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ベクトル

ベクトル減法(ベクトル差)

目次

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ベクトル減法

2つのベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x-y=x+\left( -y\right)
\end{equation*}と定義されるベクトル\(x-y\)を\(x\)と\(y\)のベクトル差(vector difference)や(difference)などと呼びます。ただし、左辺の\(-\)はベクトル差、右辺の\(+\)はベクトル和、\(-y\)は\(y\)の逆ベクトルを表す記号です。

ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選びます。ベクトルの逆ベクトルは存在することが保証されるため\(-y\in \mathbb{R} ^{n}\)です。さらに、ベクトルどうしのベクトル和はベクトルであることが保証されるため\(x+\left( -y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\)です。以上の事実とベクトルの差の定義より、\begin{equation*}\forall x,y\in \mathbb{R} ^{n}:x-y\in \mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}が成り立つこと、すなわち\(\mathbb{R} ^{n}\)がベクトル減法\(-\)について閉じていることが保証されます。このような事情を踏まえると、ベクトルを成分とするそれぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\)に対して、やはりベクトルであるベクトル差\(x-y\in \mathbb{R} ^{n}\)を定める二項演算\begin{equation*}-:\mathbb{R} ^{n}\times \mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}が定義可能です。このような演算をベクトル減法(vector subtraction)と呼びます。順序対\(\left( x,y\right) \)に対してベクトル減法\(-\)を適用することを、\(x\)から\(y\)を引く(subtract)と言います。

ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}x-y &=&x+\left( -y\right) \quad \because \text{ベクトル差の定義} \\
&=&\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) +\left[ -\left( y_{1},\cdots
,y_{n}\right) \right] \quad \because x,y\in \mathbb{R} ^{n} \\
&=&\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) +\left( -y_{1},\cdots ,-y_{n}\right)
\quad \because \text{逆ベクトルの定義} \\
&=&\left( x_{1}+\left( -y_{1}\right) ,\cdots ,x_{n}+\left( -y_{n}\right)
\right) \quad \because \text{ベクトル和の定義} \\
&=&\left( x_{1}-y_{1},\cdots ,x_{n}-y_{n}\right) \quad \because \text{差の定義}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
x-y=\left( x_{1}-y_{1},\cdots ,x_{n}-y_{n}\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。ただし、左辺の\(-\)はベクトル差、右辺の\(-\)は\(\mathbb{R} \)上の減法を表す記号です。つまり、\(x\)と\(y\)のベクトル差とはそれらの対応する成分を引くことにより得られるベクトルです。

例(ベクトル減法)
\(1\)次元空間のベクトル\(x,y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、それらのベクトル差は、\begin{equation*}x-y=x-y
\end{equation*}となります。ただし、左辺の\(-\)はベクトル減法を表す記号であり、右辺の\(-\)は実数どうしの減法を表す記号です。つまり、\(1\)次元空間において、ベクトル減法と減法は等しくなります。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}1-4 &=&-3 \\
\left( -1\right) -8 &=&-9 \\
\frac{4}{5}-\frac{1}{10} &=&\frac{7}{10}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

例(ベクトル減法)
\(2\)次元空間のベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、それらのベクトル差は、\begin{equation*}x-y=\left( x_{1}-y_{1},x_{2}-y_{2}\right)
\end{equation*}となります。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}
\left( 1,2\right) -\left( 3,1\right) &=&\left( 1-3,2-1\right) =\left(
-2,1\right) \\
\left( -1,7\right) -\left( 3,2\right) &=&\left( \left( -1\right)
-3,7-2\right) =\left( -4,5\right) \\
\left( \frac{2}{3},-1\right) -\left( -\frac{1}{2},-2\right) &=&\left( \frac{2}{3}-\left( -\frac{1}{2}\right) ,\left( -1\right) -\left( -2\right) \right)
=\left( \frac{7}{6},1\right)
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

例(ベクトル減法)
\(3\)次元空間のベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{3}\)を任意に選んだとき、それらのベクトル差は、\begin{equation*}x-y=\left( x_{1}-y_{1},x_{2}-y_{2},x_{3}-y_{3}\right)
\end{equation*}となります。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}
\left( 1,2,3\right) -\left( 3,4,5\right) &=&\left( 1-3,2-4,3-5\right)
=\left( -2,-2,-2\right) \\
\left( -1,4,2\right) -\left( 0,1,-7\right) &=&\left( -1-0,4-1,2-\left(
-7\right) \right) =\left( -1,3,9\right) \\
\left( \frac{1}{2},\frac{1}{3},\frac{1}{4}\right) -\left( 0,-2,-\frac{1}{2}\right) &=&\left( \frac{1}{2}-0,\frac{1}{3}-\left( -2\right) ,\frac{1}{4}-\left( -\frac{1}{2}\right) \right) =\left( \frac{1}{2},\frac{7}{3},\frac{3}{4}\right)
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

ベクトル減法は同一の空間に属する2つのベクトルに対してのみ定義されます。異なる空間に属するベクトルどうしにベクトル減法を適用することはできません。

例(ベクトル減法)
\(2\)次元空間のベクトル\(x\in \mathbb{R} ^{2}\)と\(3\)次元空間のベクトル\(y\in \mathbb{R} ^{3}\)をそれぞれ任意に選んだとき、これらは異なる空間に属するベクトルであるため、これらのベクトル減法\(x-y\)は定義されません。

 

ベクトル減法の解釈

ベクトルは「大きさ」と「方向」を表す量ですが、ベクトルの大きさは有向線分の「長さ」として、ベクトルの方向は有向線分の「方向」としてそれぞれ表現されます。では、一方のベクトルから他方のベクトルを引くと、得られたベクトルの大きさと方向はどのように決まるのでしょうか。

空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上にある2つの点\(X,Y\)を任意に選んだ上で、これらを終点とする有向線分、すなわちベクトル\begin{eqnarray*}&&\overrightarrow{OX} \\
&&\overrightarrow{OY}
\end{eqnarray*}に注目します。点\(X\)の位置ベクトルが\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)であり、点\(Y\)の位置ベクトルが\(y\in \mathbb{R} ^{n}\)であるものとします。つまり、ベクトル\(\overrightarrow{OX}\)の終点の座標が\(x\)であり、ベクトル\(\overrightarrow{OY}\)の終点の座標が\(y\)です。2つのベクトル\(\overrightarrow{OX},\overrightarrow{OY}\)の差に相当するベクトルを、\begin{equation*}\overrightarrow{OX}-\overrightarrow{OY}
\end{equation*}で表記します。ベクトル差の定義より、ベクトル\(\overrightarrow{OX}-\overrightarrow{OY}\)の終点の位置ベクトルは\(\overrightarrow{OX}\)の終点の位置ベクトル\(x\)と\(\overrightarrow{OY}\)の終点の位置ベクトル\(y\)のベクトル差\(x-y\in \mathbb{R} ^{n}\)です。言い換えると、ベクトル\(\overrightarrow{OX}-\overrightarrow{OY}\)の終点の座標は、\(\overrightarrow{OX}\)の終点の座標\(x\)と\(\overrightarrow{OY}\)の終点の座標\(y\)のベクトル差\(x-y\)として定まるということです。

例(ベクトル減法の解釈)
2次元空間上にある2つの点\(X,Y\)を選んだ上で、これらを終点とする有向線分、すなわちベクトル\begin{eqnarray*}&&\overrightarrow{OX} \\
&&\overrightarrow{OY}
\end{eqnarray*}に注目します。点\(X\)の位置ベクトルが\(\left(x_{1},x_{2}\right) \)であり、点\(Y\)の位置ベクトルが\(\left(y_{1},y_{2}\right) \)であるものとします。2つのベクトル\(\overrightarrow{OX},\overrightarrow{OY}\)の差\begin{equation*}\overrightarrow{OX}-\overrightarrow{OY}
\end{equation*}の終点の位置ベクトル、すなわち終点の座標は、\begin{eqnarray*}
\left( x_{1},x_{2}\right) -\left( y_{1},y_{2}\right) &=&\left(
x_{1}-y_{1},x_{2}-y_{2}\right) \\
&=&\left( x_{1},x_{2}\right) +\left[ -\left( y_{1},y_{2}\right) \right] \end{eqnarray*}となります(下図)。

図:2次元ベクトルのベクトル差
図:2次元ベクトルのベクトル差

つまり、ベクトル\(\overrightarrow{OX}-\overrightarrow{OY}\)は2つのベクトル\(\overrightarrow{OX},-\overrightarrow{OY}\)によって形作られる平行四辺形の対角線に相当します。

 

ゼロベクトルとのベクトル減法

ベクトル\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、それとゼロベクトル\(0\in \mathbb{R} ^{n}\)の間には、\begin{eqnarray*}x-0 &=&x \\
0-x &=&-x
\end{eqnarray*}などの関係が成り立ちます。つまり、ベクトルからゼロベクトルを引いても変化は起こらず、ゼロベクトルからベクトルを引くと逆ベクトルが得られます。

命題(ゼロベクトルとのベクトル減法)
ベクトル\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ x-0=x \\
&&\left( b\right) \ 0-x=-x
\end{eqnarray*}が成り立つ。

証明

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ベクトル和やベクトル差の逆ベクトル

\(\mathbb{R} ^{n}\)はベクトル加法とベクトル減法について閉じているため、ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、それらのベクトル和\(x+y\)やベクトル差\(x-y\)もまたベクトルです。任意のベクトルは逆ベクトルを持つため\(-\left( x+y\right) \)や\(-\left( x-y\right) \)はいずれもベクトルであることが保証されますが、これらについては、\begin{eqnarray*}-\left( x+y\right) &=&-x-y \\
-\left( x-y\right) &=&y-x
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。つまり、ベクトル和やベクトル差の逆ベクトルはいずれもベクトル差を用いて表現できます。

命題(ベクトル和やベクトル差の逆ベクトル)
ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ -\left( x+y\right) =-x-y \\
&&\left( b\right) \ -\left( x-y\right) =y-x
\end{eqnarray*}が成り立つ。

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演習問題

問題(ベクトル減法)
ベクトル\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{3}\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}x &=&\left( 2,-7,1\right) \\
y &=&\left( -3,0,4\right) \\
z &=&\left( 0,5,-8\right)
\end{eqnarray*}として与えられているとき、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ x-y \\
&&\left( b\right) \ x+y-z
\end{eqnarray*}をそれぞれ求めてください。

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問題(ベクトル減法)
ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}-\left( -x-y\right) =x+y
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(ベクトル減法)
ベクトル\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}-\left( x+y+z\right) =-x-y-z
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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問題(ベクトル減法)
ベクトル\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x-y=\left( x+z\right) -\left( y+z\right)
\end{equation*}が成り立つことを証明してください。

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