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線型効用関数

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線型効用関数

消費集合\(\mathbb{R} _{+}^{N}\)上に定義された効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの消費ベクトル\(x=\left( x_{1},\cdots ,x_{N}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して定める値が、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}であるものとします。ただし、\(\alpha _{1},\cdots ,\alpha _{N}\in \mathbb{R} \)は定数であり、以下の条件\begin{equation*}\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right)
\end{equation*}を定めるものとします。このような効用関数\(u\)を線型効用関数(linear utility mathrmtion)と呼びます。

例(線型効用関数)
2財モデルにおける線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right)\in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =\alpha _{1}x_{1}+\alpha _{2}x_{2}
\end{equation*}を定めます。ただし、\(\alpha _{1},\alpha _{2}>0\)です。例えば、\(\alpha _{1}=\alpha _{2}=1\)であれば、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =x_{1}+x_{2}
\end{equation*}となり、\(\alpha _{1}=\frac{1}{2}\)かつ\(\alpha _{2}=\frac{1}{3}\)であれば、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =\frac{x_{1}}{2}+\frac{x_{2}}{3}
\end{equation*}となります。

例(線型効用関数)
3財モデルにおける線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{3}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left(x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =\alpha _{1}x_{1}+\alpha _{2}x_{2}+\alpha
_{3}x_{3}
\end{equation*}を定めます。ただし、\(\alpha _{1},\alpha _{2},\alpha _{3}>0\)です。例えば、\(\alpha _{1}=\alpha _{2}=\alpha _{3}=1\)であれば、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =x_{1}+x_{2}+x_{3}
\end{equation*}であり、\(\alpha _{1}=1\)かつ\(\alpha _{2}=2\)かつ\(\alpha _{3}=3\)であれば、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =x_{1}+2x_{2}+3x_{3}
\end{equation*}となります。

一般に、選好関係を表す効用関数が存在する場合、その選好関係は完備性と推移性を満たします。したがって、消費者の選好がコブ・ダグラス型効用関数によって表される場合、消費者の選好は完備性と推移性を満たします。

 

線型効用関数の連続性

線型効用関数は連続関数です。

命題(線型効用関数の連続性)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}を定める。ただし、\(\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right) \)である。\(u\)は\(\mathbb{R} _{+}^{N}\)上において連続である。
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例(線型効用関数の連続性)
関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right)\in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =\alpha _{1}x_{1}+\alpha _{2}x_{2}
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(\alpha _{1},\alpha _{2}>0\)です。この\(u\)は線型効用関数であるため、先の命題より、\(u\)は\(\mathbb{R} _{+}^{2}\)上で連続です。

一般に、選好関係を表す連続な効用関数が存在する場合、その選好は連続性を満たします。線型効用関数は連続であるため、消費者の選好が線型効用関数によって表される場合、消費者の選好は連続性を満たします。

 

線型効用関数の連続微分可能性

線型効用関数は定義域の内部において連続微分可能です。

命題(線型効用関数の連続微分可能性)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}を定める。ただし、\(\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right) \)である。\(u\)は\(\mathbb{R} _{++}^{N}\)上において\(C^{1}\)級である。
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例(線型効用関数の連続性)
関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right)\in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =\alpha _{1}x_{1}+\alpha _{2}x_{2}
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(\alpha _{1},\alpha _{2}>0\)です。この\(u\)は線型効用関数であるため\(\mathbb{R} _{++}^{2}\)上で\(C^{1}\)級です。実際、定義域の内点\(\left(x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{++}^{2}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\frac{\partial u\left( x_{1},x_{2}\right) }{\partial x_{1}} &=&\alpha _{1} \\
\frac{\partial u\left( x_{1},x_{2}\right) }{\partial x_{2}} &=&\alpha _{2}
\end{eqnarray*}となりますが、これらは定数関数であるため\(\mathbb{R} _{++}^{2}\)上で連続です。

 

線型効用関数のもとでの限界効用

線型効用関数のもとでの限界効用は以下の通りです。

命題(線型効用関数のもとでの限界効用)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}を定める。ただし、\(\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right) \)である。商品\(n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\} \)および点\(x\in \mathbb{R} _{++}^{N}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}MU_{n}\left( x\right) =\alpha _{n}
\end{equation*}となる。

証明

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例(線型効用関数のもとでの限界効用)
関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right)\in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =\alpha _{1}x_{1}+\alpha _{2}x_{2}
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(\alpha _{1},\alpha _{2}>0\)です。この\(u\)は線型効用関数です。定義域の内点\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{++}^{2}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}MU_{1}\left( x_{1},x_{2}\right) &=&\alpha _{1} \\
MU_{2}\left( x_{1},x_{2}\right) &=&\alpha _{2}
\end{eqnarray*}となります。

 

線型効用関数のもとでの限界代替率

線型効用関数のもとでの限界代替率は以下の通りです。

命題(線型効用関数のもとでの限界代替率)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}を定める。ただし、\(\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right) \)である。2つの商品\(i,j\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\} \)および点\(x\in \mathbb{R} _{++}^{N}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}MRS_{ij}\left( x\right) =\frac{\alpha _{i}}{a_{j}}
\end{equation*}となる。

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例(線型効用関数のもとでの限界代替率)
関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right)\in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =\alpha _{1}x_{1}+\alpha _{2}x_{2}
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(\alpha _{1},\alpha _{2}>0\)です。この\(u\)は線型効用関数です。定義域の内点\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{++}^{2}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}MRS_{12}\left( x_{1},x_{2}\right) =\frac{\alpha _{1}}{\alpha _{2}}
\end{equation*}となります。

 

完全代替財

線型効用関数はどのような選好を表現しているのでしょうか。具体例として、2財モデルにおいて消費者の選好が線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)によって表現される状況を想定します。つまり、\(u\)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =\alpha _{1}x_{1}+\alpha _{2}x_{2}
\end{equation*}を定めるということです。ただし、\(\alpha _{1}>0\)かつ\(\alpha _{2}>0\)です。

消費ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right)\in \mathbb{R} _{+}^{2}\)を任意に選んだとき、先の命題より、商品\(1\)の商品\(2\)で測った限界代替率は、\begin{equation*}MRS_{12}\left( x_{1},x_{2}\right) =\frac{\alpha _{1}}{\alpha _{2}}
\end{equation*}となります。任意の\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)について同様の議論が成立するため、線型効用関数のもとでは消費ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)に依存せず限界代替率\(MRS_{12}\left( x_{1},x_{2}\right) \)が定数\(\frac{\alpha _{1}}{\alpha _{2}}\)になります。

これは何を意味しているのでしょうか。限界代替率\(MRS_{12}\left( x_{1},x_{2}\right) \)とは、消費ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)を出発点として商品\(1\)の消費量を\(1\)単位変化させたときに効用水準を\(u\left( x_{1},x_{2}\right) \)に保つために変化させる必要のある商品\(2\)の量を表しています。言い換えると、消費者が\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)を選択しているとき、消費者にとっての\(1\)単位の商品\(1\)の主観的な価値は\(MRS_{12}\left( x_{1},x_{2}\right) \)単位の商品\(2\)の主観的価値と一致するということです。以上を踏まえると、\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)に依存せず\(MRS_{12}\left( x_{1},x_{2}\right) \)が\(\frac{\alpha _{1}}{\alpha _{2}}\)で一定であることとは、商品\(1,2\)の消費量とは関係なく常に、消費者にとって\(1\)単位の商品\(1\)の主観的価値が\(\frac{\alpha _{1}}{\alpha _{2}}\)単位の商品\(2\)の主観的価値と一致することを意味します。

\(N\)財モデルにおける線型効用関数についても同様の議論が成立します。つまり、\(N\)財モデルにおいて消費者の選好が線型効用関数によって表されている場合には、2つの商品\(i,j\)を任意に選んだとき、消費ベクトル\(x\)に依存せず限界代替率\(MRS_{ij}\left( x\right) \)は\(\frac{\alpha _{i}}{\alpha_{j}}\)で一定です。これは、商品の消費量とは関係なく常に、消費者にとって\(1\)単位の商品\(i\)の主観的価値が\(\frac{\alpha _{i}}{\alpha _{j}}\)単位の商品\(j\)の主観的価値と一致することを意味します。同様の関係が任意の2つの商品\(i,j\)の間に成立します。

複数の商品の間の主観的な価値が常に一定である場合、つまりそれらの商品の限界代替率が消費ベクトルに依存せず一定である場合、それらの商品を完全代替財(perfect substitutes)と呼びます。線型効用関数は完全代替財を消費する場合の選好を表しています。

例(完全代替財)
500円硬貨と1000円紙幣という2つの商品の消費について考えます。ある人にとって重要なことは得られる金額の大きさであり、硬貨と紙幣の違いは重要ではないならば、この人にとって500円硬貨と1000円紙幣は完全代替財です。具体的には、500円硬貨の数量を\(x_{1}\)で、1000円紙幣の数量を\(x_{2}\)で表す場合、得られる合計金額のみを重視する人の効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)は、それぞれの\(\left(x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =500x_{1}+1000x_{2}
\end{equation*}を定めます。これは線型効用関数です。消費ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}MRS_{12}\left( x_{1},x_{2}\right) =\frac{MU_{1}\left( x_{1},x_{2}\right) }{MU_{2}\left( x_{1},x_{2}\right) }=\frac{500}{1000}=\frac{1}{2}
\end{equation*}が成り立ちますが、これは、この人にとって\(1\)枚の500円硬貨の主観的価値が\(\frac{1}{2}\)枚の1000円紙幣の主観的価値と常に一致することを意味します。
例(完全代替財)
2つのブランドのビールについて考えます。ある人にとって重要なことは酔えるかどうかだけ(飲量)であり、味やブランドの違いは重要でないならば、この人にとってこの2種類のビールは完全代替財です。具体的には、一方のブランドのビールの飲量を\(x_{1}\)で、他方のブランドのビールの飲量を\(x_{2}\)で表す場合、合計飲量だけを重視する人の効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)は、それぞれの\(\left(x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x_{1},x_{2}\right) =x_{1}+x_{2}
\end{equation*}を定めます。これは線型効用関数です。消費ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}MRS_{12}\left( x_{1},x_{2}\right) =\frac{MU_{1}\left( x_{1},x_{2}\right) }{MU_{2}\left( x_{1},x_{2}\right) }=\frac{1}{1}=1
\end{equation*}が成り立ちますが、これは、この人にとって2つのブランドのビールの1単位どうしの主観的価値が常に一致することを意味します。

 

線型効用関数の単調性

線型効用関数は狭義単調増加関数です。つまり、\begin{equation*}
\forall x,y\in \mathbb{R} _{+}^{N}:\left[ y>x\Rightarrow u\left( y\right) >u\left( x\right) \right] \end{equation*}が成り立ちます。\(y>x\)における\(>\)はユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{N}\)における標準的狭義順序であり、\begin{equation*}y>x\Leftrightarrow \forall n\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :y_{n}\geq
x_{n}\wedge \exists n\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :y_{n}>x_{n}
\end{equation*}を満たすものとして定義されます。線型効用関数が狭義単調増加であることとは、消費ベクトル\(x\)を任意に選んだとき、そこからすべての商品の消費量を減らさず、なおかつ少なくとも1つの商品の消費量を増やせば、消費者が得る効用が増加することを意味します。

命題(線型効用関数は狭義単調増加関数)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}を定める。ただし、\(\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right) \)である。\(u\)は狭義単調増加関数である。
証明

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狭義単調増加関数は局所非飽和性を満たすため、上の命題より、線型効用関数は局所非飽和性を満たします。つまり、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{R} _{+}^{N},\ \forall \varepsilon >0,\ \exists y\in \mathbb{R} _{+}^{N}\cap N_{\varepsilon }\left( x\right) :u\left( y\right) >u\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。ただし、\(N_{\varepsilon }\left( x\right) \)は中心が\(x\)であり半径が\(\varepsilon \)の開近傍です。\(\mathbb{R} _{+}^{N}\)上の消費ベクトル\(x\)を任意に選んだとき、それにいくらでも近い所に\(x\)よりも大きな効用をもたらす消費ベクトル\(y\)が存在するということです。

命題(線型効用関数は局所非飽和関数)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}を定める。ただし、\(\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right) \)である。\(u\)は局所非飽和性を満たす。

以上の諸命題より、消費者の選好が線型効用関数によって表される場合、消費者の選好は狭義単調性と局所非飽和性を満たします。

 

線型効用関数の同次性

線型効用関数\(u\)は\(1\)次同次関数です。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \mathbb{R} _{+}^{N},\ \forall \lambda \in \mathbb{R} _{++}:u\left( \lambda x\right) =\lambda u\left( x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。消費ベクトル\(x\)を任意に選んだとき、すべての商品の消費量を\(\lambda >0\)倍すれば、消費者が得られる効用の水準もまた\(\lambda \)倍になるということです。

命題(線型効用関数の1次同次性)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}を定める。ただし、\(\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right) \)である。\(u\)は1次同次関数である。
証明

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線型効用関数は凸関数かつ凹関数

線型効用関数は凸関数かつ凹関数です。

命題(線型効用関数は凸関数かつ凹関数)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}を定める。ただし、\(\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right) \)である。\(u\)は凸関数かつ凹関数である。
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凸関数は準凸関数であり、凹関数は準凹関数であるため、上の命題より以下を得ます。

命題(線型効用関数は準凸関数かつ準凹関数)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}^{N}\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\alpha _{1}x_{1}+\cdots +\alpha _{N}x_{N}
\end{equation*}を定める。ただし、\(\alpha _{n}>0\ \left( n=1,\cdots ,N\right) \)である。\(u\)は準凸関数かつ準凹関数である。

選好関係を表す効用関数が存在する場合、効用関数が準凹であることと選好関係は凸性を満たすことは必要十分です。したがって、線型型効用関数によって表される選好関係は凸性を満たします。

線型効用関数は狭義凸関数や狭義凹関数ではありません(演習問題)。また、狭義準凸関数や狭義準凹関数でもありません(演習問題)。選好関係を表す効用関数が存在する場合、効用関数が狭義準凹であることと選好関係は狭義凸性を満たすことは必要十分です。したがって、線型効用関数によって表される選好関係は狭義凸性を満たしません。

 

演習問題

問題(完全代替財)
1000円紙幣、5000円紙幣、10000円紙幣という3つの商品の商品について考えます。ある人にとって重要なことは得られる金額の大きさであり、紙幣の額面の違いは重要でないものとします。この3つの商品を消費する消費者の選好を表す効用関数を特定してください。その上で、限界代替率を求めた上で、その結果を解釈してください。

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問題(線型効用関数は狭義凸関数や狭義凹関数ではない)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)は狭義凸関数や狭義凹関数ではないことを示してください。
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問題(線型効用関数は狭義準凸関数や狭義準凹関数ではない)
線型効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)は狭義準凸関数や狭義準凹関数ではないことを示してください。
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