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ベクトル射影とスカラー射影(ベクトルを別のベクトルへ射影する)

目次

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ベクトル射影

空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上にある原点とは異なる2つの点\(X,Y\)を任意に選んだ上で、以下の2つの有向線分、すなわちベクトル\begin{eqnarray*}&&\overrightarrow{OX} \\
&&\overrightarrow{OY}
\end{eqnarray*}に注目します。点\(X\)の位置ベクトルが\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)であり、点\(Y\)の位置ベクトルが\(y\in \mathbb{R} ^{n}\)であるものとします。つまり、ベクトル\(\overrightarrow{OX}\)の終点の座標が\(x\)であり、ベクトル\(\overrightarrow{OY}\)の終点の座標が\(y\)です。\(X\)と\(Y\)は原点とは異なるため\(x\)と\(y\)は非ゼロベクトルです。ベクトル\(\overrightarrow{OX}\)の大きさは原点\(O\)と点\(X\)の間の距離\(\left\Vert x\right\Vert \)と一致し、ベクトル\(\overrightarrow{OY}\)の大きさは原点\(O\)と点\(Y\)の間の距離\(\left\Vert y\right\Vert \)と一致します。また、点\(X\)と点\(Y\)の間の距離は\(\left\Vert x-y\right\Vert \)です。

2つの非ゼロベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)のなす角\(\theta \)が鋭角の場合(\(0<\theta <\frac{\pi }{2}\))を以下に図示しました。

図:2つのベクトルがなす角(鋭角の場合)
図:2つのベクトルがなす角(鋭角の場合)

点\(Y\)から点\(O,X\)を通過する直線に対して引いた垂線の足を点\(Z\)と呼ぶこととします。ベクトル\(x\)と平行な直線をスクリーンと見立てた上で、スクリーンと垂直な位置にある光源から光が差し込む場合、ベクトル\(y\)がスクリーン上に作る影は\(\overrightarrow{OZ}\)となります。このようにして得られるベクトル\(\overrightarrow{OZ}\)をベクトル\(y\)のベクトル\(x\)へのベクトル射影(vector projectionof \(y\) onto \(x\))や射影(projection)などと呼び、\begin{equation*}\mathrm{proj}_{x}y
\end{equation*}で表記します。ここでは\(x\)と\(y\)のなす角\(\theta \)が鋭角の場合を想定しているため、\(y\)の\(x\)へのベクトル射影\(\mathrm{proj}_{x}y\)は\(x\)と同じ方向の非ゼロベクトルです。

2つの非ゼロベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)のなす角\(\theta \)が直角の場合(\(\theta =\frac{\pi }{2}\))を以下に図示しました。

図:2つのベクトルがなす角(直角の場合)
図:2つのベクトルがなす角(直角の場合)

この場合、\(y\)の\(x\)へのベクトル射影\(\mathrm{proj}_{x}y\)はゼロベクトルです。

2つの非ゼロベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)のなす角\(\theta \)が鈍角の場合(\(\frac{\pi }{2}<\theta <\pi \))を以下に図示しました。

図:2つのベクトルがなす角(鈍角の場合)
図:2つのベクトルがなす角(鈍角の場合)

\(x\)と\(y\)のなす角\(\theta \)が鋭角の場合を想定しているため、\(y\)の\(x\)へのベクトル射影\(\mathrm{proj}_{x}y\)は\(x\)と反対方向の非ゼロベクトルです。

 

ベクトル射影の導出方法

ベクトル射影を具体的に特定するためにはどうすればよいでしょうか。2つの非ゼロベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだとき、\(y\)の\(x\)へのベクトル射影\(\mathrm{proj}_{x}y\)は図中の\(\overrightarrow{OZ}\)に相当しますが、先の議論より、\(\overrightarrow{OZ}\)は\(x\)と同一方向または反対方向の非ゼロベクトルであるか、もしくはゼロベクトルであるため、何らかのスカラー\(a\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation}\mathrm{proj}_{x}y=ax \quad \cdots (1)
\end{equation}という形で表すことができます。加えて、点\(Y\)から点\(O,X\)を通過する直線に対して引いた垂線の足が点\(Z\)であることから、\(\left( 1\right) \)を満たすスカラー\(a\)のもとで2つの点\(Y,Z\)の間の距離\(\left\Vert y-ax\right\Vert \)は最小化されます。つまり、以下の最小化問題\begin{equation*}\min_{a\in \mathbb{R} }\left\Vert y-ax\right\Vert
\end{equation*}を解いた上で、その解と\(\left( 1\right) \)から\(\mathrm{proj}_{x}y\)を特定できます。具体的には以下の通りです。

命題(ベクトル射影の導出方法)
2つの非ゼロベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだとき、\(y\)の\(x\)へのベクトル射影は、\begin{equation*}\mathrm{proj}_{x}y=\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert ^{2}}x
\end{equation*}となる。

証明

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例(ベクトル射影)
以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
x &=&\left( 1,1,1\right) \in \mathbb{R} ^{3} \\
y &=&\left( 3,4,5\right) \in \mathbb{R} ^{3}
\end{eqnarray*}に注目します。\(y\)の\(x\)へのベクトル射影は、\begin{eqnarray*}\mathrm{proj}_{x}y &=&\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert ^{2}}x \\
&=&\frac{\left( 1,1,1\right) \cdot \left( 3,4,5\right) }{\left\Vert \left(
1,1,1\right) \right\Vert ^{2}}\left( 1,1,1\right) \\
&=&\frac{12}{1^{2}+1^{2}+1^{2}}\left( 1,1,1\right) \\
&=&\frac{12}{3}\left( 1,1,1\right) \\
&=&\left( 4,4,4\right)
\end{eqnarray*}です。

 

スカラー射影

2つの非ゼロベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだとき、\(y\)の\(x\)へのベクトル射影は、\begin{equation*}\mathrm{proj}_{x}y=\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert ^{2}}x
\end{equation*}として与えられることが明らかになりました。このとき、\begin{equation*}
\mathrm{proj}_{x}y=\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert }\frac{x}{\left\Vert x\right\Vert }
\end{equation*}と変形可能です。\(\frac{x}{\left\Vert x\right\Vert }\)は\(x\)と同じ方向にある単位ベクトルであることに注意してください。単位ベクトルの大きさは\(1\)であるため、以上の事実は、ベクトル射影\(\mathrm{proj}_{x}y\)の大きさが\(\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert }\)であるとともに、\begin{eqnarray*}\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert } &>&0\Leftrightarrow \mathrm{proj}_{x}y\text{は}x\text{と同一方向}
\\
\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert } &<&0\Leftrightarrow \mathrm{proj}_{x}y\text{は}x\text{と反対方向}
\\
\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert } &=&0\Leftrightarrow \mathrm{proj}_{x}y\text{はゼロベクトル}
\end{eqnarray*}という関係が成り立つことを意味します。このような意味において、このスカラー\(\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert }\)はベクトル射影\(\mathrm{proj}_{x}y\)に関するすべての情報をスカラーとして集約的に表現することに成功しています。そこで、このスカラーを\(y\)\(x\)へのスカラー射影(scalar projection of \(y\)onto \(x\))と呼び、\begin{equation*}\mathrm{comp}_{x}y=\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert }
\end{equation*}と表記します。

例(スカラー射影)
以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
x &=&\left( 1,1,1\right) \in \mathbb{R} ^{3} \\
y &=&\left( 3,4,5\right) \in \mathbb{R} ^{3}
\end{eqnarray*}に注目します。先に求めたように、\(y\)の\(x\)へのベクトル射影は、\begin{equation*}\mathrm{proj}_{x}y=\left( 4,4,4\right)
\end{equation*}です。さて、\(y\)の\(x\)へのスカラー射影は、\begin{eqnarray*}\mathrm{comp}_{x}y &=&\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert } \\
&=&\frac{\left( 1,1,1\right) \cdot \left( 3,4,5\right) }{\left\Vert \left(
1,1,1\right) \right\Vert } \\
&=&\frac{12}{\sqrt{1^{2}+1^{2}+1^{2}}} \\
&=&\frac{12}{\sqrt{3}}
\end{eqnarray*}です。ベクトル\(x\)と同方向にある単位ベクトルは、\begin{eqnarray*}\frac{x}{\left\Vert x\right\Vert } &=&\frac{\left( 1,1,1\right) }{\sqrt{1^{2}+1^{2}+1^{2}}} \\
&=&\frac{\left( 1,1,1\right) }{\sqrt{3}} \\
&=&\left( \frac{1}{\sqrt{3}},\frac{1}{\sqrt{3}},\frac{1}{\sqrt{3}}\right)
\end{eqnarray*}であるため、\(y\)の\(x\)へのベクトル射影は、\begin{eqnarray*}\mathrm{proj}_{x}y &=&\mathrm{comp}_{x}y\frac{x}{\left\Vert x\right\Vert } \\
&=&\frac{12}{\sqrt{3}}\left( \frac{1}{\sqrt{3}},\frac{1}{\sqrt{3}},\frac{1}{\sqrt{3}}\right) \\
&=&\left( \frac{12}{3},\frac{12}{3},\frac{12}{3}\right) \\
&=&\left( 4,4,4\right)
\end{eqnarray*}となりますが、これは先の結果と一致します。

2つの非ゼロベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだとき、\(x\)と\(y\)がなす角が\(\theta \)である場合には、\begin{equation*}x\cdot y=\left\Vert x\right\Vert \left\Vert y\right\Vert \cos \left( \theta
\right)
\end{equation*}という関係が成り立つことを踏まえると、スカラー射影を、\begin{eqnarray*}
\mathrm{comp}_{x}y &=&\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert } \\
&=&\frac{\left\Vert x\right\Vert \left\Vert y\right\Vert \cos \left( \theta
\right) }{\left\Vert x\right\Vert } \\
&=&\left\Vert y\right\Vert \cos \left( \theta \right)
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
\mathrm{comp}_{x}y=\left\Vert y\right\Vert \cos \left( \theta
\right)
\end{equation*}と表現することもできます。

 

ベクトルの直交化

2つの非ゼロベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)のなす角が\(\theta \)である場合には、以下の関係\begin{equation*}x\cdot y=0\Leftrightarrow \theta =\frac{\pi }{2}
\end{equation*}という関係が成り立つため、\(x\)と\(y\)は直交することを、\begin{equation*}x\cdot y=0
\end{equation*}が成り立つこととして定義し、そのことを、\begin{equation*}
x\perp y
\end{equation*}と表記するものと定めました。ベクトル\(x,y\)が直交でない場合でも、ベクトル射影を用いて一方のベクトルを変換することにより、直交する2つのベクトルを得ることができます。

命題(ベクトルの直交化)
2つの非ゼロベクトル\(x,y\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、\begin{equation*}x\perp \left( y-\mathrm{proj}_{x}y\right)
\end{equation*}という関係が成り立つ。

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つまり、2つの非ゼロベクトル\(x,y\)が与えられたとき、\(y\)の\(x\)へのベクトル射影\(\mathrm{proj}_{x}y\)をとった上で、これと\(y\)とのベクトル差\(y-\mathrm{proj}_{x}y\)をとれば、これが\(x\)と直交するベクトルであることが保証されます。

例(ベクトルの直交化)
以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
x &=&\left( 1,1\right) \\
y &=&\left( 1,0\right)
\end{eqnarray*}に注目します。まず、\begin{eqnarray*}
x\cdot y &=&\left( 1,1\right) \cdot \left( 1,0\right) \\
&=&1
\end{eqnarray*}であるため、\(x\)と\(y\)は直交しません。一方、\begin{eqnarray*}\mathrm{proj}_{x}y &=&\frac{x\cdot y}{\left\Vert x\right\Vert ^{2}}x \\
&=&\frac{\left( 1,1\right) \cdot \left( 1,0\right) }{\left\Vert \left(
1,1\right) \right\Vert ^{2}}\left( 1,1\right) \\
&=&\frac{1}{1^{2}+1^{2}}\left( 1,1\right) \\
&=&\frac{1}{2}\left( 1,1\right) \\
&=&\left( \frac{1}{2},\frac{1}{2}\right)
\end{eqnarray*}であるため、\begin{eqnarray*}
y-\mathrm{proj}_{x}y &=&\left( 1,0\right) -\left( \frac{1}{2},\frac{1}{2}\right) \\
&=&\left( \frac{1}{2},-\frac{1}{2}\right)
\end{eqnarray*}を得ます。先の命題より、これは\(x\)と直交します。実際、\begin{eqnarray*}x\cdot \left( y-\mathrm{proj}_{x}y\right) &=&\left( 1,1\right)
\cdot \left( \frac{1}{2},-\frac{1}{2}\right) \\
&=&\frac{1}{2}-\frac{1}{2} \\
&=&0
\end{eqnarray*}が成り立ちます。

 

演習問題

問題(ベクトル射影)
以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
x &=&\left( 5,-12\right) \\
y &=&\left( 3,4\right)
\end{eqnarray*}について、\(y\)の\(x\)へのスカラー射影を求めてください。
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問題(ベクトル射影)
以下の2つのベクトル\begin{eqnarray*}
x &=&\left( 5,-3,3\right) \\
y &=&\left( 4,2,1\right)
\end{eqnarray*}について、\(y\)の\(x\)へのスカラー射影を求めてください。
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