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1変数関数の積分

定積分に関する平均値の定理

目次

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関数の値の平均値

\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界な閉区間\(\left[ a,b\right] \)上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が\(\left[ a,b\right] \)上で連続である場合には、\(f\)は\(\left[ a,b\right]\)上においてリーマン積分可能になるため、定積分\begin{equation*}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx
\end{equation*}が1つの有限な実数として定まります。

区間\(\left[ a,b\right] \)を\(n\)等分する分割\(P=\left\{ x_{k}\right\} _{k=0}^{n}\)に注目した上で、すべての小区間に共通する長さを、\begin{equation}\Delta x=x_{k}-x_{k-1}=\frac{b-a}{n}\ \left( k=1,\cdots ,n\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}で表記します。それぞれの小区間\(\left[ x_{k-1},x_{k}\right] \)の右側の端点\(x_{k}\)に対して関数\(f\)が定める値\(f\left( x_{k}\right) \)を特定した上で、それらの平均をとると、\begin{eqnarray*}\frac{f\left( x_{1}\right) +\cdots +f\left( x_{n}\right) }{n}
&=&\sum_{k=1}^{n}\frac{f\left( x_{k}\right) }{n} \\
&=&\sum_{k=1}^{n}\left[ f\left( x_{k}\right) \cdot \frac{\Delta x}{b-a}\right] \quad \because \left( 1\right) \\
&=&\frac{1}{b-a}\sum_{k=1}^{n}\left[ f\left( x_{k}\right) \cdot \Delta x\right] \\
&=&\frac{1}{b-a}\cdot S\left( f,P,P^{\ast }\right) \quad \because \text{右側リーマン和の定義}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\frac{f\left( x_{1}\right) +\cdots +f\left( x_{n}\right) }{n}=\frac{1}{b-a}\cdot S\left( f,P,P^{\ast }\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}を得ます。

区間\(\left[ a,b\right] \)の分割\(P\)の大きさは、\begin{equation*}\left\vert P\right\vert =\max \left\{ x_{k}-x_{k-1}\in \mathbb{R} \ |\ k\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} \right\}
\end{equation*}と定義されます。分割\(P\)の大きさを限りなく小さくすることと、分割\(P\)を構成する小区間の個数\(n\)を限りなく大きくすることは同義であるため、すなわち、\begin{equation}n\rightarrow +\infty \Leftrightarrow \left\vert P\right\vert \rightarrow 0
\quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立つため、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow +\infty }\frac{f\left( x_{1}\right) +\cdots +f\left(
x_{n}\right) }{n} &=&\lim_{\left\vert P\right\vert \rightarrow 0}\left[
\frac{1}{b-a}\cdot S\left( f,P,P^{\ast }\right) \right] \quad \because
\left( 1\right) ,\left( 2\right) \\
&=&\frac{1}{b-a}\lim_{\left\vert P\right\vert \rightarrow 0}S\left(
f,P,P^{\ast }\right) \\
&=&\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx\quad \because f\text{はリーマン積分可能}
\end{eqnarray*}を得ます。つまり、区間\(\left[ a,b\right] \)上で連続な関数\(f\)の定義域を限りなく細かく等分した場合、関数\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)の平均値は、\begin{equation*}\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx
\end{equation*}に限りなく近づくということです。この値を関数\(f\)の\(\left[ a,b\right] \)上における平均値(average value)と呼びます。

例(関数の値の平均値)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =1
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、\(f\)は定数関数です。\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であるとともに、定積分は、\begin{equation*}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx=1\left( b-a\right) =b-a
\end{equation*}となるため、\(f\)の\(\left[ a,b\right]\)における平均値は、\begin{eqnarray*}\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx &=&\frac{1}{b-a}\cdot b-a \\
&=&1
\end{eqnarray*}となりますが、これは区間\(\left[ a,b\right] \)の取り方とは関係のない定数です。
例(関数の値の平均値)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、\(f\)は恒等関数です。\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であるとともに、定積分は、\begin{equation*}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx=\frac{1}{2}\left( b^{2}-a^{2}\right)
\end{equation*}となるため、\(f\)の\(\left[ a,b\right]\)における平均値は、\begin{eqnarray*}\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx &=&\frac{1}{b-a}\cdot \frac{1}{2}\left( b^{2}-a^{2}\right) \\
&=&\frac{1}{2}\left( a+b\right)
\end{eqnarray*}となります。具体例を挙げると、\(f\)の\(\left[ 0,1\right]\)における平均値は、\begin{equation*}\frac{1}{2}\left( 0+1\right) =\frac{1}{2}
\end{equation*}であり、\(f\)の\(\left[ -1,1\right] \)における平均値は、\begin{equation*}\frac{1}{2}\left[ \left( -1\right) +1\right] =0
\end{equation*}となります。

 

定積分に関する平均値の定理

\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界な閉区間\(\left[ a,b\right] \)上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が\(\left[ a,b\right] \)上で連続である場合、\(f\)の\(\left[ a,b\right] \)における平均値を、\begin{equation*}\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx
\end{equation*}と定義しました。

変数\(x\)の値が\(a\)から\(b\)まで動くにつれて\(f\left( x\right) \)の値は\(f\left( a\right) \)から増減しながら最終的に\(f\left(b\right) \)へ至りますが、\(f\)が連続であることから\(f\left( x\right) \)の値は連続的に変化するため、プロセスの途中において\(f\left( x\right) \)の値が\(f\)の\(\left[ a,b\right] \)における平均値と一致するような時点が存在することが予想されます。つまり、\begin{equation*}\exists c\in \left( a,b\right) :f\left( c\right) =\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx
\end{equation*}が成り立つことが予想されます。実際、これは正しい予想です。これを定積分に関する平均値の定理(mean value theorem for integrals)と呼びます。

命題(定積分に関する平均値の定理)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界な閉区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、\(f\)が\(\left[ a,b\right] \)上で連続であるならば、\begin{equation*}\exists c\in \left( a,b\right) :f\left( c\right) =\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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例(定積分に関する平均値の定理)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、\(f\)は恒等関数であるため連続であり、したがって定積分に関する平均値の定理が適用可能です。つまり、\begin{equation}f\left( c\right) =\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx \quad \cdots (1)
\end{equation}を満たす\(c\in \left( a,b\right) \)が存在することが保証されます。実際、\(f\)の定義より、\begin{equation*}f\left( c\right) =c
\end{equation*}であり、恒等関数の定積分は、\begin{equation*}
\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx=\frac{1}{2}\left( a+b\right)
\end{equation*}となるため、\(\left( 1\right) \)は、\begin{equation*}c=\frac{1}{2}\left( a+b\right)
\end{equation*}となります。つまり、区間\(\left[ a,b\right] \)上に定義された恒等関数\(x\)の中点\(\frac{1}{2}\left( a+b\right) \)における値\(\frac{1}{2}\left( a+b\right) \)は、関数\(x\)の\(\left[ a,b\right] \)における平均値と一致するということです。

 

演習問題

問題(関数の値の平均値)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ -1,2\right] \)はそれぞれの\(x\in \left[ -1,2\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =1+x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の\(\left[ -1,2\right] \)上における平均値を求めてください。その上で、\(f\left( x\right) \)の値が先にもとめた平均値と一致するような点\(x\)が\(\left[ -1,2\right] \)上に存在することを示すとともに、そのような点\(x\)を具体的に求めてください。
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問題(関数の値の平均値)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 1,3\right] \)はそれぞれの\(x\in \left[ 1,3\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\frac{1}{x}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の\(\left[ 1,3\right] \)上における平均値を求めてください。その上で、\(f\left( x\right) \)の値が先にもとめた平均値と一致するような点\(x\)が\(\left[ 1,3\right]\)上に存在することを示すとともに、そのような点\(x\)を具体的に求めてください。
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問題(平均速度と瞬間速度の平均の関係)
数直線上を移動する点を観察し、経過時間\(h\)と点の位置(数直線上での点の位置を表す座標)の関係を関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}として整理します。つまり、初期時点における点の位置を表す座標は、\begin{equation*}
f\left( 0\right)
\end{equation*}であり、時点\(0\)からさらに時間が\(t\geq 0\)だけ経過した時点における点の位置を表す座標が、\begin{equation*}f\left( t\right)
\end{equation*}であるということです。\(t_{1}<t_{2}\)を満たす2つの時点\(t_{1},t_{2}\in \mathbb{R} \)を選んだとき、\(\left[ t_{1},t_{2}\right] \)の中での平均速度は、\begin{equation*}\frac{f\left( t_{2}\right) -f\left( t_{1}\right) }{t_{2}-t_{1}}
\end{equation*}と定義されます。また、時点\(t\in \left[ t_{1},t_{2}\right] \)における瞬間速度は、\begin{equation*}\frac{df\left( t\right) }{dt}=\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( t+h\right)
-f\left( t\right) }{h}
\end{equation*}と定義されます。関数\(f\)は区間\(\left[ t_{1},t_{2}\right] \)上において\(C^{1}\)級であるものとします。瞬間速度\(\frac{df\left( t\right) }{dt}\)の\(\left[ t_{1},t_{2}\right] \)における平均を特定した上で、それが\(\left[ t_{1},t_{2}\right] \)の中での平均速度と一致することを示してください。以上を踏まえたとき、定積分に関する平均値の定理はどのようなことを示唆しているか議論してください。
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問題(平均温度)
ビーカーに入れたお湯の温度が95度であるものとします。室温が20度の部屋にビーカーを放置すると、\(t\geq 0\)分経過した時点におけるお湯の温度が、\begin{equation*}T\left( t\right) =20+75e^{-\frac{t}{50}}
\end{equation*}度になることが分かっているものとします。最初の\(30\)分間におけるお湯の平均温度を求めてください。以上を踏まえたとき、定積分に関する平均値の定理はどのようなことを示唆しているか議論してください。
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関連知識

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