数列から無限個の項を抜き出して順番を保ったまま並べてできる数列をもとの数列の部分列と呼びます。

2019年5月4日:公開

部分列

数列から無限個の項を抜き出して順番を保ったまま並べてできる数列をもとの数列の部分列(subsequence)と呼びます。

例(部分列)
数列\(\{x_{n}\}\)の項を並べると、\begin{equation*}
x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5},x_{6},x_{7},x_{8},x_{9},x_{10},\cdots
\end{equation*}となりますが、ここから偶数番目の項だけを抜き出して順番を保ったまま並べると、\begin{equation*}
x_{2},x_{4},x_{6},x_{8},x_{10},x_{12},x_{14},x_{16},x_{18},x_{20},\cdots
\end{equation*}という部分列を得ます。
例(部分列)
数列\(\{x_{n}\}\)が\(x_{n}=\frac{1}{n}\)で定義されるとき、その項は、\begin{equation*}
\frac{1}{1},\frac{1}{2},\frac{1}{3},\frac{1}{4},\frac{1}{5},\frac{1}{6},\cdots
\end{equation*}となります。ここから奇数番目の項だけを抜き出して順番を保ったまま並べると、\begin{equation*}
\frac{1}{1},\frac{1}{3},\frac{1}{5},\frac{1}{5},\frac{1}{7},\frac{1}{9},\cdots
\end{equation*}という部分列を得ます。
例(部分列)
数列\(\{x_{n}\}\)が\(x_{n}=\frac{1}{n}\)で定義されるとき、その項は、\begin{equation*}
\frac{1}{1},\frac{1}{2},\frac{1}{3},\frac{1}{4},\frac{1}{5},\frac{1}{6},\cdots
\end{equation*}となります。これに対し、\begin{equation*}
\frac{1}{4},\frac{1}{3},\frac{1}{2},\frac{1}{1},\frac{1}{5},\frac{1}{6},\cdots
\end{equation*}という数列は\(\{x_{n}\}\)の部分列ではありません。なぜなら、項の相対的な順番が入れ替わってしまっているからです。

 

部分列の定式化

具体例を活用しながら部分列という概念を一般的な形で定式化します。その前提として、数列\(\{x_{n}\}\)とはそれぞれの番号\(n\in \mathbb{N}\)に対して数列の第\(n\)項に相当する実数\(x_{n}\in \mathbb{R}\)を像として定める写像\(x:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}\)であることを思い出してください。

もとの数列\(\{x_{n}\}\)の偶数番目の項からなる部分列を作るというプロセスは、もとの数列の添字からなる自然数の列\begin{equation}
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,\cdots \tag{1}
\end{equation}の中から偶数番目の項\begin{equation}
2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,\cdots \tag{2}
\end{equation}を抜き出した上で、抜き出したそれぞれの番号に対応するもとの数列の項\begin{equation}
x_{2},x_{4},x_{6},x_{8},x_{10},x_{12},x_{14},x_{16},x_{18},x_{20},\cdots \tag{3}
\end{equation}を特定する、という2つのプロセスに分割可能です。

最初のプロセス、すなわち\(\left( 1\right) \)から\(\left( 2\right) \)を抜き出すことは、\(\left( 1\right) \)に属するそれぞれの自然数\(n\)に対して以下のような自然数\(l\left( n\right) \)を像として定める写像\(l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N}\)を導入することとして定式化可能です。

\begin{array}{cccccccccccc}
\hline
n & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 & 7 & 8 & 9 & 10 & \cdots \\ \hline
\downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow \\ \hline
l(n) & 2 & 4 & 6 & 8 & 10 & 12 & 14 & 16 & 18 & 20 & \cdots \\ \hline
\end{array}ただし、\(\left( 1\right) \)から無限個の項を抜き出し順序を保ったまま並べたものが\(\left( 2\right) \)ですので、この関数\(l\)は狭義の単調増加関数でなければなりません。つまり、関数\(l\)は、\begin{equation*}
\forall k,h\in \mathbb{N} :\left( k<h\Rightarrow l(k)<l(h)\right)
\end{equation*}という性質を満たします。

二番目のプロセス、すなわち\(\left( 2\right) \)から\(\left( 3\right) \)を構成するためには、\(\left( 2\right) \)に属するそれぞれの自然数\(l\left( n\right) \)に対して\(x\)が定める値\(x\left( l\left( n\right) \right) \)を以下のように特定する必要があります。

\begin{array}{cccccccccccc}
\hline
l(n) & 2 & 4 & 6 & 8 & 10 & 12 & 14 & 16 & 18 & 20 & \cdots \\ \hline
\downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow \\ \hline
x(l(n)) & x_{2} & x_{4} & x_{6} & x_{8} & x_{10} & x_{12} & x_{14} & x_{16} & x_{18} & x_{20} & \cdots \\ \hline
\end{array}この表の最後の行に並んでいる項が\(\{x_{n}\}\)の部分列\(\left( 3\right) \)に他なりません。つまり、部分列\(\left( 3\right) \)は数列\(x\left( l\left( n\right) \right) _{n\in \mathbb{N}}\)として表されます。

議論を整理します。まず、\(\left( 1\right) \)から\(\left( 2\right) \)を定めることは単調増加関数\(l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N}\)を定めることを意味します。この関数\(l\)はそれぞれの番号\(n\in \mathbb{N}\)に対して新たな番号\(l\left( n\right) \in \mathbb{N}\)を定めます。\(\left( 2\right) \)から\(\left( 3\right) \)を定めることは、この\(l\left( n\right) \)に対して\(x:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}\)が定める値\(x\left( l\left( n\right) \right) \)を特定することを意味します。この\(x\left( l\left( n\right) \right) \)は部分列の第\(n\)項です。つまり、部分列\(\left( 3\right) \)は合成写像\(x\circ l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}\)として定式化されます。

一般に、数列\(x:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}\)の部分列とは、\begin{equation*}
\forall k,h\in \mathbb{N} :\left( k<h\ \Rightarrow \ l(k)<l(h)\right)
\end{equation*}を満たす関数\(l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N}\)と\(x\)の合成関数\(x\circ l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}\)として定義されます。また、それぞれの\(n\in \mathbb{N}\)に対して\(x\circ l\)が定める像\(x\left( l\left( n\right) \right) \)を\(x_{l\left( n\right) }\)で表します。部分列\(x\circ l\)を、\begin{equation*}
x_{l(1)},x_{l(2)},x_{l(3)},\cdots ,x_{l(n)},\cdots ,\quad \{x_{l(n)}\}_{n=1}^{\infty },\quad \{x_{l(n)}\}_{n\in \mathbb{N}
},\quad \{x_{l\left( n\right) }\}
\end{equation*}などで表すこともできます。

例(部分列)
数列\(\{x_{n}\}\)が\(x_{n}=\frac{1}{n}\)と定義されているものとしましょう。つまり、この数列の項は、\begin{equation*}
\frac{1}{1},\frac{1}{2},\frac{1}{3},\frac{1}{4},\frac{1}{5},\cdots
\end{equation*}です。この数列から偶数番目の項を抽出して得られる部分列を\(x_{l\left( n\right) }\)で表すとき、この部分列の項は、\begin{equation*}
\frac{1}{2},\frac{1}{4},\frac{1}{6},\frac{1}{8},\frac{1}{10},\cdots
\end{equation*}となります。この部分列\(x_{l\left( n\right) }\)はどのように定式化できるでしょうか。もとの数列\(\{x_{n}\}\)を写像\(x:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}\)で表すとき、この部分列は、\begin{equation*}
\forall n\in \mathbb{N} :l\left( n\right) =2n
\end{equation*}を満たす単調増加関数\(l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N}\)と\(x\)の合成関数\(x\circ l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}\)として定式化可能です。実際、\begin{eqnarray*}
x_{l\left( 1\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 1\right) =x_{2}=\frac{1}{2} \\
x_{l\left( 2\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 2\right) =x_{4}=\frac{1}{4} \\
x_{l\left( 3\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 3\right) =x_{6}=\frac{1}{6} \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などとなります。
例(部分列)
数列\(\{x_{n}\}\)が\(x_{n}=\frac{1}{n}\)と定義されているものとしましょう。つまり、この数列の項は、\begin{equation*}
\frac{1}{1},\frac{1}{2},\frac{1}{3},\frac{1}{4},\frac{1}{5},\cdots
\end{equation*}です。これに対して数列\(\{x_{l\left( n\right) }\}\)が、\begin{equation*}
\frac{1}{3},\frac{1}{2},\frac{1}{1},\frac{1}{4},\frac{1}{5},\cdots
\end{equation*}で与えられているものとします。\(\{x_{l\left( n\right) }\}\)は\(\{x_{n}\}\)の部分列ではありません。実際、この2つの数列の間には、例えば、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&x_{l\left( 3\right) } \\
x_{3} &=&x_{l\left( 1\right) }
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{eqnarray*}
l\left( 3\right) &=&1 \\
l\left( 1\right) &=&3
\end{eqnarray*}という関係が成立していますが、これは\(l\)が狭義単調増加関数ではないことを示しています。\(\{x_{l\left( n\right) }\}\)が\(\{x_{n}\}\)の部分列であるためには\(l\)が狭義単調増加関数である必要があります。

次回は部分列の収束とボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理について学びます。
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