自然数ベキ関数の原始関数
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が自然数ベキ関数であるものとします。つまり、\(f\)がそれぞれの\(x\in I\)に対して定める値は、自然数\(n\in \mathbb{N} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{n}
\end{equation*}という形で表すことができるということです。
区間上に定義された自然数ベキ関数は連続であるため原始関数が存在します。具体的には以下の通りです。
\end{equation*}と表されるものとする。さらに、定数\(C\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、それぞれの\(x\in I\)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\frac{1}{n+1}x^{n+1}+C
\end{equation*}を定める関数\(F:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(F\)は\(f\)の原始関数である。すなわち、\begin{equation*}\forall x\in I:F^{\prime }\left( x\right) =f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つ。
\end{equation*}と表されるものとします。\(f\)は区間\(\mathbb{R} \)上に定義された自然数ベキ関数であるため、先の命題より、定数\(C\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、それぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\frac{1}{n+1}x^{n+1}+C
\end{equation*}を定める関数\(F:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)を定義したとき、\(F\)は\(f\)の原始関数になります。実際、任意の\(x\in \mathbb{R} \)について、\begin{eqnarray*}F^{\prime }\left( x\right) &=&\frac{d}{dx}\left( \frac{1}{n+1}x^{n+1}+C\right) \\
&=&\frac{n+1}{n+1}x^{n}+0 \\
&=&x^{n} \\
&=&f\left( x\right)
\end{eqnarray*}となりますが、この結果は先の命題の主張と整合的です。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は自然数ベキ関数\(x^{3}\)の定数倍(\(5\)倍)であるため、関数\(x^{3}\)の原始関数を任意に選んだとき、それを\(5\)倍した上で任意の実数\(C\)を加えて得られる関数はもとの関数\(f\)の原始関数になります。先の命題より、関数\(x^{3}\)の原始関数は、\begin{equation*}\frac{1}{4}x^{4}+C:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}ですが、これを\(5\)倍した上で任意の定数\(C\)を加えることで得られる関数\begin{equation*}\frac{5}{4}x^{4}+C:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}はもとの関数\(f\)の原始関数になります。実際、\begin{eqnarray*}\frac{d}{dx}\left( \frac{5}{4}x^{4}+C\right) &=&5x^{3}+0\quad \because
\text{多項式関数の微分} \\
&=&5x^{3} \\
&=&f\left( x\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、主張が正しいことが確認されました。
自然数ベキ関数の不定積分
連続関数には原始関数と不定積分が存在することが保証されるとともに両者は一致するため、先の命題を踏まえると、連続関数である自然数ベキ関数について以下が成り立ちます。
\end{equation*}と表されるものとする。\(f\)の不定積分が存在し、それは、\begin{equation*}\int f\left( x\right) dx=\frac{1}{n+1}x^{n+1}+C
\end{equation*}となる。ただし、\(C\)は積分定数である。
\end{equation*}と表されるものとします。\(f\)は区間\(\mathbb{R} \)上に定義された自然数ベキ関数であるため、先の命題より、\(f\)の不定積分は、\begin{equation*}\int f\left( x\right) dx=\frac{1}{n+1}x^{n+1}+C
\end{equation*}です。ただし、\(C\)は積分定数です。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の不定積分は、\begin{eqnarray*}\int f\left( x\right) dx &=&\int 5x^{3}dx\quad \because f\text{の定義} \\
&=&5\int x^{3}dx+C\quad \because \text{連続関数の定数倍の不定積分} \\
&=&5\cdot \frac{1}{4}x^{4}+C\quad \because \text{自然数ベキ関数の不定積分} \\
&=&\frac{5}{4}x^{4}+C\quad \because C,C^{\prime }\in \mathbb{R} \text{は任意}
\end{eqnarray*}となります。ただし、\(C\)は積分定数です。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の不定積分は、\begin{eqnarray*}\int f\left( x\right) dx &=&\int \left( 2x^{2}-3x\right) dx\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\int 2x^{2}dx-\int 3xdx+C\quad \because \text{連続関数の差の不定積分} \\
&=&2\int x^{2}dx-3\int xdx+C\quad \because \text{連続関数の定数倍の不定積分} \\
&=&2\cdot \frac{1}{3}x^{3}-3\cdot \frac{1}{2}x^{2}+C\quad \because \text{自然数ベキ関数の不定積分} \\
&=&\frac{2}{3}x^{3}-\frac{3}{2}x^{2}+C
\end{eqnarray*}となります。ただし、\(C\)は積分定数です。
自然数ベキ関数の定積分
自然数ベキ関数の原始関数が明らかになったため、微分積分学の第2基本定理を用いることにより、自然数ベキ関数の定積分を特定できます。具体的には以下の通りです。
\end{equation*}と表されるものとする。\(a<b\)を満たす点\(a,b\in I\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であり、定積分は、\begin{eqnarray*}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx &=&\left[ \frac{1}{n+1}x^{n+1}\right] _{a}^{b} \\
&=&\frac{1}{n+1}\left( b^{n+1}-a^{n+1}\right)
\end{eqnarray*}となる。
\end{equation*}と表されるものとします。\(f\)は区間\(\mathbb{R} \)上に定義された自然数ベキ関数であるため、先の命題より、\begin{eqnarray*}\int_{0}^{1}f\left( x\right) dx &=&\int_{0}^{1}x^{n}dx\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left[ \frac{1}{n+1}x^{n+1}\right] _{0}^{1}\quad \because \text{自然数ベキ関数の不定積分} \\
&=&\frac{1}{n+1}-0 \\
&=&\frac{1}{n+1}
\end{eqnarray*}であり、\begin{eqnarray*}
\int_{-1}^{0}f\left( x\right) dx &=&\int_{-1}^{0}x^{n}dx\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left[ \frac{1}{n+1}x^{n+1}\right] _{-1}^{0}\quad \because \text{自然数ベキ関数の不定積分} \\
&=&0-\frac{1}{n+1}\left( -1\right) ^{n+1} \\
&=&\frac{\left( -1\right) ^{n}}{n+1}
\end{eqnarray*}であり、\begin{eqnarray*}
\int_{-1}^{1}f\left( x\right) dx &=&\int_{-1}^{1}x^{n}dx\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left[ \frac{1}{n+1}x^{n+1}\right] _{-1}^{1}\quad \because \text{自然数ベキ関数の不定積分} \\
&=&\frac{1}{n+1}-\frac{1}{n+1}\left( -1\right) ^{n+1} \\
&=&\frac{1}{n+1}\left[ 1+\left( -1\right) ^{n}\right] \end{eqnarray*}です。ただし、\(C\)は積分定数です。
\end{equation*}を定めるものとします。このとき、\begin{eqnarray*}
\int_{0}^{1}f\left( x\right) dx &=&\int_{0}^{1}5x^{3}dx\quad \because f\text{の定義} \\
&=&5\int_{0}^{1}x^{3}dx\quad \because \text{連続関数の定数倍の定積分} \\
&=&5\left[ \frac{1}{4}x^{4}\right] _{0}^{1}\quad \because \text{自然数ベキ関数の定積分} \\
&=&5\left( \frac{1}{4}-0\right) \\
&=&\frac{5}{4}
\end{eqnarray*}となります。
\end{equation*}を定めるものとします。このとき、\begin{eqnarray*}
\int_{0}^{1}f\left( x\right) dx &=&\int_{0}^{1}\left( 2x^{2}-3x\right)
dx\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\int_{0}^{1}2x^{2}dx-\int_{0}^{1}3xdx\quad \because \text{連続関数の差の定積分} \\
&=&2\int_{0}^{1}x^{2}dx-3\int_{0}^{1}xdx\quad \because \text{連続関数の定数倍の定積分} \\
&=&2\left[ \frac{1}{3}x^{3}\right] _{0}^{1}-3\left[ \frac{1}{2}x^{2}\right] _{0}^{1}\quad \because \text{自然数ベキ関数の定積分} \\
&=&2\left( \frac{1}{3}-0\right) -3\left( \frac{1}{2}-0\right) \\
&=&-\frac{5}{6}
\end{eqnarray*}となります。
自然数ベキ関数と純変化量定理
純変化量定理を再掲します。これは微分積分学の第2基本定理から導かれます。
\end{equation*}が成立する。
導関数\(\frac{df}{dx}\)がそれぞれの点\(x\in \left( a,b\right) \)に対して定める値、すなわち点\(x\)における\(f\)の微分係数\begin{equation*}\frac{df\left( x\right) }{dx}=\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( x+h\right)
-f\left( x\right) }{h}
\end{equation*}とは、点\(x\)における\(f\left(x\right) \)の瞬間変化率に相当する概念です。純変化量定理によると、この瞬間変化率\(\frac{df\left( x\right) }{dx}\)を区間\(\left[ a,b\right] \)上で積分することにより、変数\(x\)が点\(a\)から点\(b\)へ変化する場合の前後における\(f\left( x\right) \)の変化量\begin{equation*}f\left( b\right) -f\left( a\right)
\end{equation*}が得られます。
関数\(f\)の導関数\(\frac{df}{dx}\)が自然数ベキ関数であるものとします。自然数ベキ関数は連続であるためリーマン積分可能であり、したがって純変化定理を利用できます。つまり、瞬間変化率\(\frac{df}{dx}\)が自然数ベキ関数であるような状況においては、もとの関数\(f\)の変化量\(f\left( b\right) -f\left( a\right) \)は、自然数ベキ関数の定積分と一致するということです。
\end{equation*}です。\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}に注目します。問題としている辺の長さ\(x\)を\(a\)から\(b\)まで伸ばしたとき、立方体の体積は、\begin{equation*}f\left( b\right) -f\left( a\right) =b^{3}-a^{3}
\end{equation*}だけ変化しますが、同じことを純変化量定理から求めます。導関数\(\frac{df}{dx}:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation}\frac{df\left( x\right) }{dx}=3x^{2} \quad \cdots (1)
\end{equation}を定めますが、これは自然数ベキ関数の定数倍です。すると、\begin{eqnarray*}
f\left( b\right) -f\left( a\right) &=&\int_{a}^{b}\frac{df\left( x\right) }{dx}dx\quad \because \text{純変化量定理}
\\
&=&\int_{a}^{b}3x^{2}dx\quad \because \left( 1\right) \\
&=&3\int_{a}^{b}x^{2}dx\quad \because \text{連続関数の定数倍の定積分} \\
&=&3\left[ \frac{1}{3}x^{3}\right] _{a}^{b}\quad \because \text{自然数ベキ関数の定積分} \\
&=&3\left( \frac{1}{3}b^{3}-\frac{1}{3}a^{3}\right) \\
&=&b^{3}-a^{3}
\end{eqnarray*}となるため、先と同様の結果が得られました。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。不定積分\begin{equation*}
\int f\left( x\right) dx
\end{equation*}と定積分\begin{equation*}
\int_{1}^{2}f\left( x\right) dx
\end{equation*}をそれぞれを求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。不定積分\begin{equation*}
\int_{-1}^{1}f\left( x\right) dx
\end{equation*}をそれぞれを求めてください。
\end{equation*}です。ただし、\(\pi \)は円周率です。\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、問題としている球の半径の長さを\(a\)から\(b\)まで伸ばしたとき、その球の体積は、\begin{equation*}f\left( b\right) -f\left( a\right) =\frac{4}{3}\pi \left( b^{3}-a^{3}\right)
\end{equation*}だけ変化しますが、同じことを純変化量定理から求めてください。
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