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ベクトルによって張られる四面体の体積

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3つのベクトルによって張られる四面体の体積

3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上に存在する3つの非ゼロベクトル\begin{eqnarray*}x &=&\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \\
y &=&\left( y_{1},y_{2},y_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \\
z &=&\left( z_{1},z_{2},z_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\}
\end{eqnarray*}が与えられたとき、これらがお互いに平行でない場合には、すなわち、以下の条件\begin{eqnarray*}
y &=&ax \\
z &=&bx \\
y &=&cz
\end{eqnarray*}を満たすスカラー\(a,b,c\in \mathbb{R} \)が存在しない場合には、ベクトル\(x,y,z\)の始点を一致させることにより、それらを対辺とする四面体を作ることができます(下図)。これをベクトル\(x,y,z\)によって張られる四面体(tetrahedron spanned by vectors \(x,y,z\))と呼びます。

図:四面体
図:四面体

外積\(x\times y\)とベクトル\(z\)のなす角が\(\theta \)である場合、\(x,y,z\)によって張られる平行六面体の体積は、\begin{equation*}\left\Vert x\times y\right\Vert \left\Vert z\right\Vert \left\vert \cos
\left( \theta \right) \right\vert
\end{equation*}と定まりますが、\(x,y,z\)によって張られる四面体の体積はその\(\frac{1}{2}\times \frac{1}{3}=\frac{1}{6}\)であるため、その体積は、\begin{equation*}\frac{1}{6}\left\Vert x\times y\right\Vert \left\Vert z\right\Vert
\left\vert \cos \left( \theta \right) \right\vert
\end{equation*}と定まります。

命題(3次元空間における四面体の体積)
3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上の非ゼロかつ互いに平行ではないベクトル\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられているとともに、外積\(x\times y\)とベクトル\(z\)のなす角が\(\theta \)であるものとする。この場合、\(x,y,z\)によって張られる四面体の体積は、\begin{equation*}\frac{1}{6}\left\Vert x\times y\right\Vert \left\Vert z\right\Vert
\left\vert \cos \left( \theta \right) \right\vert
\end{equation*}である。

例(四面体の体積)
3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)における以下の3つのベクトル\begin{eqnarray*}x &=&\left( 1,0,0\right) \\
y &=&\left( 0,1,0\right) \\
z &=&\left( 0,0,1\right)
\end{eqnarray*}によって張られる四面体について考えます。これは底面の三角形の面積が\(1\cdot 1\cdot \frac{1}{2}=\frac{1}{2}\)であり高さが\(1\)の四面体であるため、その体積は、\begin{equation*}\frac{1}{2}\cdot 1\cdot \frac{1}{3}=\frac{1}{6}
\end{equation*}です。同じことを先の命題から導きます。外積の定義より、\begin{eqnarray*}
x\times y &=&\left( 1,0,0\right) \times \left( 0,1,0\right) \quad \because
x,y\text{の定義} \\
&=&\left(
\begin{vmatrix}
0 & 0 \\
0 & 1\end{vmatrix},-\begin{vmatrix}
1 & 0 \\
0 & 0\end{vmatrix},\begin{vmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1\end{vmatrix}\right) \quad \because \text{外積の定義} \\
&=&\left( 0,0,1\right)
\end{eqnarray*}です。外積\(x\times y\)とベクトル\(z\)は一致するため、これらがなす角は\(0\)です。したがって、先の命題より、\(x,y,z\)によって張られる四面体の体積は、\begin{eqnarray*}\frac{1}{6}\left\Vert x\times y\right\Vert \left\Vert z\right\Vert
\left\vert \cos \left( 0\right) \right\vert &=&\frac{1}{6}\left\Vert \left(
0,0,1\right) \right\Vert \left\Vert \left( 0,0,1\right) \right\Vert
\left\vert \cos \left( 0\right) \right\vert \\
&=&\frac{1}{6}\sqrt{0^{2}+0^{2}+1^{2}}\cdot \sqrt{0^{2}+0^{2}+1^{2}}\cdot 1
\\
&=&\frac{1}{6}
\end{eqnarray*}となりますが、これは先の主張と整合的です。

 

四面体の体積とスカラー三重積の関係

3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上の非ゼロかつ互いに平行ではないベクトル\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられている場合、\(x,y,z\)によって張られる平行六面体の体積は、\begin{equation*}\left\vert \left( x\times y\right) \cdot z\right\vert
\end{equation*}と表現することもできます。\(x,y,z\)によって張られる四面体の体積はその\(\frac{1}{2}\times \frac{1}{3}=\frac{1}{6}\)であるため、その体積は、\begin{equation*}\frac{1}{6}\left\vert \left( x\times y\right) \cdot z\right\vert
\end{equation*}と定まります。

命題(3次元空間における四面体の体積)
3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上の非ゼロかつ互いに平行ではないベクトル\(x,y,z\in \mathbb{R} ^{3}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられている場合、\(x,y,z\)によって張られる四面体の体積は、\begin{equation*}\frac{1}{6}\left\vert \left( x\times y\right) \cdot z\right\vert
\end{equation*}である。

3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)における\(3\)つのベクトル\(x,y,z\)が与えられたとき、それらの2つの外積\(x\times y\)と残りの1つのベクトル\(z\)の内積\begin{equation*}\left( x\times y\right) \cdot z
\end{equation*}を\(x,y,z\)のスカラー三重積(scalar triple product)と呼びます。具体的には、\begin{eqnarray*}\left( x\times y\right) \cdot z &=&\left(
\begin{vmatrix}
x_{2} & x_{3} \\
y_{2} & y_{3}\end{vmatrix},-\begin{vmatrix}
x_{1} & x_{3} \\
y_{1} & y_{3}\end{vmatrix},\begin{vmatrix}
x_{1} & x_{2} \\
y_{1} & y_{2}\end{vmatrix}\right) \cdot \left( z_{1},z_{2},z_{3}\right) \quad \because \text{外積の定義} \\
&=&\begin{vmatrix}
x_{2} & x_{3} \\
y_{2} & y_{3}\end{vmatrix}z_{1}-\begin{vmatrix}
x_{1} & x_{3} \\
y_{1} & y_{3}\end{vmatrix}z_{2}+\begin{vmatrix}
x_{1} & x_{2} \\
y_{1} & y_{2}\end{vmatrix}z_{3}\quad \because \text{内積の定義} \\
&=&\left( x_{2}y_{3}-x_{3}y_{2}\right) z_{1}-\left(
x_{1}y_{3}-x_{3}y_{1}\right) z_{2}+\left( x_{1}y_{2}-x_{2}y_{1}\right)
z_{3}\quad \because \text{行列式の定義}
\end{eqnarray*}となります。

以上の命題より、3つのベクトル\(x,y,z\)によって張られる平行六面体の体積は\(x,y,z\)のスカラー三重積の絶対値の\(\frac{1}{6}\)と一致することが明らかになりました。

例(四面体の体積)
3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)における以下の3つのベクトル\begin{eqnarray*}x &=&\left( 1,0,0\right) \\
y &=&\left( 0,1,0\right) \\
z &=&\left( 0,0,1\right)
\end{eqnarray*}によって張られる四面体について考えます。これは底面の三角形の面積が\(1\cdot 1\cdot \frac{1}{2}=\frac{1}{2}\)であり高さが\(1\)の四面体であるため、その体積は、\begin{equation*}\frac{1}{2}\cdot 1\cdot \frac{1}{3}=\frac{1}{6}
\end{equation*}です。同じことを先の命題から導きます。具体的には、\begin{eqnarray*}
\left( x\times y\right) \cdot z &=&\left(
\begin{vmatrix}
0 & 0 \\
1 & 0\end{vmatrix},-\begin{vmatrix}
1 & 0 \\
0 & 0\end{vmatrix},\begin{vmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1\end{vmatrix}\right) \cdot \left( 0,0,1\right) \\
&=&\left( 0,0,1\right) \cdot \left( 0,0,1\right) \\
&=&0+0+1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}であるため、先の命題より、問題としている四面体の体積は、\begin{eqnarray*}
\frac{1}{6}\left\vert \left( x\times y\right) \cdot z\right\vert &=&\frac{1}{6}\left\vert 1\right\vert \\
&=&\frac{1}{6}
\end{eqnarray*}となりますが、この結果は先の主張と整合的です。

ベクトルが負の成分を持つ場合にも同様に考えることができます。

例(四面体の体積)
3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)における以下の3つのベクトル\begin{eqnarray*}x &=&\left( -1,0,0\right) \\
y &=&\left( 0,1,0\right) \\
z &=&\left( 0,0,1\right)
\end{eqnarray*}によって張られる四面体について考えます。これは底面の三角形の面積が\(1\cdot 1\cdot \frac{1}{2}=\frac{1}{2}\)であり高さが\(1\)の四面体であるため、その体積は、\begin{equation*}\frac{1}{2}\cdot 1\cdot \frac{1}{3}=\frac{1}{6}
\end{equation*}です。同じことを先の命題から導きます。具体的には、\begin{eqnarray*}
\left( x\times y\right) \cdot z &=&\left(
\begin{vmatrix}
0 & 0 \\
1 & 0\end{vmatrix},-\begin{vmatrix}
-1 & 0 \\
0 & 0\end{vmatrix},\begin{vmatrix}
-1 & 0 \\
0 & 1\end{vmatrix}\right) \cdot \left( 0,0,1\right) \\
&=&\left( 0,0,-1\right) \cdot \left( 0,0,1\right) \\
&=&0+0-1 \\
&=&-1
\end{eqnarray*}であるため、先の命題より、問題としている四面体の体積は、\begin{eqnarray*}
\frac{1}{6}\left\vert \left( x\times y\right) \cdot z\right\vert &=&\frac{1}{6}\left\vert -1\right\vert \\
&=&\frac{1}{6}
\end{eqnarray*}となりますが、この結果は先の主張と整合的です。

 

演習問題

問題(四面体の体積)
3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)における以下の3つのベクトル\begin{eqnarray*}x &=&\left( 3,1,1\right) \\
y &=&\left( 1,5,1\right) \\
z &=&\left( 0,1,2\right)
\end{eqnarray*}によって張られる四面体の体積を求めてください。

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問題(四面体の体積)
3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)における以下の3つのベクトル\begin{eqnarray*}x &=&\left( -2,3,1\right) \\
y &=&\left( 0,4,0\right) \\
z &=&\left( -1,3,3\right)
\end{eqnarray*}によって張られる四面体の体積を求めてください。

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