}\)に相当する\(\frac{100}{3}\%\)に下げる代わりに\(\frac{1}{3}\)年ごとに金利がつく場合に元本の\(A\)円を\(1\)年間運用すると、\(1\)年後の元利合計は、\begin{equation*}A\left( 1+\frac{1}{3}\right) ^{3}=2.3704\times A
\end{equation*}となります。つまり、この場合には\(1\)年間で元本がおよそ\(2.37\)倍になります。一般に、金利を\(100\%\)の\(\frac{1}{n}\)に相当する\(\frac{100}{n}\%\)に下げる代わりに\(\frac{1}{n}\)年ごとに金利がつく場合に元本の\(A\)円を\(1\)年間運用すると、\(1\)年後の元利合計は、\begin{equation*}A\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}となります。つまり、この場合には\(1\)年間で元本が\(\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}\)倍になります。つまり、数列\begin{equation*}\left\{ \left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}\right\}
\end{equation*}の項\(x_{n}\)は、\(\frac{1}{n}\)年ごとに\(\frac{100}{n}\%\)の金利がつく場合に元本を\(1\)年間運用した場合の元本の増加率を表しています。

 

ネイピア数の根拠となる数列は狭義単調増加

先の数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は狭義単調増加です。つまり、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}<x_{n+1}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
x_{1}<x_{2}<x_{3}<\cdots
\end{equation*}が成り立ちます。証明では2項定理を利用します。

命題(ネイピア数の根拠となる数列は狭義単調増加)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられているものとする。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は狭義単調増加である。
証明

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例(元本の増加率)
先の例より、\(\frac{1}{n}\)年ごとに\(\frac{100}{n}\%\)の金利がつく場合に元本を\(1\)年間運用した場合の元本の増加率は、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}です。\(n\)が大きくなるにつれて金利の発生期間\(\frac{1}{n}\)は短くなり、各期の金利\(\frac{100}{n}\)は小さくなりますが、先の命題より数列\(\left\{x_{n}\right\} \)は狭義単調増加であるため、\(n\)が大きくなるにつれて元本の増加率\(x_{n}\)は大きくなり続けます。

 

ネイピア数の根拠となる数列は上に有界

先の数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は上に有界です。つまり、\begin{equation*}\exists a\in \mathbb{R} ,\ \forall n\in \mathbb{N} :x_{n}\leq a
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)のすべての項よりも大きい実数が存在します。

命題(ネイピア数の根拠となる数列は上に有界)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられているものとする。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は上に有界である。
証明

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例(元本の増加率)
先の例より、\(\frac{1}{n}\)年ごとに\(\frac{100}{n}\%\)の金利がつく場合に元本を\(1\)年間運用した場合の元本の増加率は、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}です。\(n\)が大きくなるにつれて元本の増加率\(x_{n}\)は大きくなり続けることは先に指摘した通りですが、先の命題より数列\(\left\{x_{n}\right\} \)は上に有界であるため、\(n\)がどれほど大きくなっても元本の増加率\(x_{n}\)はある一定の値を超えることはありません。

 

ネイピア数

先の数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は上に有界な単調増加数列であることが明らかになりました。上に有界な単調増加数列は有限な実数へ収束するため、先の数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)もまた有限な実数へ収束することが明らかになりました。

命題(ネイピア数の根拠)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられているものとする。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は有限な実数へ収束するとともに、その極限は、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=\sup \left\{ x_{n}\in \mathbb{R} \ |\ n\in \mathbb{N} \right\}
\end{equation*}となる。

証明

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上の命題より、一般項が、\begin{equation*}
x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}として与えられる数列は有限な実数へ収束することが明らかになりました。そこで、その極限を、\begin{equation*}
e
\end{equation*}で表記し、これをネイピア数(Napier’s constant)やオイラーの数(Euler’s number)、または自然対数の底(base of natural logarithm)などと呼びます。つまり、ネイピア数とは、\begin{equation*}
e=\lim_{n\rightarrow \infty }\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}を満たすものとして定義される有限な実数です。

例(元本の増加率の極限としてのネイピア数)
先の例より、\(\frac{1}{n}\)年ごとに\(\frac{100}{n}\%\)の金利がつく場合に元本を\(1\)年間運用した場合の元本の増加率は、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}です。\(n\)が大きくなるにつれて元本の増加率\(x_{n}\)は大きくなり続ける一方、\(n\)がどれほど大きくなっても\(x_{n}\)が一定の値を超えることがないことは先に示した通りです。さらに、先の命題より、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は有限な実数へ収束するとともに、\begin{equation*}e=\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、ネイピア数とは、\(n\)を限りなく大きくした場合の元本の増加率の極限に相当する数です。

 

ネイピア数の水準を特定する

ネイピア数の定義より、\begin{equation*}
e=\lim_{n\rightarrow \infty }\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}が成り立ちますが、数列\begin{equation*}
\left\{ \left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}\right\}
\end{equation*}のすべての項は\(1\)より大きいため、その極限であるネイピア数\(e\)が正の実数であることは確定します。では、ネイピア数\(e\)は具体的にどの程度の大きさの実数なのでしょうか。以下の議論では指数関数や微分(テイラー展開)に関する知識を利用するため、必要な知識を学んだ後に読み返してください。

ネイピア数\(e\)は有限な正の実数であるため、\(e\)を底とする指数関数\begin{equation*}e^{x}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。これを自然指数関数と呼びます。

自然指数関数\(e^{x}\)の\(n\)次のマクローリン近似多項式は、\begin{equation*}P_{n,0}\left( x\right) =1+x+\frac{1}{2!}x^{2}+\cdots +\frac{1}{n!}x^{n}
\end{equation*}であるとともに、マクローリンの定理より、点\(0\)の周辺の任意の点\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)において、\begin{equation*}e^{x}\approx P_{n,0}\left( x\right)
\end{equation*}という近似式が成り立ちます。\(n\)が大きくなるほど近似の精度が高くなりますが、\(e^{x}\)はマクローリン展開可能であるため、究極的には、ゼロとは異なる点\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだときに、\begin{equation*}e^{x}=1+x+\frac{1}{2}x^{2}+\frac{1}{3!}x^{3}+\cdots
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

\(1\)はゼロとは異なる点であるため、上の議論において\(x=1\)とおくことができます。その結果、\(e^{1}\)すなわち\(e\)の\(n\)次のマクローリン近似多項式が、\begin{eqnarray*}P_{n,0}\left( 1\right) &=&1+1+\frac{1}{2!}1^{2}+\cdots +\frac{1}{n!}1^{n} \\
&=&1+1+\frac{1}{2!}+\cdots +\frac{1}{n!}
\end{eqnarray*}として得られるとともに、マクローリンの定理より、\begin{equation*}
e^{1}\approx P_{n,0}\left( 1\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
e\approx P_{n,0}\left( 1\right)
\end{equation*}という近似式が成り立ちます。\(n\)が大きくなるほど近似の精度が高くなります。いくつか計算すると、\begin{eqnarray*}e &\approx &P_{1,0}\left( 1\right) =1+1=2 \\
e &\approx &P_{2,0}\left( 1\right) =1+1+\frac{1}{2}=2.5 \\
e &\approx &P_{3,0}\left( 1\right) =1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3!}=2.6667 \\
e &\approx &P_{4,0}\left( 1\right) =1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}=2.7083 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などとなります。\(e^{1}\)すなわち\(e\)はマクローリン展開可能であるため、究極的には、\begin{eqnarray*}e &=&1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}\cdots \\
&=&2.7183\cdots
\end{eqnarray*}となります。

例(元本の増加率の極限としてのネイピア数)
先の例より、\(\frac{1}{n}\)年ごとに\(\frac{100}{n}\%\)の金利がつく場合に元本を\(1\)年間運用した場合の元本の増加率は、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n}
\end{equation*}です。ネイピア数は、\begin{equation*}
e=\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}
\end{equation*}と定義されますが、先の議論より、\begin{equation*}
e=2.7183\cdots
\end{equation*}であるため、\(n\)を限りなく大きくした場合の元本の増加率の極限はおよそ\(2.7183\)であることが明らかになりました。

 

ネイピア数は無理数

ネイピア数は無限級数\begin{equation*}
e=1+1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3!}+\frac{1}{4!}\cdots
\end{equation*}として表現できることが明らかになりました。

以上の事実を利用すると、ネイピア数が無理数であることが証明可能です。

命題(ネイピア数は無理数)
ネイピア数\(e\)は無理数である。
証明

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演習問題

問題(ネイピア数と数列の極限)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{n+5}
\end{equation*}であるものとします。以下の極限\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}
\end{equation*}を求めてください。

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問題(ネイピア数と数列の極限)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( 1+\frac{1}{n}\right) ^{3n}
\end{equation*}であるものとします。以下の極限\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}
\end{equation*}を求めてください。

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問題(ネイピア数と数列の極限)
関数\(f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( 1+\frac{6}{x}\right) ^{x}
\end{equation*}を定めるものとします。以下の極限\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow \infty }f\left( x\right)
\end{equation*}を求めてください。

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問題(ネイピア数と数列の極限)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left( -\frac{1}{3},0\right) \cup \left( 0,+\infty \right)\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left( -\frac{1}{3},0\right) \cup \left( 0,+\infty \right) \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( 1+3x\right) ^{\frac{1}{x}}
\end{equation*}を定めるものとします。以下の極限\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0}f\left( x\right)
\end{equation*}を求めてください。

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問題(ネイピア数と数列の極限)
定数\(c\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、関数\(f:\mathbb{R} \backslash \left\{ c\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ c\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( \frac{x+c}{x-c}\right) ^{x}
\end{equation*}を定めるものとします。以下の極限\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow \infty }f\left( x\right)
\end{equation*}を求めてください。

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