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数列

ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理

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数列の収束可能性と部分列の収束可能性の関係

数列の収束可能性部分列の収束可能性の関係についてこれまで明らかになったことを簡単に復習します。

まず、数列が収束する場合には、その任意の部分列もまた収束することが保証されます。加えて、数列の収束可能性は部分列を用いて以下のように表現することができます

命題(部分列を用いた数列の収束可能性の特徴づけ)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が有限な実数\(a\in \mathbb{R} \)へ収束することと、\(\left\{ x_{n}\right\} \)の任意の部分列が同一の有限な実数へ収束するとともにその極限が\(a\)であることは必要十分である。

一方、数列が収束しない場合には、収束する部分列が存在する場合とそうでない場合の両方が起こり得ます。まずは収束する部分列が存在する場合です。

例(収束しない数列が収束する部分列を持つ場合)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( -1\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられるものとします。この数列は振動するため収束しません。この数列の偶数番目の項からなる部分列\(\left\{ x_{l\left( n\right) }\right\}=\left\{ x_{2n}\right\} \)に注目すると、その一般項は、\begin{eqnarray*}x_{l\left( n\right) } &=&x_{2n} \\
&=&\left( -1\right) ^{2n} \\
&=&1
\end{eqnarray*}であるため、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow \infty }x_{l\left( n\right) } &=&\lim_{n\rightarrow
\infty }1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。

続いて収束する部分列が存在しない場合です。

例(収束しない数列が収束する部分列を持たない場合)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=n
\end{equation*}で与えられるものとします。この数列は正の無限大へ発散するため収束しません。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分列\(\left\{ x_{l\left( n\right) }\right\} \)を任意に選ぶと、その一般項は、\begin{equation*}x_{l\left( n\right) }=l\left( n\right) \quad \because \left\{ x_{n}\right\}
\text{の定義}
\end{equation*}となりますが、部分列の定義より\(l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N} \)は狭義単調増加関数であるためこの部分列\(\left\{ x_{l\left( n\right) }\right\} =\left\{ l\left( n\right)\right\} \)もまた正の無限大へ発散します。任意の部分列について同様であるため、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は収束する部分列を持たないことが明らかになりました。

 

ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理

収束する数列の任意の部分列は収束する一方で、収束しない数列に関しては、その部分列の中に収束するものが存在するケースと存在しないケースの両方が起こり得ることが明らかになりました。

ただ、議論の対象を有界な数列に限定すると話は変わります。有界な数列が収束する場合、もちろん、その任意の部分列は収束します。一方、有界な数列が収束しない場合でも、収束する部分列が存在することを保証できます。つまり、有界な数列が与えられた場合、それ自身が収束するかどうかとは関係なく、収束する部分列は必ず存在することは保証されます。これをボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理(Bolzano-Weierstrauss theorem)と呼びます。証明では実数の連続性(カントールの縮小区間定理)が必要です。

命題(ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が有界であるならば、\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分列の中に有限な実数へ収束するものが存在する。
証明

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以上の命題より、数列が与えられたとき、その数列が収束するかどうかが分からない場合でも、その数列が有界であることさえ保証できれば、その数列から有限な実数へ収束する部分列を取り出すことができることが明らかになりました。

例(ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( -1\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられているものとします。この数列は有界です。実際、\begin{equation*}
\forall n\in \mathbb{N} :-1\leq x_{n}\leq 1
\end{equation*}が成り立つからです。したがって、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理より、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は収束する部分列\(\left\{x_{l\left( n\right) }\right\} \)を持ちます。実際、この数列\(\left\{x_{n}\right\} \)の偶数番目の項からなる部分列\(\left\{ x_{l\left(n\right) }\right\} =\left\{ x_{2n}\right\} \)に注目すると、その一般項は、\begin{eqnarray*}x_{l\left( n\right) } &=&x_{2n} \\
&=&\left( -1\right) ^{2n} \\
&=&1
\end{eqnarray*}であり、これは定数数列であるため有限な実数\(1\)へ収束します。

有界ではない数列に対してボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を適用することはできません。つまり、有界でない数列は、有限な実数へ収束する部分列を持つとは限りません。これは先の例より明らかです。

 

有界数列の部分列は収束するとは限らない

ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理より、有界な数列は収束する部分列を持つことが明らかになりました。ただ、この定理は、有界な数列の任意の部分列が収束するとまでは主張していません。有界な数列は必ず収束する部分列を持つ一方で、収束しない部分列もまた存在し得ます。以下の例より明らかです。

例(有界数列の収束しない部分列)
有界かつ収束しない数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を任意に選びます。\(\left\{ x_{n}\right\} \)は\(\left\{ x_{n}\right\} \)自身の部分列ですが、仮定より\(\left\{x_{n}\right\} \)は収束しないため、\(\left\{ x_{n}\right\} \)は収束しない部分列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を持つことが明らかになりました。

 

演習問題

問題(有界かつ収束しない数列の部分列)
有界かつ収束しない数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が、自身とは異なり、なおかつ収束しない部分列を持つケースは起こり得るでしょうか。議論してください。
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問題(点列コンパクト集合)
実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)を任意に選びます。その上で、\(A\)の点を項とする数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を任意に選びます。つまり、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}\in A
\end{equation*}を満たす数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を任意に選ぶということです。このような任意の数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が\(A\)の点に収束する部分列を持つならば、すなわち、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{l\left( n\right) }\in A
\end{equation*}を満たす部分列\(\left\{ x_{l\left(n\right) }\right\} \)が存在する場合には、\(A\)を\(\mathbb{R} \)上の点列コンパクト集合(sequentially compact set)と呼びます。

  1. 集合\(A\subset \mathbb{R} \)が有界である場合には、\(A\)の点を項とする数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)はいずれも収束する部分列を持つことを示してください。
  2. 集合\((0,1]\subset \mathbb{R} \)は有界ですが、これは点列コンパクト集合ではないことを示してください。
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