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ベクトルによって張られる平行四辺形の面積

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平行四辺形を張る2つのベクトルのなす角が与えられている場合

平面\(\mathbb{R} ^{2}\)上に存在する2つの非ゼロベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、これらが平行でない場合には、すなわち、\begin{equation*}\boldsymbol{y}=a\boldsymbol{x}
\end{equation*}を満たすスカラー\(a\in \mathbb{R} \)が存在しない場合には、ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)の始点を一致させることにより、それらを対辺とする平行四辺形を作ることができます(下図)。これをベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)によって張られる平行四辺形(parallelogram spanned by vectors \(\boldsymbol{x}\) and \(\boldsymbol{y}\))と呼びます。

図:平行四辺形
図:平行四辺形

点\(Y\)から線分\(OX\)へ下ろした垂線の足を\(Z\)と呼ぶのであれば、この平行四辺形の面積は、\begin{equation}OX\cdot YZ=\left\Vert \boldsymbol{x}\right\Vert \cdot YZ \quad \cdots (1)
\end{equation}となります。これをベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)を用いて表現するためにはどうすればいいでしょうか。

まずは、2つのベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)のなす角\(\theta \)が明らかになっている状況を想定します。\(\theta \)は平行四辺形の内角であるため、\begin{equation*}0<\theta <\frac{\pi }{2}
\end{equation*}を満たすことに注意してください。正弦の定義より、\begin{equation*}
\sin \left( \theta \right) =\frac{YZ}{\left\Vert \boldsymbol{y}\right\Vert }
\end{equation*}を得るため、これと\(\left( 1\right) \)より、平行四辺形の面積は、\begin{equation*}\left\Vert \boldsymbol{x}\right\Vert \left\Vert \boldsymbol{y}\right\Vert
\sin \left( \theta \right)
\end{equation*}で与えられることが明らかになりました。

命題(平面における平行四辺形の面積)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)上の非ゼロかつ平行ではないベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} \)のなす角が\(\theta \)である場合、\(\boldsymbol{x}\)と\(\boldsymbol{y}\)によって張られる平行四辺形の面積は、\begin{equation*}\left\Vert \boldsymbol{x}\right\Vert \left\Vert \boldsymbol{y}\right\Vert
\sin \left( \theta \right) =\sqrt{x_{1}^{2}+x_{2}^{2}}\sqrt{y_{1}^{2}+y_{2}^{2}}\sin \left( \theta \right)
\end{equation*}と定まる。

例(平面における平行四辺形の面積)
以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
\left( 1,0\right) &\in &\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} \\
\left( 0,1\right) &\in &\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\}
\end{eqnarray*}によって張られる平行四辺形は1辺の長さが\(1\)の正方形であるため、その面積は明らかに、\begin{equation*}1
\end{equation*}です。同じこと先の命題を用いて導きます。先の2つのベクトルのなす角\(\theta \)が\(\frac{\pi }{2}\)であることを踏まえると、先の命題より、先の2つのベクトルによって張られる平行四辺形の面積は、\begin{eqnarray*}\left\Vert \left( 1,0\right) \right\Vert \left\Vert \left( 0,1\right)
\right\Vert \sin \left( \frac{\pi }{2}\right) &=&\sqrt{1^{2}+0^{2}}\sqrt{0^{2}+1^{2}}1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。これは先の結果と整合的です。

空間\(\mathbb{R} ^{3}\)においても同様の議論が成立するため以下を得ます。

命題(空間における平行四辺形の面積)
空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上の非ゼロかつ平行ではないベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \)のなす角が\(\theta \)である場合、\(\boldsymbol{x}\)と\(\boldsymbol{y}\)によって張られる平行四辺形の面積は、\begin{equation*}\left\Vert \boldsymbol{x}\right\Vert \left\Vert \boldsymbol{y}\right\Vert
\sin \left( \theta \right) =\sqrt{x_{1}^{2}+x_{2}^{2}+x_{3}^{2}}\sqrt{y_{1}^{2}+y_{2}^{2}+y_{3}^{2}}\sin \left( \theta \right)
\end{equation*}と定まる。

例(空間における平行四辺形の面積)
以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
\left( 1,0,0\right) &\in &\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} \\
\left( 0,1,0\right) &\in &\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\}
\end{eqnarray*}によって張られる平行四辺形は1辺の長さが\(1\)の正方形であるため、その面積は明らかに、\begin{equation*}1
\end{equation*}です。同じこと先の命題を用いて導きます。先の2つのベクトルのなす角\(\theta \)が\(\frac{\pi }{2}\)であることを踏まえると、先の命題より、先の2つのベクトルによって張られる平行四辺形の面積は、\begin{eqnarray*}\left\Vert \left( 1,0,0\right) \right\Vert \left\Vert \left( 0,1,0\right)
\right\Vert \sin \left( \frac{\pi }{2}\right) &=&\sqrt{1^{2}+0^{2}+0^{2}}\sqrt{0^{2}+1^{2}+0^{2}}1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。これは先の結果と整合的です。

 

平行四辺形の面積と外積の関係

平面\(\mathbb{R} ^{2}\)上に存在する2つのベクトルによって張られる平行四辺形について再び考えます。

図:平行四辺形
図:平行四辺形

上図から明らかであるように、ベクトル\(\overrightarrow{OZ}\)はベクトル\(\boldsymbol{y}\)のベクトル\(\boldsymbol{x}\)へのベクトル射影に他なりません。つまり、\begin{equation*}\overrightarrow{OZ}=\mathrm{proj}_{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{y}
\end{equation*}が成り立つということです。ただし、ベクトル射影は、\begin{equation*}
\mathrm{proj}_{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{y}=\frac{\boldsymbol{x}\cdot \boldsymbol{y}}{\left\Vert \boldsymbol{x}\right\Vert ^{2}}\boldsymbol{x}
\end{equation*}として導出可能です。したがって、ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)が与えられれば線分\(OZ\)の長さを、\begin{equation*}\left\Vert \mathrm{proj}_{\boldsymbol{x}}\boldsymbol{y}\right\Vert
\end{equation*}として導出できます。また、\(OY\)の長さは\(\left\Vert \boldsymbol{y}\right\Vert \)であるため、三平方の定理を用いれば平行四辺形の高さ\(YZ\)を特定できます。これと\(OX\)の長さの積をとることにより平行四辺形の面積が明らかになります。具体的には以下の通りです。

命題(平面における平行四辺形の面積)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)上の非ゼロかつ平行ではないベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} \)によって張られる平行四辺形の面積は、\begin{eqnarray*}\sqrt{\left\Vert \boldsymbol{x}\right\Vert ^{2}\left\Vert \boldsymbol{y}\right\Vert ^{2}-\left\vert \boldsymbol{x}\cdot \boldsymbol{y}\right\vert
^{2}} &=&\sqrt{\left( x_{1}^{2}+x_{2}^{2}\right) \left(
y_{1}^{2}+y_{2}^{2}\right) -\left( x_{1}y_{1}+x_{2}y_{2}\right) ^{2}} \\
&=&\left\Vert \left( x_{1},x_{2},0\right) \times \left( y_{1},y_{2},0\right)
\right\Vert
\end{eqnarray*}と定まる。

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つまり、平面上に存在する2つのベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) ,\left( y_{1},y_{2}\right) \)によって張られる平行四辺形の面積を導出する際には、\begin{equation*}\sqrt{\left( x_{1}^{2}+x_{2}^{2}\right) \left( y_{1}^{2}+y_{2}^{2}\right)
-\left( x_{1}y_{1}+x_{2}y_{2}\right) ^{2}}
\end{equation*}を利用できるだけでなく、これらのベクトルをあたかも空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上のベクトル\(\left(x_{1},x_{2},0\right) ,\left( y_{1},y_{2},0\right) \)とみなした上で、これらの外積のノルム\begin{equation*}\left\Vert \left( x_{1},x_{2},0\right) \times \left( y_{1},y_{2},0\right)
\right\Vert =\left\Vert \left(
\begin{vmatrix}
x_{2} & 0 \\
y_{2} & 0\end{vmatrix},-\begin{vmatrix}
x_{1} & 0 \\
y_{1} & 0\end{vmatrix},\begin{vmatrix}
x_{1} & x_{2} \\
y_{1} & y_{2}\end{vmatrix}\right) \right\Vert
\end{equation*}をとることもできます。この命題では2つのベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)がなす角\(\theta \)に関する情報を必要としません。

例(平面における平行四辺形の面積)
以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
\left( 1,0\right) &\in &\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} \\
\left( 0,1\right) &\in &\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\}
\end{eqnarray*}によって張られる平行四辺形は1辺の長さが\(1\)の正方形であるため、その面積は明らかに、\begin{equation*}1
\end{equation*}です。同じこと先の命題を用いて導きます。先の命題より、先の2つのベクトルによって張られる平行四辺形の面積は、\begin{eqnarray*}
\left\Vert \left( 1,0,0\right) \times \left( 0,1,0\right) \right\Vert
&=&\left\Vert \left(
\begin{vmatrix}
0 & 0 \\
1 & 0\end{vmatrix},-\begin{vmatrix}
1 & 0 \\
0 & 0\end{vmatrix},\begin{vmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1\end{vmatrix}\right) \right\Vert \\
&=&\left\Vert 0,-0,1\right\Vert \\
&=&\sqrt{0^{2}+\left( -0\right) ^{2}+1^{2}} \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。これは先の結果と整合的です。

空間\(\mathbb{R} ^{3}\)においても同様の議論が成立するため以下を得ます。

命題(空間における平行四辺形の面積)
空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上の非ゼロかつ平行ではないベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \)によって張られる平行四辺形の面積は、\begin{equation*}\sqrt{\left\Vert \boldsymbol{x}\right\Vert ^{2}\left\Vert \boldsymbol{y}\right\Vert ^{2}-\left( \boldsymbol{x}\cdot \boldsymbol{y}\right) ^{2}}=\left\Vert \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \times \left(
y_{1},y_{2},y_{3}\right) \right\Vert
\end{equation*}と定まる。

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つまり、空間上に存在する2つのベクトル\(\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) ,\left( y_{1},y_{2},y_{3}\right) \)によって張られる平行四辺形の面積を導出する際には、\begin{equation*}\sqrt{\left( x_{1}^{2}+x_{2}^{2}+x_{3}^{2}\right) \left(
y_{1}^{2}+y_{2}^{2}+y_{3}^{2}\right) -\left(
x_{1}y_{1}+x_{2}y_{2}+x_{3}y_{3}\right) ^{2}}
\end{equation*}を利用できるだけでなく、これらのベクトルの外積のノルム\begin{equation*}
\left\Vert \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \times \left(
y_{1},y_{2},y_{3}\right) \right\Vert =\left\Vert \left(
\begin{vmatrix}
x_{2} & x_{3} \\
y_{2} & y_{3}\end{vmatrix},-\begin{vmatrix}
x_{1} & x_{3} \\
y_{1} & y_{3}\end{vmatrix},\begin{vmatrix}
x_{1} & x_{2} \\
y_{1} & y_{2}\end{vmatrix}\right) \right\Vert
\end{equation*}をとることもできます。

例(空間における平行四辺形の面積)
以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
\left( 1,0,0\right) &\in &\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\} \\
\left( 0,1,0\right) &\in &\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ 0\right\}
\end{eqnarray*}によって張られる平行四辺形は1辺の長さが\(1\)の正方形であるため、その面積は明らかに、\begin{equation*}1
\end{equation*}です。同じこと先の命題を用いて導きます。先の命題より、先の2つのベクトルによって張られる平行四辺形の面積は、\begin{eqnarray*}
\left\Vert \left( 1,0,0\right) \times \left( 0,1,0\right) \right\Vert
&=&\left\Vert \left(
\begin{vmatrix}
0 & 0 \\
1 & 0\end{vmatrix},-\begin{vmatrix}
1 & 0 \\
0 & 0\end{vmatrix},\begin{vmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1\end{vmatrix}\right) \right\Vert \\
&=&\left\Vert 0,-0,1\right\Vert \\
&=&\sqrt{0^{2}+\left( -0\right) ^{2}+1^{2}} \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。これは先の結果と整合的です。

 

演習問題

問題(平面上に存在する三角形の面積)
平面上に存在する以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
\boldsymbol{x} &=&\left( 3,-3\right) \\
\boldsymbol{y} &=&\left( 4,9\right)
\end{eqnarray*}によって張られる平行四辺形の面積を求めてください。

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問題(空間に存在する三角形の面積)
空間上に存在する以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
\boldsymbol{x} &=&\left( 3,-3,1\right) \\
\boldsymbol{y} &=&\left( 4,9,2\right)
\end{eqnarray*}によって張られる平行四辺形の面積を求めてください。

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問題(中学校教員採用試験)
空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上の非ゼロかつ平行ではないベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \)によって張られる平行四辺形の面積を\(\boldsymbol{x}\)と\(\boldsymbol{y}\)に関する内積を用いて表現してください。
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