1生産物モデルにおける生産集合

生産者理論の基礎として、1生産物モデルにおける生産集合、生産計画、投入ベクトル、技術、短期と長期、必要投入量集合、可能産出量集合について解説します。

生産者理論

モノやサービスを生産する主体を生産者(producer)と呼びます。生産者理論(producer’s theory)とは生産者による意思決定を分析する理論です。生産者理論では生産者による意思決定を描写するモデルを構築し、そのモデルに対して操作を加えたときに何が起こるかを観察することを通じて、生産者による意思決定に関する知見を得ようとします。では、生産者の意思決定をどのようにモデル化すればよいでしょうか。

仮にすべての生産者が好きなものを好きなだけ生産できるならば、生産者が何をどれくらい生産するかという問題をわざわざ取り上げる必要はありません。実際には世の中に存在する資源は有限であり、加えて、生産者は技術水準や資本をはじめとする様々な制約に直面しているため、好きなものを好きなだけ生産できるわけではありません。だからこそ生産者が何をどれくらい生産するのかという問題について考える意味があります。生産者理論は、様々な制約に直面する生産者がどのような意思決定を行うかを明らかにしようとします。

生産者が何をどのように選択するかを分析する前に、生産者が直面する制約と、その制約のもとで生産者に与えられる選択肢を明らかにする必要があります。そこで、生産者理論ではそれぞれの生産者が直面する選択肢からなる集合を生産集合(production set)と呼ばれる概念を用いてモデル化します。

続いて問題になるのは、選択肢の集合を与えられた生産者がどのように意思決定を行うかという点です。通常、生産者理論では、生産者は自身が直面する選択肢集合の中から、自身が得られる利潤を最大化するような選択肢を選ぶものと仮定します。以上の仮定のもとで、生産者は具体的にどのような選択を行うのか(最適化問題)、また、外生的な条件が変化したときに生産者の選択はどのように変化するのか(比較静学)、などを考察することになります。

 

生産者の単位

モノやサービスを生産する主体として生産者を定義しましたが、現実の経済には様々な種類の生産者が存在します。典型的な生産主体は企業ですが、農家などの家計や、複数の企業から構成される企業グループなどもまた生産主体になり得ます。

生産者の範囲を決定する上で重要なことは、それが生産に関する自立的な意思決定を行う最小単位であるということです。例えば、ある企業グループに属する個々の企業が独自の判断にもとづいて生産活動を行うのであれば、個々の企業が生産者の単位となります。一方、企業グループが全体で1つの集団として意思決定を行うのであれば、企業グループが生産者の単位となります。分析対象や目的に応じて生産者の単位を決めることが重要です。

 

商品

現実の社会には所有権や使用権を売買できないモノやサービスが存在します。具体例を挙げると、大気や自然環境など物理的に売買が困難であるものや、麻薬や奴隷など法や慣習によって売買が禁止されているものがあります。また、共産主義体制のもとでは生産手段の私有が認められないなど、政治体制や歴史に起因する事例もあります。いずれにせよ、生産者理論においては、所有権や使用権を自由に売買できるモノやサービスだけを生産者による投入ないし生産の対象とし、そのような環境を市場経済(market economy)と呼びます。市場経済において生産者が売買するモノやサービスを商品(commodities)や(goods)と呼びます。

自由に売買できるモノとサービスだけを考察対象とする立場とは別に、世の中に存在するあらゆるモノとサービスには所有権や使用権が定められており、それらを売買する市場が存在するものと仮定することもあります。このような仮定を市場の普遍性(universality of market)と呼びます。市場の普遍性の仮定のもとでは、現実世界に存在するあらゆるモノとサービスが生産者による選択の対象となります。

市場の普遍性の仮定は、市場メカニズムが社会的に効率的な結果を実現することを理論的に保証する上で重要な役割を果たします。逆に言えば、現実世界では市場の普遍性が成り立たないため、市場メカニズムが実現する結果は社会的に効率的であるとは限らないということです。この論点については、後に市場均衡について学ぶ際に詳しく解説します。

 

1生産物モデルにおける生産計画

生産者は原料や材料などの生産要素(input)を市場で購入し、それらを利用して新たな生産物(output)を作り出し、それを市場で販売します。したがって、生産者にとっての選択肢は、どの商品をどれだけ投入し、どの商品をどれだけ生産するか、その組み合わせに相当する生産計画(production plan)として表現可能です。

分析対象となる生産者にとって、経済に存在する商品の中でも\(N\)種類の商品が生産要素であり、それらとは異なる\(1\)種類の商品が生産物である状況を想定します。以降ではこれを\(N\)生産要素\(\mathbf{1}\)生産物モデル(\(N\)-input single-output model)や\(1\)生産物モデル(single-output model)などと呼びます。生産要素\(i\ \left( =1,\cdots ,N\right) \)の投入量を非負の実数\begin{equation*}x_{i}\geq 0
\end{equation*}として表記するのであれば、すべての生産要素の投入量の組み合わせは非負の実数を成分として持つ\(N\)次元ベクトル\begin{equation*}\boldsymbol{x}=\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
\vdots \\
x_{N}\end{array}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{N}
\end{equation*}として表現されます。これを投入ベクトル(input vector)と呼びます。一方、生産物の産出量を非負の実数\begin{equation*}
y\geq 0
\end{equation*}として表現し、これを産出量(production level)と呼びます。以上を踏まえた上で、投入ベクトルと産出量からなる組\begin{equation*}
\left(
\begin{array}{c}
\boldsymbol{x} \\
y\end{array}\right) =\left(
\begin{array}{c}
x_{1} \\
\vdots \\
x_{N} \\
y\end{array}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{N+1}
\end{equation*}を生産計画(production plan)と呼びます。

生産計画を列ベクトルとして定義しましたが、多くの場合、スペースの制約を考慮した上で、これを行ベクトル\begin{equation*}
\left( \boldsymbol{x},y\right) =\left( x_{1},\cdots ,x_{N},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{N+1}
\end{equation*}として表記することもあります。本来、列ベクトルと行ベクトルは数学的には互いに区別されるべき概念ですが、ここでは特に断りのない限り両者を同一視し、両者は交換可能であるものとします。

例(生産計画)
1生産要素1生産物モデルにおける生産計画は、\begin{equation*}
\left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}
\end{equation*}として表現されます。ただし、\(x\)は生産要素の投入量であり、\(y\)は生産物の産出量です。例えば、\(2\)単位の生産要素を投入すれば生産物を\(1\)単位生産できるのであれば、そのような生産計画は、\begin{equation*}\left( 2,1\right)
\end{equation*}と表現されます。生産計画\(\left( 2,1\right) \)を出発点に、生産要素の投入量を2倍すれば生産物の産出量も2倍になるのであれば、そのような生産計画は、\begin{equation*}\left( 4,2\right)
\end{equation*}と表現されます。

例(生産計画)
2生産要素1生産物モデルにおける生産計画は、\begin{equation*}
\left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}
\end{equation*}として表現されます。ただし、\(x_{1}\)は生産要素\(1\)の投入量、\(x_{2}\)は生産要素\(2\)の投入量、\(y\)は生産物の産出量です。例えば、\(3\)単位の生産要素\(1\)と\(4\)単位の生産要素\(2\)を投入すれば生産物を\(6\)単位生産できるのであれば、そのような生産計画は、\begin{equation*}\left( 3,4,6\right)
\end{equation*}と表現されます。生産計画\(\left( 3,4,6\right) \)を出発点に、双方の生産要素の投入量を2倍すれば生産物の産出量も2倍になるのであれば、そのような生産計画は、\begin{equation*}\left( 6,8,12\right)
\end{equation*}と表現されます。

生産要素の投入量と生産物の産出量の組み合わせは無数に存在するため、生産計画は無数に存在します。\(N\)生産要素\(1\)生産物モデルにおいて、すべての生産計画からなる集合は、\begin{equation*}\mathbb{R} _{+}^{N+1}=\left\{ \left( \boldsymbol{x},y\right) \in \mathbb{R} ^{N+1}\ |\ \forall n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\} :x_{n}\geq 0\wedge y\geq0\right\}
\end{equation*}です。

例(生産計画)
1生産要素1生産物モデルにおける生産計画は、\begin{equation*}
\left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}
\end{equation*}と表現されます。ただし、\(x\)は生産要素の投入量であり、\(y\)は生産物の産出量です。すべての生産計画からなる集合は、\begin{equation*}\mathbb{R} _{+}^{2}=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x\geq 0\wedge y\geq 0\right\}\end{equation*}です。

例(生産計画)
2生産要素1生産物モデルにおける生産計画は、\begin{equation*}
\left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}
\end{equation*}と表現されます。ただし、\(x_{1}\)は生産要素\(1\)の投入量、\(x_{2}\)は生産要素\(2\)の投入量、\(y\)は生産物の産出量です。すべての生産計画からなる集合は、\begin{equation*}\mathbb{R} _{+}^{3}=\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}\geq 0\wedge x_{2}\geq 0\wedge y\geq 0\right\}\end{equation*}です。

 

1生産モデルにおける生産集合

現実の生産者は様々な制約に直面しているため、集合\(\mathbb{R} _{+}^{N+1}\)上のすべての生産計画を選択できるわけではありません。このような事情を踏まえた上で、生産者が選択可能な生産計画からなる集合を生産集合(production set)や生産空間(production space)などと呼びます。生産集合を\(Y\)で表記する場合、明らかに以下の関係\begin{equation*}Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}
\end{equation*}が成り立ちます。

生産者にとって生産計画\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{N}\)が選択可能である場合には、すなわち、\begin{equation*}\left( \boldsymbol{x},y\right) \in Y
\end{equation*}が成り立つ場合には\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は実現可能(feasible)であると言います。逆に、生産者にとって生産計画\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{N}\)が選択不可能である場合には、すなわち、\begin{equation*}\left( \boldsymbol{x},y\right) \not\in Y
\end{equation*}が成り立つ場合には\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は実現不可能(unfeasible)であると言います。

以降において生産計画(production plan)や生産ベクトル(production vector)などと言う場合、特に断りのない場合には、それは実現可能な生産計画を指します。

生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)の境界を生産フロンティア(production frontier)と呼び、これを、\begin{equation*}Y^{f}
\end{equation*}で表記します。生産フロンティアの重要性については後ほど解説します。

例(生産集合)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。これは下図のグレーの領域として図示されています(境界を含む)。

図:生産集合
図:生産集合

\(x\geq 0\)であるため、生産者は生産要素を好きなだけ投入できます。生産要素を\(x\)だけ投入すると、生産物を最大で\(x\)だけ生産できます。同時に、\(0\leq y\leq x\)を満たす任意の\(y\)もまた産出可能ですが、これは生産者が生産物を制限なく廃棄できることを意味します。

例(生産集合)
2生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y\leq x_{1}^{\frac{1}{2}}x_{2}^{\frac{1}{2}}\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。\(x_{1}\geq 0\)かつ\(x_{2}\geq 0\)であるため、生産者は2種類の生産要素をそれぞれ好きなだけ投入できます。生産要素\(1,2\)を\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)だけ投入すると、生産物を最大で\(x_{1}^{\frac{1}{2}}x_{2}^{\frac{1}{2}}\)だけ生産できます。同時に、\(0\leq y\leq x_{1}^{\frac{1}{2}}x_{2}^{\frac{1}{2}}\)を満たす任意の\(y\)もまた産出可能ですが、これは生産者が生産物を制限なく廃棄できることを意味します。

 

生産者に課される物理的な制約

生産者は物理的な制約(physical constraint)に直面します。

例(時間)
生産者が1人の労働者を雇っており、その投入量\(x_{n}\)の単位として「1日あたりの労働時間」を採用する場合、その投入量には、\begin{equation*}0\leq x_{n}\leq 24
\end{equation*}という制約が課されます。

例(非分割財)
生産者がある期間中に生産する「車」の産出量を\(y\)で表し、その単位として「台」を採用する場合、例えば、\(1.5\)台など非整数量の車を生産することは不可能であるため、その産出量には、\begin{equation*}y\in \mathbb{Z} _{+}
\end{equation*}という制約が課されます。つまり、\(y\)は非負の整数を値としてとり得ます。この例のように、非負の整数単位でのみ生産ないし消費可能な商品を非分割財(indivisible commodity)と呼びます。他方で、任意の実数量を生産ないし消費可能な商品を分割財(divisible commodity)と呼びます。

 

生産者に課される制度的な制約

生産者は制度的な制約(institutional constraint)に直面します。

例(法律)
生産者が1人の労働者を雇っており、その投入量\(x_{n}\)の単位として「1日あたりの労働時間」を採用する場合、その投入量には、\begin{equation*}0\leq x_{n}\leq 24
\end{equation*}という物理的制約が課されます。加えて、1日の労働時間は8時間以内でなければならないという法律が存在するならば、\begin{equation*}
0\leq x_{n}\leq 8
\end{equation*}という制度的制約が加わります。

特定の制度の有無が生産行動に与える影響に興味がある場合には、制度的な制約を明示的に考慮した生産集合を利用することで分析目的を達成することができます。ただ、生産者理論の一般的な分析においては、制度的な制約を明示的に考慮した生産集合を利用することは稀です。

 

生産者に課される技術的な制約

生産要素をどのように組み合わせればどの程度の生産物を実現できるかを定める知識の総体を技術(technology)と呼びます。

生産者は技術的な制約(technological constraint)に直面します。つまり、生産者がある時点において保有する技術を前提とした場合、選択可能な生産ベクトルは限定されます。これまで解説したように生産者は様々な種類の制約に直面していますが、生産者理論ではその中でも技術的な制約を重視します。この場合、生産集合\begin{equation*}
Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}
\end{equation*}とは、技術的な制約を考慮してもなお選択可能な消費ベクトルからなる集合であり、生産者が保有する技術の数学的な表現です。

 

生産者に課される時間的な制約(短期と長期)

生産者は時間的な制約(time constraint)に直面します。

例(資本財の投入)
企業は生産物を生産するために工場や機械などの資本財を利用します。しかし、これらの耐久財は、すぐに増やしたり減らしたりできるものではありません。新たな工場の建設や機械の導入には設計、建設、設置などの時間を要し、逆に不要になった場合でも売却や廃棄には時間が費用がかかります。そのため、工場や機械の投入量を調整するためには、生産物を生産する期間よりも長い時間が必要となるのが一般的です。一方、十分な時間が経過すれば、企業は新工場の建設や既存設備の更新・売却などを行うことができます。生産要素を調整するために必要な期間よりも長い時間を考えると、工場や機械の投入量も自由に変更できると考えられます。

例(熟練労働の投入)
熟練労働者を確保するためには、採用活動を行うだけでなく、教育や訓練を通じて技能を習得させる必要があるため、その調整には相当の時間を要します。そのため、熟練労働力の投入量を調整するために必要な期間が、生産物を生産する期間よりも長い場合には、熟練労働力は固定された生産要素として扱われます。一方、数年という十分な時間があれば、新たな労働者を採用して教育・訓練を行い、熟練労働者として育成できます。また、退職や配置転換などを通じて熟練労働力の規模を調整することも可能になります。熟練労働力の調整に必要な期間よりも長い時間を考えると、熟練労働力の投入量も自由に変更できると考えられます。

以上の例から明らかであるように、ある生産要素の投入量が可変的であるか、もしくは固定的であるかは、企業が計画している生産期間と、生産要素の調整に必要な期間の相対関係によって決定されます。そこで、すべての生産要素の投入量を変更できるほど長い計画期間を長期(long-run)と呼び、固定生産要素が少なくとも1種類存在するほど短い計画期間を短期(short-run)と呼びます。生産者理論では、生産者が直面する時間的な制約を考慮するために、長期と短期を区別して分析を行います。

 

必要投入量集合と可能産出量集合

1生産物モデルにおいて生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)および産出量\(y\in \mathbb{R} _{+}\)が与えられたとき、それに対して、\begin{equation*}R\left( y\right) =\left\{ \boldsymbol{x}\in \mathbb{R} _{+}^{N}\ |\ \left( \boldsymbol{x},y\right) \in Y\right\}
\end{equation*}と定義される投入ベクトルからなる集合を\(y\)の必要投入量集合(input requirement set)と呼びます。これは生産量\(y\)を実現できるすべての投入ベクトルからなる集合です。

1生産物モデルにおいて生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)および投入ベクトル\(\boldsymbol{x}\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)が与えられたとき、それに対して、\begin{equation*}P\left( \boldsymbol{x}\right) =\left\{ y\in \mathbb{R} _{+}\ |\ \left( \boldsymbol{x},y\right) \in Y\right\}
\end{equation*}と定義される産出量からなる集合を\(\boldsymbol{x}\)の可能産出量集合(producible output set)と呼びます。これは投入ベクトル\(\boldsymbol{x}\)のもとで実現できるすべての生産量からなる集合です。

例(必要投入量集合と可能産出量集合)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合を、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x\right\}
\end{equation*}と定義します。産出量\(y\geq 0\)の必要投入量集合は、\begin{eqnarray*}R\left( y\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} _{+}\ |\ \left( x,y\right) \in Y\right\} \quad \because \text{必要投入量集合の定義} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{R} _{+}\ |\ y\leq x\right\} \quad \because Y\text{の定義} \\
&=&[y,+\infty )
\end{eqnarray*}ですが、これは産出量\(y\)を実現するためには生産要素を\(y\)以上投入すればよいことを意味します。投入ベクトル\(x\geq 0\)の可能産出量集合は、\begin{eqnarray*}P\left( x\right) &=&\left\{ y\in \mathbb{R} _{+}\ |\ \left( x,y\right) \in Y\right\} \quad \because \text{可能産出量集合の定義} \\
&=&\left\{ y\in \mathbb{R} _{+}\ |\ y\leq x\right\} \quad \because Y\text{の定義} \\
&=&\left[ 0,x\right] \end{eqnarray*}ですが、これは生産要素を\(x\)だけ投入すれば\(0\)以上\(x\)以下の任意の産出量を達成できることを意味します。
例(必要投入量集合と可能産出量集合)
2生産要素1生産物モデルにおける生産集合を、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y\leq x_{1}^{\frac{1}{2}}x_{2}^{\frac{1}{2}}\right\}
\end{equation*}と定義します。産出量\(y\geq 0\)の必要投入量集合は、\begin{eqnarray*}R\left( y\right) &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in Y\right\} \quad \because \text{必要投入量集合の定義} \\
&=&\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x_{1}^{\frac{1}{2}}x_{2}^{\frac{1}{2}}\right\} \quad
\because Y\text{の定義}
\end{eqnarray*}であり、投入ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\)の可能産出量集合は、\begin{eqnarray*}P\left( x_{1},x_{2}\right) &=&\left\{ y\in \mathbb{R} _{+}\ |\ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in Y\right\} \quad \because \text{可能産出量集合の定義} \\
&=&\left\{ y\in \mathbb{R} _{+}\ |\ y\leq x_{1}^{\frac{1}{2}}x_{2}^{\frac{1}{2}}\right\} \quad \because
Y\text{の定義} \\
&=&\left[ 0,x_{1}^{\frac{1}{2}}x_{2}^{\frac{1}{2}}\right] \end{eqnarray*}です。

 

演習問題

問題(短期と長期)
ある産業において、生産者は工場、生産設備、熟練労働者、アルバイト、原材料を生産要素として利用しているものとします。短期において固定的である可能性が高い生産要素と、短期において可変的である可能性が高い生産要素をそれぞれ挙げた上で、その理由を説明してください。また、この分類が産業によって変わり得る理由についても説明してください。

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問題(生産集合)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x^{\frac{1}{2}}\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。この生産者はどのような技術を持っているか説明してください。また、必要投入量集合と可能産出量集合をそれぞれ定式化してください。

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問題(生産集合)
2生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y\leq x_{1}+2x_{2}\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。生産集合を図示した上で、この生産者はどのような技術を持っているか説明してください。また、必要投入量集合と可能産出量集合をそれぞれ定式化してください。

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問題(生産集合)
2生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y\leq \min \left\{ x_{1},\frac{x_{2}}{2}\right\} \right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。この生産者はどのような技術を持っているか説明してください。また、必要投入量集合と可能産出量集合をそれぞれ定式化してください。

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