不連続関数のリーマン積分可能性
これまでは有界な閉区間上に定義された有界な関数がリーマン積分可能であることの意味を定義するとともに、関数がリーマン積分可能であること、ないしリーマン積分可能ではないことを具体的に判定する方法について解説してきました。加えて、連続関数はリーマン積分可能である一方で、リーマン積分可能な関数は連続であるとは限らないことを明らかにしました。ただし、リーマン積分可能な関数は無限個の点において連続であり、また、有限個の点においてのみ連続な関数はリーマン積分可能ではありません。ここでは、連続ではない関数がリーマン積分可能であるための条件を明らかにします。
まずは、連続ではないもののリーマン積分可能であるような関数の例を挙げます。
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x=0\right) \\
0 & \left( if\ 0<x\leq 1\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(0\)において右側連続ではないため\(\left[ 0,1\right] \)上で連続ではありません。その一方で、この関数\(f\)は\(\left[ 0,1\right] \)上で単調減少であるためリーマン積分可能です。
\begin{array}{cl}
\frac{1}{q} & \left( if\ \exists p,q\in \mathbb{Z} :q>0\wedge x=\text{既約分数}\frac{p}{q}\right) \\
0 & \left( if\ x\not\in \mathbb{Q} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。これをトマエ関数(Thomae’s function)と呼びます。以前に示したように、\(f\)は\(\left[ 0,1\right] \)上の有理点において不連続であり、無理点において連続です。したがって、\(f\)が連続であるような点の個数は無限個であり、不連続であるような点の個数も無限個です。さらに、\(f\)は\(\left[ 0,1\right]\)上においてリーマン積分可能です。
続いて、不連続かつリーマン積分可能ではない関数の例です。
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ x\in \mathbb{Q} \right) \\
0 & \left( if\ x\not\in \mathbb{Q} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。これをディリクレ関数(Dirichlet function)と呼びます。以前に示したように、\(f\)は\(\left[ 0,1\right]\)上の任意の点において不連続であるため、\(f\)が連続であるような点の個数は有限(\(0\)個)です。\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上においてリーマン積分可能ではありません。
有界閉区間上に定義された有界かつ不連続な関数の中にはリーマン積分可能であるものとそうでないものの双方が存在することが明らかになりました。では、有界閉区間上に定義された有界かつ不連続な関数がリーマン積分可能であるための条件を特定できるでしょうか。順番に考えます。
有限個の点において異なる2つの関数のリーマン積分可能性
同一の有界閉区間上に定義された2つの有界関数\(f,g\)が定める値が有限個の点を除いて等しい場合、一方の関数\(f\)がリーマン積分可能であることと、他方の関数\(g\)がリーマン積分可能であることは必要十分であるとともに、両者の定積分は等しくなります。
\right\}
\end{equation*}が有限集合である場合には、\(f\)が\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であることと\(g\)が\(\left[ a,b\right]\)上でリーマン積分可能であることは必要十分であるとともに、以下の関係\begin{equation*}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx=\int_{a}^{b}g\left( x\right) dx
\end{equation*}が成立する。
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x=0\right) \\
0 & \left( if\ 0<x\leq 1\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。これに対して、それぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =0
\end{equation*}を定める関数\(g:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。この関数\(g\)は定数関数であるため\(\left[ 0,1\right] \)上でリーマン積分可能です。この2つの関数\(f,g\)に関して、\begin{equation*}\left\{ x\in \left[ 0,1\right] \ |\ f\left( x\right) \not=g\left( x\right)
\right\} =\left\{ 0\right\}
\end{equation*}となりますが、これは有限集合であるため、先の命題より関数\(f\)は\(\left[ 0,1\right] \)上でリーマン積分可能です。実際、先に示したように、この関数\(f\)は点\(0\)において右側連続ではないため\(\left[ 0,1\right] \)上で連続ではない一方で、\(\left[ 0,1\right] \)上でリーマン積分可能です。以上の結果は先の命題の主張と整合的です。
同一の有界閉区間上に定義された2つの有界関数\(f,g\)が定める値が無限個の点において異なる場合、先の命題の主張と同様の主張は成り立つとは限りません。つまり、\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された2つの有界な関数\(f,g:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)について、以下の集合\begin{equation*}\left\{ x\in \left[ a,b\right] \ |\ f\left( x\right) \not=g\left( x\right)
\right\}
\end{equation*}が無限集合である場合には、\(f\)が\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であることと\(g\)が\(\left[ a,b\right]\)上でリーマン積分可能であることは必要十分であるとは限らないということです。以下の例より明らかです。
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ x\in \mathbb{Q} \right) \\
0 & \left( if\ x\not\in \mathbb{Q} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、\(f\)はディリクレ関数です。これに対して、それぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =0
\end{equation*}を定める関数\(g:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。この関数\(g\)は定数関数であるため\(\left[ 0,1\right] \)上でリーマン積分可能です。この2つの関数\(f,g\)に関して、\begin{equation*}\left\{ x\in \left[ 0,1\right] \ |\ f\left( x\right) \not=g\left( x\right)
\right\} =\mathbb{Q} \end{equation*}となりますが、これは可算集合であるため、先の命題を利用できません。実際、先に示したように、この関数\(f\)は\(\left[ 0,1\right] \)上の任意の点において不連続であるとともに\(\left[ 0,1\right] \)上でリーマン積分可能ではありません。
不連続関数のリーマン積分可能性
有界閉区間上に定義された有界な関数が区間の端点を除いて連続である一方で、区間の端点において連続ではない場合、その関数がリーマン積分可能であるか判定が困難であるような状況は起こり得ます。以下が具体例です。
\begin{array}{cc}
\sin \left( \frac{1}{x}\right) & \left( if\ x\not=0\right) \\
0 & \left( if\ x=0\right)\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\begin{equation*}
\forall x\in \left[ 0,1\right] :-1\leq \sin \left( \frac{1}{x}\right) \leq 1
\end{equation*}が成り立つため\(f\)は有界です。ただ、\(f\)は\((0,1]\)上の任意の点において連続ですが、定義域の左側の端点\(0\)において右側連続ではありません。実際、\(x\rightarrow 0+\)の場合に\(\frac{1}{x}\)は正の無限大\(+\infty \)へ発散するため、それに応じて関数\(f\left( x\right) =\sin \left( \frac{1}{x}\right) \)は振動し、したがって、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow 0+}\sin \left( \frac{1}{x}\right)
\end{equation*}は有限な実数として定まりません。この関数\(f\)は\(\left[ 0,1\right] \)上でリーマン積分可能でしょうか。
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された有界な関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられた状況を想定します。ただし、先の例のように、\(f\)は定義域の端点\(a\)において右側連続であるとは限らず、したがって、\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であるか明らかではないものとします。ただし、\begin{equation*}a<r<b
\end{equation*}を満たす\(r\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(f\)は\(\left[ r,b\right] \)上でリーマン積分可能であることは確認できるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall r\in \left( a,b\right) :\int_{r}^{b}f\left( x\right) dx\in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つということです。この場合、\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であることが保証されます。また、\(r\)を動かせばそれに応じて定積分\(\int_{r}^{b}f\left(x\right) dx\)の値もまた変化しますが、以上の状況のもとでは、\(r\)を\(a\)へ限りなく近づけたときに\(\int_{r}^{b}f\left( x\right) dx\)が有限な実数へ収束するとともに、以下の関係\begin{equation*}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx=\lim_{r\rightarrow a+}\int_{r}^{b}f\left(
x\right) dx\in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つことが保証されます。
x\right) dx
\end{equation*}が成り立つ。
\begin{array}{cc}
\sin \left( \frac{1}{x}\right) & \left( if\ x\not=0\right) \\
0 & \left( if\ x=0\right)\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、\(f\)は有界であり、定義域の端点\(0\)において右側連続ではなく、\((0,1]\)上の任意の点において連続です。\(r\in \left(0,1\right) \)を任意に選んだとき、\(f\)は区間\(\left[ r,1\right] \)上で連続であり、したがって\(\left[ r,1\right] \)上でリーマン積分可能です。したがって先の命題より、\(f\)は\(\left[ 0,1\right] \)上でリーマン積分可能です。
もう一方の端点についても同様の主張が成り立ちます。具体的には以下の通りです。
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された有界な関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられた状況を想定します。ただし、\(f\)は定義域の端点\(b\)において左側連続であるとは限らず、したがって、\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であるか明らかではないものとします。ただし、\begin{equation*}a<r<b
\end{equation*}を満たす\(r\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(f\)は\(\left[ a,r\right] \)上でリーマン積分可能であることは確認できるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall r\in \left( a,b\right) :\int_{a}^{r}f\left( x\right) dx\in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つということです。この場合、\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であることが保証されます。また、\(r\)を動かせばそれに応じて定積分\(\int_{a}^{r}f\left(x\right) dx\)の値もまた変化しますが、以上の状況のもとでは、\(r\)を\(b\)へ限りなく近づけたときに\(\int_{a}^{r}f\left( x\right) dx\)が有限な実数へ収束するとともに、以下の関係\begin{equation*}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx=\lim_{r\rightarrow b-}\int_{a}^{r}f\left(
x\right) dx\in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つことが保証されます。証明は先の命題と同様です。
x\right) dx\in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つ。
以上の2つの命題を用いることにより、不連続な関数がリーマン積分可能であるための条件が得られます。
これまでの議論を整理します。\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された有界な関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)について、以下が成り立ちます:
- \(f\)が連続ならば、\(f\)はリーマン積分可能である。
- \(f\)がリーマン積分可能ならば、\(f\)は無限個の点において連続である。
- \(f\)が有限個の点においてのみ連続ならば、\(f\)はリーマン積分可能ではない。
- \(f\)が有限個の点においてのみ不連続ならば、\(f\)はリーマン積分可能である。
- \(f\)が無限個の点において連続ならば、\(f\)がリーマン積分可能であるケース(トマレ関数)と、リーマン積分可能ではないケース(ディリクレ関数)がある。
- \(f\)が無限個の点において不連続ならば、\(f\)がリーマン積分可能であるケース(トマレ関数)と、リーマン積分可能ではないケース(ディリクレ関数)がある。
演習問題
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ x=\frac{1}{2}\right) \\
0 & \left( if\ x\not=\frac{1}{2}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が\(\left[ 0,1\right] \)上でリーマン積分可能であることを示した上で、\(f\)の\(\left[ 0,1\right] \)上での定積分を求めてください。
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x\in \left\{ 0,\frac{1}{2},1\right\} \right) \\
x & \left( otherwise\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が\(\left[ 0,1\right] \)上でリーマン積分可能であることを示した上で、\(f\)の\(\left[ 0,1\right] \)上での定積分を求めてください。
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