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1変数関数の積分

立体の体積と積分(カヴァリエリの原理)

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立体の体積と積分(x軸を基準にする場合)

空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上に存在する立体\(S\)が与えられたとき、\(x\)軸をメジャーと見立てれば、立体の横幅を特定できます。下図では、立体\(S\)の横幅が閉区間\(\left[ a,b\right] \subset \mathbb{R} \)と一致しています。つまり、この立体\(S\)の横幅の長さは\(b-a\)です。

図:立体
図:立体

\(x\)軸上の点\(x\in \left[ a,b\right] \)を通過し、なおかつ\(x\)軸と垂直な平面を\(P_{x}\)で表記します(上図)。平面\(P_{x}\)と立体\(S\)の交わり、すなわち立体\(S\)の断面の面積を\(A\left( x\right) \)で表記します(上図)。点\(x\)を\(a\)から\(b\)へ移動させれば平面\(P_{x}\)もそれに応じて平行移動するため、立体\(S\)の断面の面積\(A\left( x\right) \)も変化します。したがって、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}A\left( x\right) =\text{平面}P_{x}\text{と立体}S\text{の交わりの面積}
\end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
A:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義できます。ただし、この関数\(A\)は定義域\(\left[ a,b\right] \)上において連続であるものとします。つまり、立体\(S\)の断面の面積は連続的に変化するということです。

関数\(A\)の定義域である区間\(\left[ a,b\right] \)の分割\(P=\left\{x_{k}\right\} _{k=0}^{n}\)および代表点の組\(P^{\ast }=\left\{ x_{k}^{\ast }\right\} _{k=1}^{n}\)が与えられれば、関数\(A\)の区間\(\left[ a,b\right] \)上におけるリーマン和が、\begin{equation*}S\left( A,P,P^{\ast }\right) =\sum_{k=1}^{n}\left( x_{k}-x_{k-1}\right)
\cdot A\left( x_{k}^{\ast }\right)
\end{equation*}として定まります。ただし、区間\(\left[ a,b\right] \)の分割\(P\)とは以下の条件\begin{equation*}a=x_{0}<x_{1}<\cdots <x_{n-1}<x_{n}=b
\end{equation*}を満たす有限個の点\(x_{0},x_{1},\cdots ,x_{n-1},x_{n}\in \mathbb{R} \)からなる組であり、代表点の組\(P^{\ast }\)とは以下の条件\begin{equation*}x_{k}^{\ast }\in \left[ x_{k-1},x_{k}\right] \end{equation*}を満たす有限個の点\(x_{1}^{\ast },\cdots ,x_{n}^{\ast }\in \mathbb{R} \)からなる組です。

図:立体
図:立体

リーマン和\(S\left( A,P,P^{\ast }\right) \)を構成する個々の項\begin{equation*}\left( x_{k}-x_{k-1}\right) \cdot A\left( x_{k}^{\ast }\right) \quad \left(
k=1,\cdots ,n\right)
\end{equation*}は、底面積が\(A\left( x_{k}^{\ast}\right) \)であり高さが\(x_{k}-x_{k-1}\)であるような柱状の立体の体積に相当します(上図)。

リーマン和\(S\left( A,P,P^{\ast }\right) \)の値は分割\(P\)や代表点の組\(P^{\ast }\)の選び方に依存します。分割\(P\)の大きさは、\begin{equation*}\left\vert P\right\vert =\max \left\{ x_{k}-x_{k-1}\in \mathbb{R} \ |\ k\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} \right\}
\end{equation*}と定義されますが、分割\(P\)の大きさを\(0\)へ近づける形で分割を変更していった場合、リーマン和を構成する個々の柱はより細かくなるため、リーマン和の値は立体\(S\)の体積へと近づいていきます。

仮定より関数\(A\)は\(\left[ a,b\right]\)上で連続であるため、この関数\(A\)は\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能です。したがって、分割\(P\)の大きさを\(0\)に限りなく近づける形で分割を変更していった場合、代表点の組\(P^{\ast }\)の選び方とは関係なく、関数\(A\)のリーマン和は有限な実数へ限りなく近づきます。つまり、関数\(A\)の\(\left[ a,b\right] \)上における定積分\begin{equation*}\int_{a}^{b}A\left( x\right) dx
\end{equation*}が有限な実数として定まるということです。先の考察より、分割\(P\)の大きさを\(0\)に近づけるにつれてリーマン和\(S\left( A,P,P^{\ast }\right) \)の値は立体\(S\)の体積へ近づいていくため、リーマン和の極限に相当する定積分\(\int_{a}^{b}A\left(x\right) dx\)は立体\(S\)の体積と限りなく一致します。このような事情を踏まえた上で、\begin{equation*}S\text{の体積}=\int_{a}^{b}A\left( x\right) dx
\end{equation*}と定めます。

結論を整理します。空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上に存在する立体\(S\)の横幅が\(x\)軸上において閉区間\(\left[ a,b\right] \subset \mathbb{R} \)の長さと一致するものとします。点\(x\in \left[ a,b\right] \)を通過し、なおかつ\(x\)軸と垂直な平面を\(P_{x}\)で表記します。その上で、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}A\left( x\right) =\text{平面}P_{x}\text{と立体}S\text{の交わりの面積}
\end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
A:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。この関数\(A\)が\(\left[ a,b\right] \)上において連続である場合には、\begin{equation*}S\text{の体積}=\int_{a}^{b}A\left( x\right) dx
\end{equation*}と定めます。このような体積の求積法をカヴァリエリの原理(Cavalieri’s principle)と呼びます。

例(立方体の体積)
一辺の長さが\(1\)の立方体\(S\)が与えられているものとします。明らかに、\begin{eqnarray*}S\text{の体積} &=&1\cdot 1\cdot 1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}ですが、同じことを先の命題を用いて確認します。立方体\(S\)の中心を空間\(\mathbb{R} ^{3}\)の原点にあわせると、この立方体\(S\)の\(x\)軸上での横幅の長さは、区間\begin{equation*}\left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \end{equation*}の長さと一致します。点\(x\in \left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}A\left( x\right) &=&\text{平面}P_{x}\text{と立方体}S\text{の交わりの面積} \\
&=&\text{辺の長さが}1\text{の正方形の面積} \\
&=&1\cdot 1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}と定まります。関数\(A\)は定数関数であるため\(\left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \)上で連続です。したがって、\begin{eqnarray*}S\text{の体積} &=&\int_{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}}A\left(
x\right) dx \\
&=&\int_{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}}1dx \\
&=&\left[ x\right] _{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}} \\
&=&\frac{1}{2}-\left( -\frac{1}{2}\right) \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。これは先の結果と整合的です。

例(円の体積)
半径の長さが\(1\)の球\(S\)が与えられているものとします。明らかに、\begin{eqnarray*}S\text{の体積} &=&\frac{4}{3}\cdot 1\cdot 1\cdot 1\cdot
\pi \\
&=&\frac{4}{3}\pi
\end{eqnarray*}ですが、同じことを先の命題を用いて確認します。球\(S\)の中心を空間\(\mathbb{R} ^{3}\)の原点にあわせると、この球\(S\)の横幅の長さは、区間\begin{equation*}\left[ -1,1\right] \end{equation*}の長さと一致します。点\(x\in \left[ -1,1\right] \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}A\left( x\right) &=&\text{平面}P_{x}\text{と球}S\text{の交わりの面積} \\
&=&\text{半径の長さが}\sqrt{1^{2}-x^{2}}\text{の円の面積} \\
&=&\left( 1-x^{2}\right) \pi
\end{eqnarray*}と定まります。関数\(A\)は\(\left[ -1,1\right] \)上で連続です。したがって、\begin{eqnarray*}S\text{の体積} &=&\int_{-1}^{1}A\left( x\right) dx \\
&=&\int_{-1}^{1}\left( 1-x^{2}\right) \pi dx \\
&=&\pi \int_{-1}^{1}\left( 1-x^{2}\right) dx \\
&=&\pi \left[ x-\frac{1}{3}x^{3}\right] _{-1}^{1} \\
&=&\pi \left[ \left( 1-\frac{1}{3}\right) -\left( -1+\frac{1}{3}\right) \right] \\
&=&\frac{4}{3}\pi
\end{eqnarray*}となります。これは先の結果と整合的です。

 

立体の体積と積分(y軸を基準にする場合)

\(y\)軸を基準に考える場合にも同様です。つまり、空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上に存在する立体\(S\)の横幅が\(y\)軸上において閉区間\(\left[ a,b\right] \subset \mathbb{R} \)の長さと一致するものとします。点\(y\in \left[ a,b\right] \)を通過し、なおかつ\(y\)軸と垂直な平面を\(P_{y}\)で表記します。その上で、それぞれの\(y\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}A\left( y\right) =\text{平面}P_{y}\text{と立体}S\text{の交わりの面積}
\end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
A:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。この関数\(A\)が\(\left[ a,b\right] \)上において連続である場合には、\begin{equation*}S\text{の体積}=\int_{a}^{b}A\left( y\right) dy
\end{equation*}と定めます。

例(立方体の体積)
一辺の長さが\(1\)の立方体\(S\)が与えられているものとします。先ほど、\(x\)軸に沿って\(S\)の横幅を測定する場合には、\begin{equation*}S\text{の体積}=1
\end{equation*}となることを確認しましたが、\(y\)軸に沿って\(S\)の横幅を測定する場合にも同じ結果が得られることを確認します。立方体\(S\)の中心を空間\(\mathbb{R} ^{3}\)の原点にあわせると、この立方体\(S\)の\(y\)軸上での横幅の長さは、区間\begin{equation*}\left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \end{equation*}の長さと一致します。点\(y\in \left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}A\left( y\right) &=&\text{平面}P_{y}\text{と立方体}S\text{の交わりの面積} \\
&=&\text{辺の長さが}1\text{の正方形の面積} \\
&=&1\cdot 1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}と定まります。関数\(A\)は定数関数であるため\(\left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \)上で連続です。したがって、\begin{eqnarray*}S\text{の体積} &=&\int_{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}}A\left(
y\right) dy \\
&=&\int_{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}}1dy \\
&=&\left[ y\right] _{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}} \\
&=&\frac{1}{2}-\left( -\frac{1}{2}\right) \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。これは先の結果と整合的です。

 

立体の体積と積分(z軸を基準にする場合)

\(z\)軸を基準に考える場合にも同様です。つまり、空間\(\mathbb{R} ^{3}\)上に存在する立体\(S\)の縦幅が\(z\)軸上において閉区間\(\left[ a,b\right] \subset \mathbb{R} \)の長さと一致するものとします。点\(z\in \left[ a,b\right] \)を通過し、なおかつ\(z\)軸と垂直な平面を\(P_{z}\)で表記します。その上で、それぞれの\(z\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}A\left( z\right) =\text{平面}P_{z}\text{と立体}S\text{の交わりの面積}
\end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
A:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。この関数\(A\)が\(\left[ a,b\right] \)上において連続である場合には、\begin{equation*}S\text{の体積}=\int_{a}^{b}A\left( z\right) dz
\end{equation*}と定めます。

例(立方体の体積)
一辺の長さが\(1\)の立方体\(S\)が与えられているものとします。先ほど、\(x\)軸や\(y\)軸に沿って\(S\)の横幅を測定する場合には、\begin{equation*}S\text{の体積}=1
\end{equation*}となることを確認しましたが、\(z\)軸に沿って\(S\)の縦幅を測定する場合にも同じ結果が得られることを確認します。立方体\(S\)の中心を空間\(\mathbb{R} ^{3}\)の原点にあわせると、この立方体\(S\)の\(z\)軸上での縦幅の長さは、区間\begin{equation*}\left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \end{equation*}の長さと一致します。点\(z\in \left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}A\left( z\right) &=&\text{平面}P_{z}\text{と立方体}S\text{の交わりの面積} \\
&=&\text{辺の長さが}1\text{の正方形の面積} \\
&=&1\cdot 1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}と定まります。関数\(A\)は定数関数であるため\(\left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \)上で連続です。したがって、\begin{eqnarray*}S\text{の体積} &=&\int_{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}}A\left(
z\right) dz \\
&=&\int_{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}}1dz \\
&=&\left[ z\right] _{-\frac{1}{2}}^{\frac{1}{2}} \\
&=&\frac{1}{2}-\left( -\frac{1}{2}\right) \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。これは先の結果と整合的です。

 

演習問題

問題(円柱と斜円柱の体積)
円柱の上面および底面の半径が\(r>0\)であり高さが\(h>0\)である場合、その体積は、\begin{equation*}\pi r^{2}h
\end{equation*}ですが、積分を用いてこれを導いてください。また、\(r\)と\(h\)の値が同一である場合、円柱ではなく傾円柱の体積もまた、\begin{equation*}\pi r^{2}h
\end{equation*}であることを積分を用いて示してください。

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問題(関数のグラフを回転させることで得られる立体の体積)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ -1,3\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ -1,3\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =-x^{2}+2x+3
\end{equation*}を定めるものとします。この関数のグラフは上に凸な放物線であり、グラフの左側の端点が\(\left( -1,0\right) \)であり、右側の端点が\(\left(3,0\right) \)です。グラフを\(x\)軸に沿って回転させると玉ねぎのような形状の立体が得られますが、この立体の体積を求めてください。
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