WIIS

ベクトル

実ベクトル空間のアフィン部分空間

目次

関連知識

Mailで保存
Xで共有

実ベクトル空間のアフィン部分空間

実ベクトル空間の部分集合\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間であることとは、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ X\not=\phi \\
&&\left( b\right) \ \forall x,y\in X:x+y\in X \\
&&\left( c\right) \ \forall a\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:ax\in X
\end{eqnarray*}がすべて成り立つことを意味します。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間はベクトル加法\(+\)とスカラー乗法\(\cdot \)について閉じている非空な\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合です。

部分集合\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)と方向ベクトル\(x_{0}\in \mathbb{R} ^{n}\)が与えられているものとします。集合\(X\)上に存在する点を任意に選んだとき、その位置ベクトルは何らかのベクトル\begin{equation*}x\in \mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}を用いて表現されます。したがって、その点を\(x_{0}\)だけ動かすと、移動後の点の位置ベクトルは\begin{equation*}x_{0}+x\in \mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}となります。集合\(X\)上に存在するすべての点を同じ要領で\(x_{0}\)だけ移動すれば、移動後の点からなる集合が、\begin{equation*}x_{0}+X=\left\{ x_{0}+x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ x\in X\right\}
\end{equation*}として定まります。

実ベクトル空間の部分集合\(Y\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられているものとします。これは\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間である必要はありません。この集合\(Y\)に対して何らかの部分空間\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)およびベクトル\(x_{0}\in \mathbb{R} ^{n}\)が存在して、\begin{eqnarray*}Y &=&x_{0}+X \\
&=&\left\{ x_{0}+x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ x\in X\right\}
\end{eqnarray*}という形で表すことができる場合、\(Y\)を\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間(affine subspace)と呼びます。つまり、部分空間\(X\)上に存在するすべての点を\(x_{0}\)だけ移動することにより集合\(Y\)が得られる場合、\(Y\)をアフィン部分空間と呼ぶということです。

 

アフィン部分空間を代表するベクトルおよびアフィン部分空間と平行な部分空間

アフィン部分空間\(Y\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、定義より、何らかのベクトル\(x_{0}\in \mathbb{R} ^{n}\)および部分空間\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)を用いて、\begin{equation*}Y=x_{0}+X
\end{equation*}という関係が成り立ちます。以上の関係を満たすベクトル\(x_{0}\)をアフィン部分空間\(Y\)を代表するベクトル(representing vector for \(Y\))と呼び、以上の関係を満たす部分空間\(X\)をアフィン部分空間\(Y\)と平行な部分空間(subspace parallel to \(Y\))と呼びます。

アフィン部分空間の定義より、\begin{equation*}
\forall x\in X:x_{0}+x\in Y
\end{equation*}が成り立ちますが、ベクトル空間の定義より\(0\in X\)であるため、このとき、\begin{equation*}x_{0}+0\in Y
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
x_{0}\in Y
\end{equation*}を得ます。つまり、アフィン部分空間\(Y\)を代表するベクトル\(x_{0}\)は\(Y\)の要素であるということです。以上の事実は、\begin{equation*}Y\not=\phi
\end{equation*}であることも意味します。つまり、アフィン部分空間\(Y\)は非空です。

アフィン部分空間を代表するベクトルは一意的に定まりません。実際、アフィン部分空間の要素であるすべてのベクトルが、そのアフィン部分空間を代表するベクトルになり得ます。

命題(アフィン部分空間を代表するベクトルの非一意性)
アフィン部分空間\(Y\subset \mathbb{R} ^{n}\)がベクトル\(x_{0}\in \mathbb{R} ^{n}\)および部分空間\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)を用いて、\begin{equation*}Y=x_{0}+X
\end{equation*}という形で表現されるものとする。ベクトル\(y_{0}\in Y\)を任意に選んだとき、以下の関係\begin{equation*}Y=y_{0}+X
\end{equation*}もまた成立する。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

アフィン部分空間と平行な部分空間は一意的に定まります。

命題(アフィン部分空間と平行な部分空間)
アフィン部分空間\(Y\subset \mathbb{R} ^{n}\)と平行な部分空間は一意的に定まる。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

部分空間はアフィン部分空間

部分空間\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、\begin{equation*}X=0+X
\end{equation*}という関係が明らかに成り立ちますが、以上の事実は\(X\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間であることを意味します。任意の部分空間はアフィン部分空間であるということです。

命題(部分空間はアフィン部分空間)
実ベクトル空間の部分集合\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間であるならば、\(X\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(ゼロ部分空間はアフィン部分空間)
ゼロ部分空間、すなわちゼロベクトル\(0\in \mathbb{R} ^{n}\)だけを要素として持つ1点集合\begin{equation*}\left\{ 0\right\}
\end{equation*}は実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間であるため、先の命題より、これは\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間でもあります。
例(全体空間はアフィン部分空間)
全体空間、すなわち、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}は\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間であるため、先の命題より、これは\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間でもあります。
例(原点を通過する直線はアフィン部分空間)
空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する原点を通過する直線\begin{equation*}L=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :x=tv\right\}
\end{equation*}を任意に選びます。ただし、\(v\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)です。\(L\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間であるため、先の命題より、\(L\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間でもあります。
例(原点を通過する平面はアフィン部分空間)
空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する原点を通過する平面\begin{equation*}P=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \exists s,t\in \mathbb{R} :x=sv+tw\right\}
\end{equation*}を任意に選びます。ただし、\(v,w\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)かつ\(v\)と\(w\)は線型独立です。\(P\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間であるため、先の命題より、\(P\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間でもあります。

 

アフィン部分空間は部分空間であるとは限らない

任意の部分空間はアフィン部分空間であることが明らかになりましたが、その逆は成立するとは限りません。アフィン部分空間は部分空間であるとは限らないということです。以下の例より明らかです。

例(部分空間ではないアフィン部分空間)
ゼロ部分空間、すなわちゼロベクトル\(0\in \mathbb{R} ^{n}\)だけを要素として持つ1点集合\begin{equation*}\left\{ 0\right\}
\end{equation*}は実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間であるため、非ゼロベクトル\(x\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x+\left\{ 0\right\} =\left\{ x\right\}
\end{equation*}は\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間です。その一方で、\begin{equation*}0\not\in \left\{ x\right\}
\end{equation*}であるため、\(\left\{ x\right\} \)は部分空間ではないアフィン部分空間であることが明らかになりました。

 

アフィン部分空間の具体例:直線

空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する直線\(L\)を任意に選びます。直線の定義より\(L\)は空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合であるとともに、何らかのベクトル\(p\in \mathbb{R} ^{n}\)および非ゼロベクトル\(v\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)を用いて、\begin{equation*}L=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :x=p+tv\right\}
\end{equation*}という形で表すことができます。\(p\)は直線\(L\)上に存在する点の位置ベクトルに相当し、\(v\)は直線\(L\)の方向ベクトルに相当します。これは\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間になります。

命題(直線はアフィン部分空間)
空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する直線\begin{equation*}L=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :x=p+tv\right\}
\end{equation*}を任意に選ぶ。ただし、\(p\in \mathbb{R} ^{n}\)かつ\(v\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)である。\(L\)は実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する直線\(L\)が原点を通過しない場合、つまり、\(L\)のベクトル方程式が以下の条件\begin{equation*}\forall t\in \mathbb{R} :0\not=p+tv
\end{equation*}を満たす場合、\(L\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間であるための条件の1つ\begin{equation*}0\in L
\end{equation*}を満たしません。つまり、原点を通過しない直線\(L\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間である一方で部分空間ではないということです。

例(数直線上の直線)
数直線\(\mathbb{R} \)上に存在する任意の直線は\(\mathbb{R} \)と一致します。したがって、先の命題より、\(\mathbb{R} \)上に存在するすべての直線は\(1\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} \)のアフィン部分空間です。
例(平面上の直線)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)上に存在する直線\(L\)はベクトル方程式を用いて表現できます。つまり、直線\(L\)の位置ベクトル\(p\in \mathbb{R} ^{2}\)と方向ベクトル\(v\in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、この直線\(L\)のベクトル方程式は、媒介変数\(t\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}x=p+tv
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2}\end{array}\right) =\left(
\begin{array}{c}
p_{1} \\
p_{2}\end{array}\right) +t\left(
\begin{array}{c}
v_{1} \\
v_{2}\end{array}\right)
\end{equation*}と表現されます。したがって、直線は、\begin{equation*}
L=\left\{ \left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2}\end{array}\right) =\left(
\begin{array}{c}
p_{1} \\
p_{2}\end{array}\right) +t\left(
\begin{array}{c}
v_{1} \\
v_{2}\end{array}\right) \right\}
\end{equation*}となりますが、先の命題より、これは\(2\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{2}\)のアフィン部分空間です。
例(平面上の直線)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)上に存在する直線\(L\)は方程式の法線標準形を用いて表現することもできます。つまり、直線\(L\)の位置ベクトル\(p\in \mathbb{R} ^{2}\)と法線ベクトル\(n\in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、この直線\(L\)の方程式の法線標準形は、\begin{equation*}\left( x-p\right) \cdot n=0
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left(
\begin{array}{c}
x_{1}-p_{1} \\
x_{2}-p_{2}\end{array}\right) \cdot \left(
\begin{array}{c}
n_{1} \\
n_{2}\end{array}\right) =0
\end{equation*}と表現されます。したがって、直線は、\begin{equation*}
L=\left\{ \left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ \left(
\begin{array}{c}
x_{1}-p_{1} \\
x_{2}-p_{2}\end{array}\right) \cdot \left(
\begin{array}{c}
n_{1} \\
n_{2}\end{array}\right) =0\right\}
\end{equation*}となりますが、先の命題より、これは\(2\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{2}\)のアフィン部分空間です。
例(平面上の直線)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)上に存在する直線\(L\)は方程式を用いて表現することもできます。つまり、直線\(L\)の方程式は、\begin{equation*}\left(
\begin{array}{c}
a_{1} \\
a_{2}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} ,\quad b\in \mathbb{R} \end{equation*}を満たす係数を用いて、\begin{equation*}
a_{1}x_{1}+a_{2}x_{2}+b=0
\end{equation*}と表現されます。したがって、直線は、\begin{equation*}
L=\left\{ \left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ a_{1}x_{1}+a_{2}x_{2}+b=0\right\}
\end{equation*}となりますが、先の命題より、これは\(2\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{2}\)のアフィン部分空間です。
例(空間上の直線)
3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上に存在する直線\(L\)はベクトル方程式を用いて表現できます。つまり、直線\(L\)の位置ベクトル\(p\in \mathbb{R} ^{3}\)と方向ベクトル\(v\in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、この直線\(L\)のベクトル方程式は、媒介変数\(t\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}x=p+tv
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3}\end{array}\right) =\left(
\begin{array}{c}
p_{1} \\
p_{2} \\
p_{3}\end{array}\right) +t\left(
\begin{array}{c}
v_{1} \\
v_{2} \\
v_{3}\end{array}\right)
\end{equation*}と表現されます。したがって、直線は、\begin{equation*}
L=\left\{ \left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3}\end{array}\right) =\left(
\begin{array}{c}
p_{1} \\
p_{2} \\
p_{3}\end{array}\right) +t\left(
\begin{array}{c}
v_{1} \\
v_{2} \\
v_{3}\end{array}\right) \right\}
\end{equation*}となりますが、先の命題より、これは\(3\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{3}\)のアフィン部分空間です。

 

アフィン部分空間の具体例:平面

空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する平面\(P\)を任意に選びます。平面の定義より\(P\)は空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合であるとともに、何らかのベクトル\(p\in \mathbb{R} ^{n}\)および線型独立な非ゼロベクトル\(v,w\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)を用いて、\begin{equation*}P=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \exists s,t\in \mathbb{R} :x=p+sv+tw\right\}
\end{equation*}という形で表すことができます。\(p\)は平面\(P\)上に存在する点の位置ベクトルに相当し、\(v,w\)は平面\(P\)の方向ベクトルに相当します。これは\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間になります。

命題(平面はアフィン部分空間)
空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する平面\begin{equation*}P=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \exists s,t\in \mathbb{R} :x=p+sv+tw\right\}
\end{equation*}を任意に選ぶ。ただし、\(p\in \mathbb{R} ^{n}\)かつ\(v,w\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)かつ\(v\)と\(w\)は線型独立である。\(P\)は実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する空間\(P\)が原点を通過しない場合、つまり、\(P\)のベクトル方程式が以下の条件\begin{equation*}\forall s,t\in \mathbb{R} :0\not=p+sv+tw
\end{equation*}を満たす場合、\(P\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分空間であるための条件の1つ\begin{equation*}0\in P
\end{equation*}を満たしません。つまり、原点を通過しない平面\(P\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)のアフィン部分空間である一方で部分空間ではないということです。

例(平面上の平面)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)上に存在する任意の平面は\(\mathbb{R} ^{2}\)と一致します。したがって、先の命題より、\(\mathbb{R} ^{2}\)上に存在するすべての平面は\(2\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{2}\)のアフィン部分空間です。
例(空間上の平面)
空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上に存在する平面\(P\)はベクトル方程式を用いて表現できます。つまり、平面\(P\)の位置ベクトル\(p\in \mathbb{R} ^{3}\)と線型独立な方向ベクトル\(v,w\in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、この平面\(P\)のベクトル方程式は、媒介変数\(s,t\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}x=p+sv+tw
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3}\end{array}\right) =\left(
\begin{array}{c}
p_{1} \\
p_{2} \\
p_{3}\end{array}\right) +s\left(
\begin{array}{c}
v_{1} \\
v_{2} \\
v_{3}\end{array}\right) +t\left(
\begin{array}{c}
w_{1} \\
w_{2} \\
w_{3}\end{array}\right)
\end{equation*}と表現されます。したがって、平面は、\begin{equation*}
P=\left\{ \left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ \exists s,t\in \mathbb{R} :\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3}\end{array}\right) =\left(
\begin{array}{c}
p_{1} \\
p_{2} \\
p_{3}\end{array}\right) +s\left(
\begin{array}{c}
v_{1} \\
v_{2} \\
v_{3}\end{array}\right) +t\left(
\begin{array}{c}
w_{1} \\
w_{2} \\
w_{3}\end{array}\right) \right\}
\end{equation*}となりますが、先の命題より、これは\(3\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{3}\)のアフィン部分空間です。
例(空間上の平面)
空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上に存在する平面\(P\)は方程式の法線標準形を用いて表現することもできます。つまり、平面\(P\)の位置ベクトル\(p\in \mathbb{R} ^{3}\)と法線ベクトル\(n\in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、この平面\(P\)の方程式の法線標準形は、\begin{equation*}\left( x-p\right) \cdot n=0
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left(
\begin{array}{c}
x_{1}-p_{1} \\
x_{2}-p_{2} \\
x_{3}-p_{3}\end{array}\right) \cdot \left(
\begin{array}{c}
n_{1} \\
n_{2} \\
n_{3}\end{array}\right) =0
\end{equation*}と表現されます。したがって、平面は、\begin{equation*}
L=\left\{ \left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ \left(
\begin{array}{c}
x_{1}-p_{1} \\
x_{2}-p_{2} \\
x_{3}-p_{3}\end{array}\right) \cdot \left(
\begin{array}{c}
n_{1} \\
n_{2} \\
n_{3}\end{array}\right) =0\right\}
\end{equation*}となりますが、先の命題より、これは\(3\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{3}\)のアフィン部分空間です。
例(空間上の平面)
空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上に存在する平面\(P\)は方程式を用いて表現することもできます。つまり、平面\(P\)の方程式は、\begin{equation*}\left(
\begin{array}{c}
a_{1} \\
a_{2} \\
a_{3}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} ,\quad b\in \mathbb{R} \end{equation*}を満たす係数を用いて、\begin{equation*}
a_{1}x_{1}+a_{2}x_{2}+a_{3}x_{3}+b=0
\end{equation*}と表現されます。したがって、平面は、\begin{equation*}
P=\left\{ \left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ a_{1}x_{1}+a_{2}x_{2}+a_{3}x_{3}+b=0\right\}
\end{equation*}となりますが、先の命題より、これは\(3\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{3}\)のアフィン部分空間です。
例(空間上の平面)
4次元空間\(\mathbb{R} ^{4}\)上に存在する平面\(P\)はベクトル方程式を用いて表現できます。つまり、平面\(P\)の位置ベクトル\(p\in \mathbb{R} ^{4}\)と線型独立な方向ベクトル\(v,w\in \mathbb{R} ^{4}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、この平面\(P\)のベクトル方程式は、媒介変数\(s,t\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}x=p+sv+tw
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3} \\
x_{4}\end{array}\right) =\left(
\begin{array}{c}
p_{1} \\
p_{2} \\
p_{3} \\
p_{4}\end{array}\right) +s\left(
\begin{array}{c}
v_{1} \\
v_{2} \\
v_{3} \\
v_{4}\end{array}\right) +t\left(
\begin{array}{c}
w_{1} \\
w_{2} \\
w_{3} \\
w_{4}\end{array}\right)
\end{equation*}と表現されます。したがって、平面は、\begin{equation*}
P=\left\{ \left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3} \\
x_{4}\end{array}\right) \in \mathbb{R} ^{4}\ |\ \exists s,t\in \mathbb{R} :\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
x_{2} \\
x_{3} \\
x_{4}\end{array}\right) =\left(
\begin{array}{c}
p_{1} \\
p_{2} \\
p_{3} \\
p_{4}\end{array}\right) +s\left(
\begin{array}{c}
v_{1} \\
v_{2} \\
v_{3} \\
v_{4}\end{array}\right) +t\left(
\begin{array}{c}
w_{1} \\
w_{2} \\
w_{3} \\
w_{4}\end{array}\right) \right\}
\end{equation*}となりますが、先の命題より、これは\(4\)次元実ベクトル空間\(\mathbb{R} ^{4}\)のアフィン部分空間です。

関連知識

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録